特集:第1回 スタートアップ.NET――基礎から始める.NETdev .NET(7/8 ページ)

» 2004年07月01日 00時00分 公開
[大澤文孝,ITmedia]

.NET対応アプリケーションでなくても、.NET Frameworkを利用する価値がある

 このように、.NET Frameworkは、XML Webサービスを中心とする.NET対応アプリケーションを構築するときに便利なフレームワークである。しかし、.NET Frameworkは、.NET対応アプリケーションのためのものだけではない。

 .NET Frameworkは、Windowsフォームをはじめとする豊富なクラスライブラリがある。そのため、従来開発環境であるVisual Basic 6.0やVisual C++を使ってアプリケーションを構築するよりも、VB.NETやC#を使ってアプリケーションを作ったほうが、ずっと手早く、高度なアプリケーションを構築できる。

 つまり、「.NET対応ならばVB.NETやC#、そうでないならVisual Basic 6.0やVisual C++」のように使い分けるのは得策ではない。今後アプリケーションを構築するのであれば、.NET対応でなくても、.NET Frameworkを利用する価値があるといえる。

.NET機能を提供する製品群はいっそう強化されてきた

 マイクロソフトは、.NET対応推進のために多数の自社製品に、.NETに対応しやすい機能を装備している。

 .NET Frameworkを使って構築されたアプリケーションを――つまりアセンブリ――を実行するためには、OSに対応する.NET Frameworkがインストールされていなければならない。現在、.NET Frameworkが標準でインストールされているOSは、Windows Server 2003だけだ。それ以外のOSでは、ユーザーが明示的に.NET Frameworkをインストールしなければならない。

 .NET Frameworkをインストールするには、「.NET Framework再配布パッケージ」を使う。Windows XPの場合には、Windows Updateを使って.NET Frameworkをインストールすることも可能なため、特に意識なく導入されている場合もある。ちなみに、.NET Frameworkをインストールしていない環境で.NET Frameworkを使ったアプリケーションを実行しようとすると、アプリケーションエラーが発生して、正しく実行できない。提供されるOSは、次の通りである。Windows 95はサポート外だ。

Windows 98/Me/NT 4.0/2000/XP、Windows Server 2003

 なかでも、Windows Server 2003は、最新であることからも.NET Framework対応が最も進んでいる。前述のように、標準で.NET Frameworkがインストールされているのはもちろんだが、IISと.NET Frameworkの連携度がほかのOSに比べてシームレスである点や、UDDIサーバ機能が提供されるなど、.NETへの対応度が高い。

Visual Studio .NETを始めとする開発環境

 開発環境としては、Visual Studio .NETが提供されている。

 Visual Studio .NETでは、プロジェクトを作成する際に、どのようなアプリケーションを作るのかを問われる(図10)。適したアプリケーションの種類を選択すれば、雛形が作られるため、それぞれの種類に応じたアプリケーションを手早く構築できる。

図10■プロジェクトの新規作成画面

 Visual Studio .NETでは、Windowsアプリケーション、Webアプリケーション、Webサービスの他、Windows CE(スマートデバイス)向けのアプリケーションも構築できる。

サーバソフトウェアファミリー「.NET Enterprise Servers」

 .NET Frameworkを提供するサーバOSは、Windows 2000 ServerやWindows Server 2003であるが、これらのサーバ上で動作するサーバソフトウェア製品も、.NETに対応すべく機能強化が行われている。マイクロソフトでは、.NETに対応したサーバ製品群を、「.NET Enterprise Servers」(現Windows Server System)と称している。.NET Enterprise Serversには、Exchange ServerやSQL Serverなどがある(表1)。

表1■.NET Enterprise Serversファミリー
製 品 名
主 な 用 途
Application Center 2000 Webアプリケーションを配置し、管理する。
BizTalk Server 2002 XML Webサービスを使って、企業間連携をサポートする。
Commerce Server 2002 Eコマース機能を提供する。
Content Management Server 2001 Webサイトのコンテンツ管理機能を提供する。
Exchange Server 2000 メッセージングやコラボレーション機能を提供する。Exchangeには、XML形式のデータを保存できる。
Host Integration Server 2000 メインフレームなどのレガシーシステムとの相互接続を実現する。
Internet Security and Acceleration Server 2000 ファイアウォール機能などを提供する。
Mobile Information 2001 Server 携帯電話やPDAなど、モバイル向けのアプリケーション構築機能を提供する。
SharePoint Portal Server 2001 ポータルサイトの構築機能を提供する(関連記事)。
SQL Server 2000 データベース機能を提供する。XML形式でデータを格納したり取り出したりすることもできる。

 .NET Enterprise Servers製品には、.NET Frameworkとまったく関係がない製品の方が多い。これは、.NETとは、XML Webサービスによるデータを中心としたソリューションのことであり、.NET Frameworkのことではないことの現われでもある。

 つまり、.NET Enterprise Servers製品は「XMLでのデータのやりとりが強化されているサーバ製品」と捉えるのが正しく、.NET Frameworkに対応している、.NET Frameworkで構成されているといった意味ではない。そうとはいえ、.NETのベースになっているテクノロジが.NET Frameworkであることから、将来的には、.NET Enterprise Servers製品も、いっそう.NET Framework対応することが予想される。たとえば、SQL Serverの次期バージョンである「SQL Server 2005(Yukon)」は、.NET Frameworkに対応し、VB.NETやC#で記述されたプログラム実行機能が備わる予定だ。

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