一眼レフ原点の流れを汲む「Exakta Varex IIb」:-コデラ的-Slow-Life-
今回は、1年前に購入した「Exakta Varex IIb」のお話。外装の綺麗さとは裏腹に大変な修理となった1台だ。筆者にとってはこのExaktaが、本当に隅々まで手を入れたカメラということになる。
カメラの歴史をいろいろ紐解いてみると、二眼レフカメラやレンジファインダなど、いろいろなブームがあったことが分かる。そして今でこそ一眼レフといえば、カメラの中では最新鋭ということになっている。しかし意外にもその歴史は古く、最初の実用一眼レフカメラは1885年に作られたそうである。
以降様々なスタイルの一眼レフカメラが作られてきたが、現在の一眼レフにつながる35mmフィルムを使うものは、旧ソ連レニングレードのGONZ社が1936年に開発した「SPORT」(スポルト)が最初である。このGONZ社が1965年に改名し、のちにSMENA8やLC-Aの製造で知られることになるLOMO(レニングラード光学器械連合)社となった。
一方ドイツ・ドレスデンのイハゲー社も、同年に35mmフィルムを使う一眼レフカメラ「Kine-Exakta」(キネ・エキザクタ)を発売した。こちらの方式が現在の一眼レフの構造からすると、直系の先祖ということになる。ドレスデンは第二次世界大戦後に東ドイツ側に組み込まれることになるわけだが、そう考えると一眼レフの原点は、意外にも東側諸国にあったということになるだろう。
ExaktaはKine-Exaktaを原点として、1960年代末まで様々なバリエーションを展開した一眼レフシリーズである。後年発売された廉価モデルのExaまで含めると、細かいバージョンまで含めて何モデルあるのか、正確には分かっていない。
古いカメラではあるが、中古市場にはジャンクまで含めると、意外に多く出回っている。まあ考えようによっては、スペアパーツには困らないわけである。そのExakta Varex IIbも、1年ほど前にジャンクの棚の中で見つけたものだ。
外装は結構綺麗だったが、シャッター不良ということだった。裏蓋を開けてみると、シャッター幕が緩んでしまっている。今見ればまず手を出さないレベルだが、当時は何が難しくて何が簡単かの目利きができなかったので、よく分からないままに購入した。
重装備の特殊仕様
Exaktaは、知れば知るほどおかしなカメラである。まずシャッターボタンが、左側にある。これは設計者が左利きだったとか諸説あるが、もっとも説得力のある説は、ウエストレベルファインダをつけた状態で三脚に固定して、書類や顕微鏡などの撮影をするためではないかというものである。
言われてみれば確かに、ウエストレベルファインダを付けて真下を向けると、上部のファインダを手前にしないといけないわけだから、カメラが左右逆になる。そうなれば右手でシャッターが使えることになる。またフィルムボックス内に、フィルムを切り取るためのカッターも装備している。数枚撮ってすぐ現像に出すということを考えれば、役所や研究所などでは使いやすいのだろう。
またこのウエストレベルファインダも、ただ引っ張るだけでズボッと抜ける。用途別にいろんなタイプのファインダに付け替えられるという、カスタム重視設計である。
また長時間露光のためのタイマーも装備している。顕微鏡や望遠鏡などの特殊撮影で必要だったと考えれば、いろいろつじつまが合う。元々は普通にスナップなど撮るカメラではないのだろう。それ故に、中古市場ではレンズなども含め、非常に安くで手に入る。
本体と一緒に買ったのが、PRIMAXというブランドの35mmレンズだ。当時はどんなレンズがあるのかよく分からず、少し広角気味のレンズが面白いだろうと思って、そこにあった一番安くて綺麗だったものを買ったのだ。Made in Japanの刻印があるので、あとで調べればそれなりに素性が分かるだろうと思ったのだが、いまだに全く分からない。どこかのOEMなのか、それともそういうメーカーがあったのか。
外装の綺麗さとは裏腹に大変な修理となったのだが、当時はそんなことは知るよしもない。しかし筆者にとってはこのExaktaが、本当に隅々まで手を入れたカメラということになる。
小寺 信良
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。
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