出版業界ニュースフラッシュ 2012年1月第4週

出版業界で起こったニュースにならない出来事をまとめてお届けする週刊連載。今週は、雑誌売り上げが1985年以降では初の1兆円割れといったニュースや、読売新聞社の渡邉会長が「活字媒体を低減税率に」と主張したことなどに注目。

» 2012年01月30日 12時25分 公開
[新文化通信社]
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 出版業界で起こったニュースにならない出来事をまとめてお届け。2012年の出版業界の今後を占うヒントが隠されているかも?

【日販分類別売上げ調査】12月期、前年同月比6.5%減に

 前年同月比は、6.5%減で20カ月連続のマイナスとなった。前月(同5.5%減)からさらに増加率が悪化。規模・立地別でも前年を上回るところはなく、前月と同じく「商店街」(同7.9%減)と「駅前・駅ビル」(同7.3%減)の落ち込みが大きかった。

 「雑誌」の売上げは、同7.2%減。「コミック」は、『名探偵コナン(74)』(小学館)や『銀の匙(2)』(同)など、好調な銘柄はあったが、同11.8%減に。前年12月期は1月発売予定だったジャンプコミックスが繰り上がりで刊行され売上げが伸長。その反動を受けた。

 「書籍」の売上げは、同5.8%減。ジャンル別では「文芸書」(同13.1%減)と「ビジネス書」(同10.4%減)がそれぞれ2ケタ割れ。「文芸書」は、『謎解きはディナーのあとで2』(小学館)が堅調に推移したが、前年12月発売『KAGEROU』(ポプラ社)の売り上げをカバーしきれず、増加率が悪化した。唯一、「コミック」は同1.2%増とプラスとなった。

トップカルチャー、3月と10月に2000坪級出店へ

 1月25日に新潟市内のホテルで開いた経営方針発表会で清水秀雄社長が報告。3月17日、埼玉・久喜市に2300坪の複合店を出店させたあと、10月にも茨城・ひたちなか市に2000坪の複合店を計画。3〜4年内に2000坪クラスを10店開店する予定。

 また、カフェの複合化も推進し、集客力のアップも図る。2012年10月期の業績予測については、売上高361億円(前年比8.1%増)、経常利益12億5000万円(同23.4%増)、当期純利益6億2000万円(同35.6%増)の見込みと話した。

読売新聞社の渡邉会長、「活字媒体を低減税率に」

読売新聞グループ本社の渡邉恒雄会長は1月25日、都内ホテルで行われた読売出版広告賞贈呈式で、新聞ほか書籍・雑誌など紙媒体に対して、非課税もしくは軽減税率の適用を政府に求めるべきだと発言した。

渡邉会長は、およそ15年後は20%程度になると予測。「紙媒体は、最低でも現在の5%の税率を維持するべき」と主張した。

読売新聞グループ本社の渡邉恒雄会長

2011年出版物販売額、1兆8042億円に

 出版科学研究所は1月25日、2011年の書籍・雑誌の推定販売額が前年比3.8%減の1兆8042億円になったと発表した。「書籍」は、同0.2%減の8198億円、「雑誌」は同6.6%減の9844億円。雑誌は1985年以降では初の1兆円割れとなった。

 昨年は、書籍では『体脂肪計タニタの社員食堂』や『謎解きはディナーのあとで』など年間を通じたロングヒットが数多く出たが雑誌は振るわず、2008年の同4.5%減を上回る過去最大の落ち込みとなった。また、最盛期の1995年には39億冊だった雑誌の販売部数は20億冊を割り込んだ。

2011年書籍売上高は1兆1123億円、オリコン調べ

 オリコンはこのほど、書籍を対象にした市場売上調査「2011年年間書籍マーケットレポート」(対象期間2010年12月27日〜12年1月1日、全国1817店舗)を公表。総売上高は、前年比0.7%減の1兆1123億2000億円と発表した。前年比微減の売上高となったが、「児童書」「芸術・芸能」ジャンルは前年比2ケタ増になった。

 昨年最も売れた書籍は『謎解きはディナーのあとで』(小学館)となり、以下は『DVD付き樫木式カーヴィーダンスで即やせる!』(学研パブリッシング)『体脂肪計タニタの社員食堂』(大和書房)となった。

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