目指すは「世界で戦える国産ルータ」、日立とNECが通信事業者向けルータ開発新会社

日立とNECは6月25日、通信事業者向けコアルータ・スイッチ事業を統合し、新会社を設立すると発表した。事業統合により設製品開発のスピードを高め、将来的に「世界で戦える国産ルータ」の開発を目指す。

» 2004年06月25日 16時19分 公開
[堀 哲也,ITmedia]

 日立製作所とNECは6月25日、通信事業者向けコアルータ・スイッチ事業を統合し、新会社を設立すると発表した。事業統合により製品開発のスピードを高め、シスコシステムズ、ジュニパーネットワークスといった海外ベンダーで寡占化が進む通信事業者のコアルータ市場でシェア拡大を目指す。

 10月1日に設立される新会社は、開発・設計・保守を担当する。新会社のブランド供給を受け、日立とNECがそれぞれに販売やインテグレーションを行う。日立60%、NEC40%の割合で出資し、人員もこれとほぼ同等の割合で、それぞれのコアルータ開発部門から出向させる。新会社の従業員数は350名を予定している。

手を取り合う日立とNEC 左から日立情報・通信グループ長&CEOの古川一夫氏、執行役副社長の小野功氏、NECの代表取締役副社長の矢野 薫、執行役員常務の山本 正彦氏

 新会社に60%出資する日立の小野功副社長は「(国産ルータは)IPv6対応、QoS、ハードウェア高速処理など機能面でも高い評価を受けているとの認識がある。両社の技術を融合させて開発のスピードアップを図る」と統合の狙いを話した。

 NECの矢野薫副社長は「ハイエンドのコアルータは苦戦している市場。日立と合弁することで、世界で戦えるコアルータを開発し競争力を増したい。NECの出資が40%なのも新会社の意思決定を早めるため」と話した。

 両社は既に製品の共同開発を進めており、今年中には第一弾となる新製品を出荷できる見込みで、2005年度には400億円の売上を目指す。

 現在IPネットワークに流れるトラフィックは年々倍増している状態で、社会インフラとなりつつある。今後も市場は年率5%程度の伸びで拡大していくと両社は見ているが、これを支える通信事業者向けのコアルータには、ますますの性能と信頼性が求められるようになってきている。

 現在、国内の通信事業者向けのコアルータ市場を見るとシスコが60%のマーケットシェアを持ち、ジュニパーがそれに続く状態。国内ルータベンダーは完全に劣勢に立たされている。だが、シスコルータの故障率の高さや複雑さなどが指摘されており、「シスコルータに不満がないとは思えない。両社の品質の高さを持ってすれば、将来30%のシェアはあながち難しいとも思えない」(NEC 山本氏)という。また、「e-Japan 戦略IIの後押しがあれば、もっと伸びる」(日立 小野氏)との見通しがある。

 シスコやジュニパーに挑戦したものの市場より撤退し、シスコによる買収という結末を迎えたProcket Networksの例がある上に、富士通も含め国内ベンダーすべてが苦戦しているこの市場で、新会社のルータがシェアを拡大できるかは未知数だが、ハイエンドコアルータに特化した新会社は、品質の高さを武器に「世界で戦える国産ルータ」の開発を目指していくことになる。

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