キヤノンの「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」は、遠景の被写体を大きく引き付けて撮るのに最適な超望遠ズームだ。1998年に発売された「EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM」の後継であり、機能と操作性、描写性能をブラッシュアップしている。
まずは外観から見てみよう。鏡胴にはがっしりとした作りの金属素材を採用する。見るからに剛性を感じさせる硬質な雰囲気が漂い、希望小売価格30万円という価格に見合った高級感もある。カラーリングは白を基調に、レンズ先端部に赤リングを配置。ズームリングとフォーカスリングには黒のラバーを装備する。
サイズは、最大径が94ミリで全長が193ミリ。重量は1570グラム。前モデルと比べると、サイズはわずかに増え、重量は190グラム重くなっている。描写性能の向上のほか、防塵防滴への対応、手ブレ補正の強化、最短撮影距離の短縮などを考慮すれば、この重量アップは仕方ないのかもしれない。
機構上の大きな変更点は、ズームの方式が従来の直進式から一般的な回転式に改められたこと。ここは賛否が分かれるところだろう。直進式は素早くズームできるメリットがあるが、細かくズームを行うには回転式が適している。鏡胴部の調整リングを回すことで、ズームの操作感を軽くしたり重くしたりできる点は継承している。
AFは、リングUSMによってスピーディに作動する。試用では、フルサイズ機の「EOS 6D」のほか、APS-Cサイズ機の「EOS 7D Mark II」や「EOS 70D」など複数のボディを利用したが、いずれもストレスなく快適に合焦するAF性能を実感できた。
最短撮影距離は0.98メートルで、最大撮影倍率は0.31倍。超望遠ズームでは画期的な近接性能の高さといえる。レンズ側面にあるスイッチによって、撮影距離範囲を「FULL」と「3m−∞」の2段階に切り替えられる点も便利だ。
手ブレ補正は従来の約2段分から進化し、CIPA準拠で4段分の効果となった。側面の手ブレ補正スイッチでは、通常のモード1のほか、流し撮り用のモード2、露光中のみ作動するモード3が選べる。
写りは、ズーム全域で開放値からシャープネスの高い描写が得られる。開放値での周辺減光はやや見られるが、超望遠ズームとしては少なめだ。歪曲や色収差は目立たないように低減されている。
そのほか、取り外しが容易になった三脚座や、PLフィルター用の回転窓を設けたフードなど、細かい部分にも改良が施されている。
今回の試用では、風景のほか、鳥や動物の動きを狙ってみたが、スムーズな操作感と軽快なAF性能によって、狙いどおりの瞬間を確実に撮ることができた。てきぱきとピントが合うことがとにかく心地よく、撮影自体が非常に楽しい。そんな印象を受けた。
言うまでもなく気軽に持ち運ぶには大きくて重く、日常的なスナップ用には向かない。だが、野鳥や動物、植物、乗り物など好きな撮影ジャンルが決まっている愛好家層であれば、ぜひ入手したいレンズである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR