第3回:そもそもグループウェアって何?集中連載 「グループウェア」は再び革新の主役に?(1/3 ページ)

1990年代に突如現れて、あっという間に大企業に普及したグループウェア。その誕生と普及の経緯、発展の歴史をひもとき、これまでのグループウェアがIT業界に起こしてきた技術的革新について振り返ってみることにしよう。

» 2004年07月20日 00時04分 公開
[吉川幸比古,ITmedia]

 前回まで、グループウェアの代名詞ともいえるLotus Notesや新しいIBM Workplace Client Technologyに触れだが、今回は、グループウェアの誕生と普及の経緯とその発展の歴史をひもとき、これまでのグループウェアがIT業界に起こしてきた技術的革新について振り返ってみることにしよう。

 グループウェアは1990年代に突如現れて、あっという間に大企業に普及したITツールだ。グループウェアの原点は電子メールとニュースグループであり、それは今のインターネットの前身である「ARPANET」から「USENET」に引き継がれそこでいろいろな活用法が模索され、1980年代のCSCW(Computer-Supported Cooperative Work)=コンピュータ支援による共同作業、という学術的研究を経たのちに、コンピュータソフトベンダーによってさまざまな製品として開発・販売されてきている。

 その中の一つが、「ノーツの父」と呼ばれるレイ・オジー氏(現在はGroove Networks創業者)によって1989年に製品化されたLotus Notesという製品だった。

時代の背景とLotusがもてはやされた理由

 このLotus Notesが登場した1990年代の前半というのは、企業内でのPCの導入が進み始めた時期であり、このころからPCを使った文書の作成や保管が始まっている。その後、1990年代半ばには多くの企業で1人に1台のPCが行き渡り、これに合わせてPCをそれぞれ別個に利用するだけではなく、つないで利用するためのLANの設置が進んだのだ。

 実は同じ時期、多くの企業が抱えていた課題に「ホワイトカラーの生産性向上」があった。この背景には、それまでの基幹システム導入によってある程度の定型業務の情報化が完了してしまっていたこともある。

 企業においてブルーカラーは、通常定められた作業を一定手順にしたがって遂行することで業務をこなしていくことが期待される。特に日本企業における初期の情報化では、このブルーカラーの業務をより早く簡単に処理をすることに目的が置かれ、まず給与計算、そののちに受注処理、在庫管理、生産管理業務といった基幹系業務における効率化が進んだ。

 こうしてブルーカラー業務の効率化が一服した次に焦点が当てられたのがホワイトカラーの業務の効率化だ。特に当時日本企業のホワイトカラーは、欧米のそれに比べると著しく生産性が低いと指摘されていたのである。

 ところが企業におけるホワイトカラーの業務は、非定型的であり時間的にも空間的にも同期性や連続性が少ないものが多い。それまでの生産現場での情報化手法や技術では、効果的な情報化は難しい。企業におけるPCの大規模導入は、このホワイトカラーの生産性向上を狙いとしたものだったのだが、PCを導入するだけでは生産性は向上しないことがすぐに露呈してしまった。箱(ハードウェア)だけでは不十分であり、その上で稼動して実際に人間を支援するソフトウェアが必要であることが分かったのだ。

 このような背景のもとに登場したLotus Notesは、Lotus Development(当時)の優れたマーケティングによって「グループウェア」という新しいカテゴリーの製品として、ホワイトカラーの生産性を向上させる、あたかも切り札のように宣伝されたのだ。当時も「グループウェア」の名を冠したライバル製品は「GroupMax」をはじめ幾つか存在していたのだが、あっという間にグループウェア市場はLotus Notesに席巻され、その後しばらくの間、グループウェアの歴史はそのままLotus Notesの歴史となる。

Lotus Notesの革新性

 登場したころ、グループウェアは革新的なツールとしてもてはやされていたのだが、実のところその機能といえば文書共有機能と電子会議室機能ぐらいのものであった。

 それでも当時としてはこれだけでも十分に革新的な技術だった。1台のPCを部署内で共有していた時代には、文書(ドキュメント)は共有するPCのハードディスク内のあらかじめ決められたフォルダ内にルールに沿って保存すれば十分活用できたが、LANが急速普及すると、文書の保管場所だけでは不十分となり、多様化する様式の管理やバージョン管理などの問題が突如顕在化したからだ。新しい形の「文書管理」機能を持った製品が求められていたのだった。

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