日本の貴重なデジタル化資料を公開している国立国会図書館デジタルコレクション(デジコレ)。本連載では、デジコレで見ることができるデジタル化資料の中からコレは! というものを探し出し、紹介していきます。
『や、此は便利だ』――。同じ探索部の友人から、デジコレでこんなタイトルの本を探し出して欲しいとの依頼を受けたんですけど、どんな本だと思います?
探索部って謎の団体よね。まあいいわ、便利……ってことは必要なものってことよね。いつの作品なの?
1914年刊行らしいです。タイトルからして時代を感じますよね。
ちょうど100年前の作品ね。んー、考えてるだけじゃ始まらないわ! とりあえず持ってきてちょうだい!
ありました、ありました。どうやら百科辞典みたいですね。著者は下中芳岳(弥三郎)、平凡社から出版されています。
いま調べてみたけど、その人平凡社の創設者らしいわよ。この百科事典を世に出すために出版社を作ってしまったらしいわ。
それは何とも大胆な……。平凡社といえば、前回取り扱った円本の刊行も行っていますね。円本ブームのあとには全28巻の『大百科事典』を出版しています。
平凡社といえば、百科事典で有名なのは知ってたけど、創設の目的が百科事典を作りたかったからというのは驚きだわ。
せっかくなので中も見て行きましょう。
なるほど、新しくできた言葉や、流行りの言葉なんかを分かりやすく説明してくれている百科辞典のようですね。インパクトのあるタイトルは、中を読んだ友人の口から飛び出した「や、此は便利だ!」という言葉をそのまま流用したようです。
名付け方が斬新すぎるわ。
この百科事典が刊行された当時は大正デモクラシーの真っただ中ですから、見慣れない横文字もたくさん出回っていたことでしょう。そういった言葉に不慣れな人にとっては、まさに「や、此は便利だ!」といいたくなるものなのでしょうね。幾つか紹介していきますね。
『平凡の非凡』故国木田独歩は「ビックリする様な事」を求めて居たという。これ実に非凡を求める声であった。しかしある特殊の、飛びはなれた非凡なことなどは求めて得られるものでは無い。吾人の実生活の日常茶飯のことの中にこそ真の意味の真理は現れる。読んでて飽きないわね。特に横文字を何とかして日本語で説明しようとしているのがいいわ。
エスカレーターに下りはなかったんでしょうか。オー・ライの日本語訳が「可なり」「よろしい」というのも面白いですよね。ページを繰る手が止まらないので、今回はこの辺で、また次回お会いしましょう。
『や、此は便利だ』http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/958707
(出典=国立国会図書館)
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