自由と冒険の世界へ――フォードが描くカーライフ特集 大人が愛するアメ車の世界 フォード編(3/3 ページ)

» 2008年11月17日 09時30分 公開
[ITmedia]
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  • 01.T型フォードから100年、世界を席巻したフォードの現在
  • 02.フォード・ジャパン社長が語る「真のアメリカンライフ」
  • 03.モダン・アメリカン・ラグジュアリー「リンカーン ナビゲーター」
特集 大人が愛するアメ車の世界 フォード編
リンカーン ナビゲーターが誘う
モダン・アメリカン・ラグジュアリーの世界
フルサイズSUVで結実した「リンカーン」という贅沢
これぞ「大人の愛するアメ車の世界」
 今回の試乗リポートはまさに「大人の愛するアメ車の世界」を実感できるフォードの4WDラグジュアリーモデル「リンカーン ナビゲーター」。フルサイズのSUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)として、2008年の5月にフォード・ジャパン・リミテッドが正式に導入を始めたのが今回のモデルになる。SUVといえば、日本でも国産から欧州車まで、さまざまなモデルが導入されているが、このリンカーン ナビゲーターの特異性はなかなかのもの。「何か文句でもあるのか」といわんばかりの巨大なボディー、クロームメッキが施された威圧感溢れるフロントマスクに巨大なタイヤをよりアピールする20インチホイールと、通常の尺度で他のSUVと比べることすら間違っているのではないか、と思わされるほど。  しかし、このクルマが見かけ倒しの張り子の虎ではないことは、実際に乗ってみれば明らかだ。ドアを開けると車体下部からステップがせり出し、スムーズな乗降をアシストしてくれる。インストルメントパネル周りは直線を基調にシックにまとめ上げられ、高級感を演出。運転席に座ると車高の高さも相まって視界は非常に良い。また、大きなドアミラー、ボンネット右前部に取り付けられたサイドアンダーミラーによって巨体の四方の視野がカバーされているので、運転中にサイズをもてあますことはほとんどない。むしろ、このボディーサイズこそが可能にした室内空間の広さを評価したい。余裕のあるシートスペースをキープしながら8人が座れるクルマはなかなか見つからないのでは。
■リンカーン ナビゲーター スペック
ボディーカラー: ブラック/ペイパーシルバー/ホワイトスウェード
ボディタイプ: 4ドア・ステーションワゴン
定員: 8名
価格: 870万円
全長: 5295ミリメートル
全幅: 2035ミリメートル
全高: 1995ミリメートル
リンカーン ナビゲーター リンカーン ナビゲーター リンカーン ナビゲーター
車外からの干渉がシャットアウトされた空間は、まるで「動くVIPルーム」
 リンカーン ナビゲーターの魅力は、パワーやスピードではなく、ブランドコンセプトである「アメリカン・モダン・ラグジュアリー」にある。
 町中を走っていても、高速道路でも、とにかく静か。運転中は車外からの干渉を最大限にシャットアウトしている。段差や道路の継ぎ目などを走行した時に感じるのはまるで免震構造のビルを思わせる緩やかな振動。加速時の挙動は非常にスムーズで変速ショックもほとんどない。この静粛性、適度に落ち着いたエグゼクティブな空間は例えるならば「動くVIPルーム」といったイメージだ。

 運転してみると、ハンドルの操作やアクセル、ブレーキに対してのレスポンスをはじめとして、全体的な挙動は非常に大人しい。また、高速道路では80キロを超えるとスクエアなボディーのせいか、やや風切り音が気になった。ナビゲーターに対して、ハイパワーだったり、ワイルドなアメ車の乗り味を求めている人は、やや肩すかしをくらったような気分になるかもしれない。しかし、これはそういうクルマではないのだ。

 前ページのインタビューに登場したフォード・ジャパン・リミテッドのランディ氏はアメ車を「その方の人生観や、情熱、それを具現化するために持つものだ」と語った。これはクルマにパワーやスピード、あるいは機能性や燃費を求めるのならば、それを満たすものを買えばいい、ということになるだろう。ややもすると強気な発言にとれるが、フォード・ジャパンの狙いが、他車との違いをしっかりと確立し、その特異性を求める顧客のハートをしっかりとつかむことなのであれば、この方向性はあながち間違っていないのかもしれない。
「このクルマが欲しい」と思った人は、もう止められない
 もちろん、ナビゲーターをクルマとして比較すると、さまざまな減点要素が浮かび上がってくる。例えば、燃費。レギュラーガソリンで走ることを差し引いたとしても、街乗りでリッター4〜5キロメートルなのは少し厳しいかもしれない。燃料タンクは105リットルあり、かなり大食いの印象を受ける。また、当然ながら、小回りもききにくいため、通れる道も限られてくる。もちろん、このサイズのクルマが入れる駐車場を探すのは非常に大変だ。

 しかし、これらの要素は裏を返せば「ナビゲーターだから当たり前じゃないか」とも考えられる。クルマを選ぶ際に、他メーカーの同クラスと比較検討を重ねて購入する人が大半だろう。そういう人たちには決してリーチしない独自性を堅持するクルマ、それがナビゲーターなのである。「大人数が乗れるクルマが欲しい」、「SUVが欲しい」、「4WDが欲しい」、そういった概念ではなく「ナビゲーターが欲しい」と思ってしまった人には、ネガティブ要素ですらこのクルマのオリジナリティーと受け取れるのだろう。

 今秋、ナビゲーターの弟分とも言うべき、新車両「MKX」が日本に導入された。これから先、リンカーンの名を冠したクルマが日本でどれだけ走り始めていくのか、非常に興味深い。

取材・文 松井 悠



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