海を目指せっ! 東京のオフィス街で船長になる特集 都会でゲットする大海原へのチケット(2/3 ページ)

» 2008年10月15日 09時30分 公開
[ITmedia]
仕事帰りに学ぶ シーマンシップ
仕事帰りでも、勉強できます

 tokyo harbour b.l.s.では1級と2級の船舶免許に関する学科と実技教習を受けることができる。費用は1級取得で12万円、2級で9万5900円。この費用にはtokyo harbour b.l.s.の講習料だけでなく、国家試験を受けるために必要な身体検査の費用、国家試験の学科、実技の受験料、合格したときの免許申請代、そして、印紙代が含まれている。受験に必要な費用がすべて一括されているので、非常に分かりやすい。

 一番気になる講習時間だが、tokyo harbour b.l.s.は、学科「デイコース」「ナイトコース」「プライベートコース」の3パターンを用意している。デイコースは10時から17時まで集中して授業を受けるタイプで、1級でも学科2日に実技1日、2級なら学科1日に実技1日で全カリキュラムを修了できる(その後、国家試験の学科と実技を受験する)。ナイトコースは、仕事帰りに授業を受けるパターンで、19時から22時に行われる授業を1級で4日、2級で2日受けることになる。ただし、実技教習はデイコースと同じ時間に1日受けることになる。「プライベートコース」では、時間を調整することが難しい個人や少人数グループ向けに、授業時間を希望に合わせて設定するもので、受ける教室も別に用意される。

教室の様子
船乗りに必要不可欠なシーマンシップ

 学科の授業では、国家試験で出題される科目を習うことになるが、「試験勉強」のために授業を受けるというよりは、シーマンシップ(船を運用するのに必要な技能と知識)を習得する場として望んだほうが、同じ時間を過ごすにも気分は変わってくるだろう。従来なら、クルーとして乗り込んだヨットやボートで、スキッパーや先輩クルーたちの体験とともに教えてもらえたシーマンシップだが、最近では、そういう経験なしにいきなりライセンスを取得するケースも多くなっている。

 ライセンス受験で求められるシーマンシップは、それで十分というものではないが、ロープワークから最近ニュースで耳にする機会が多かった海上衝突予防法などの法規、そして、GPS全盛時代といえど忘れてはいけない「海図の読み方」からハンドコンパスを使ったクロスベアリングなどのアナログ航海術など、船を操るなら知らなくてはいけない最低限の知識をカバーしている。それすらおろそかにしてしまうと、実際に自分の船で航海に出たとき、「こんなことも知らないなんて恥ずかしい」で済むどころか、「こんなことも知らなかったから遭難した」ということにもなりかねないのだ。

試験勉強
いよいよ実技に挑戦

 学科の授業が終われば、次は「お楽しみ」の実技教習だ。国家試験では、実船を使って船の各部名称や、出港前点検の手順が問われるとともに、海上では離岸、着岸、落水救助、その場回頭などにおける操船方法を習うことになる。学科授業用の教室を街中に構えているボートライセンススクールは、これまでもいくつか存在していたが、いざ、教習艇の実習となると街から離れたマリーナに移動して行うことになる。tokyo harbour b.l.s.のすごいところは、田町駅徒歩10分というロケーションの教室に、教習艇を係留できる桟橋を持っていることだ。すでに紹介しているように、運河のほとりにあるtokyo harbour b.l.s.は、そのまますぐに教習艇に乗り込める、都内では稀有のボートライセンススクールでもあるのだ。

 その教習艇でこれから実技を行うという「船長候補生」とともに出港して訓練海域を見せてもらうことにした。東京都内で国家試験を受ける場合、実技試験は豊洲沖で行うことが多い。試験なら何でもそうだが、会場の下見をしていると、気持ちに余裕ができるものだが、小型船舶免許の実技試験においては、そういう精神的なメリットだけでなく、下見をすることで実利的なアドバンテージを得ることができる。

 実技試験の操船では、針路の目標として「あの○○に向かってください」という、周辺の建物や物標を指定されることが多い。実技教習では試験海域で目標として使われる建物などを使って実際に演習が行われるので、前もってその建物の形や場所を知っているということは、操船において非常に有利に働いてくれる。tokyo harbour b.l.s.では、田町にある教室の桟橋から運河と水門を抜け、レインボーブリッジをくぐり、右舷にお台場、左舷に浜松町の東芝本社ビルや東京タワーを眺めつつ、豊洲の試験海域に向かってくれる。

実技教習01

 試験海域に着いたら演習開始。発進、変針、停止、蛇行、といった試験科目のそれぞれで、まずインストラクターが手本を示し、次いで実習生が操船を行う。試験で重要なのは、操船に入る前の確認動作と操船終了後の報告。自動車の運転ではありえない挙動なので、慣れないと、つい緊張したり忘れたりしてしまうが、インストラクターはそのつど、報告のやり取りを教えてくれるので、すぐに身につくはずだ。

 実技演習は船の操船だけではない。実際の試験では、操船中に試験官から避航操船の指示を受けることがある。いきなり状況シートを見せられて、それに対する操船を求められることがある。ここでは、その一部を誌上教習してみよう。

実技教習02

 さあ、ここまでくれば、スキルは完璧。自信を持って国家試験に臨もう。数多くある国家試験の中でも、小型船舶操縦士は1級だろうが2級だろうが、合格率は群を抜いて「高い」。 恐れることなく、落ち着いて試験を受ければ、はれて「船長」の誕生だ。おめでとう!

取材・文/+D Style編集部



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