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1903年に、ヘンリー・フォード一世によって創業された「フォード・モーター・カンパニー」。彼の掲げた理想は「家族で使えるほどに大きく、個人でメンテナンスができるほどの小さい車を。最高の原料を使用し、最高の職人が作る、最もシンプルな車を。誰もが神に与えられた屋外の空間で、家族と一緒に楽しいひとときを過ごせるように」というものだった。 そして、1908年、「個人が所有できる自動車」として全世界で1500万台が生産された「T型フォード」が生まれる。これは、世界におけるモータリゼーションの推進はもちろん、自動車生産におけるベルトコンベア式流れ作業方式の導入、大量生産による低価格の実現、製作現場における労働環境の変革など、自動車業界はもとより、歴史に大きな足跡を残したと言っても過言ではない。 1927年まで、20年近くT型フォードを作り続けた。その後、第一次世界大戦、第二次世界大戦における軍需で経営基盤を安定させたフォードは、1955年、今なお名車との呼び声が高い「サンダーバード」を送り出す。しかし、その後満を持して発表したミドルクラスカーブランド「エドセル」が大失敗、この打撃がグループの屋台骨を大きく揺るがすこととなる。その後、立て続けに大ヒット車「ファルコン」、「マスタング」を送り出し、再びシェアを拡大していく。1976年には“2代目T型フォード”とも呼ばれた小型車「フィエスタ」が登場し、好評を博す。 実はこのマスタングの開発をはじめ、60年代中盤から高級車の「マーキュリー」部門、「リンカーン」部門の副社長に就任、フォード再生の立役者となったリー・アイアコッカ氏は、1970年にフォード社の社長に就任、しかし創業者の孫であるヘンリー・フォード二世と経営方針が対立、同社を解雇された後にクライスラーグループの社長となったのも興味深い。 現在、フォードグループでは、「フォード」をはじめとして「マーキュリー」、「リンカーン」、「マツダ」、「ボルボ」の5ブランドを展開。日本では、マーキュリーをのぞく4ブランドの車両を正規ディーラーで購入することができる。国内では2008年より「リンカーン」ブランドの正規取り扱いを開始。フルサイズSUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)の「ナビゲーター」そしてCUV(クロスオーバー・ユーティリティー・ビークル)の「MKX」を導入した。 奇しくも今年2008年はT型フォードが誕生してからちょうど100年。その記念すべき年に待ち受けていたのは原油高、サブプライムショックによる受難だった。フォードが保有するマツダ株を売却する方針を検討しているというニュースも飛び込んできた。だがガソリン価格の下落が始まりつつあることを受け、大型ピックアップトラック「F-150」増産のため、工場の人員を拡充するといった動きも起きている。 |
取材・文/松井 悠
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