第3回:そもそもグループウェアって何?集中連載 「グループウェア」は再び革新の主役に?(3/3 ページ)

» 2004年07月20日 00時04分 公開
[吉川幸比古,ITmedia]
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Notesの技術的革新性

 ここでグループウェアがこの業界にもたらした技術的な革新性についても幾つか触れておきたい。

 グループウェアが登場した時代というのは回線の帯域幅も非常に細く、グループウェアのような全社員が利用するようなシステムの導入や構成には相当の工夫を要した。この面でもLotus Notesは当時から先進的な機能を兼ね備えていた。すなわち高度なレプリケーション機能の実装によりサーバの分散配置運用を可能としていたのである。

 Notesのレプリケーション機能はデータベース単位ではなく文書単位(後にフィールド単位まで拡張)での複製を可能としていた。このため帯域幅の細いWANを通じても遠隔地のサーバとデータの同期が図れ、各拠点のユーザーは比較的高速なLANを使って分散配置されたサーバを利用するという「ハブ&スポーク」のアーキテクチャーを実現できたのだ。

 その後のネットワークの帯域の拡大、通信回線の維持コストの低下とサーバ管理人件費の相対的上昇によって、このサーバの分散配置とハブ&スポークというアーキテクチャーは、時代遅れのものとなり現在はサーバコンソリデーションという別のトレンドの標的にはなっているが、当時にLotusNotesが実現したこのアーキテクチャーは今後も充分に応用が可能ななものである。例えば、昨今ビデオや音声といった大容量なマルチメディアコンテンツの増大と、イーラーニングのようなそれらを大人数で使うようなシステムが普及してきている。こういった新しいシステムの分野では現在の回線の帯域でも充分とはいえず、ハブ&スポークアーキテクチャーとレプリケーションの仕組みを応用する余地は大きい。

 また、文書共有のさきがけとなったグループウェアでは、当然セキュリティの確保といった問題意識が芽生えるのも早く、この面でも暗号化やアクセス権といったグループウェアを通じて開発・改良されていったテクノロジは多い。とくにLotusNotesの特徴であった詳細なアクセスコントロールの設定では、ユーザーグループやロールといった概念を提唱・実現して機能として取り込んでいった。これらの機能は、今でもこうした文書管理系ソフトでのセキュリティ管理のお手本とされている。

インターネットがもたらしグループウェアの変革点

 このように順調に機能を拡張しユーザの利便性を向上させるとともにホワイトカラーのワークスタイルに変革をもたらし続けてきたグループウェア(= Lotus Notes)だが、数年前にこのLotus Notesにとって決定的な出来事が起きた。それがインターネット技術をベースとした企業内イントラネットの普及とブラウザの普及である。

 インターネット革命のあとに企業内で構築され始めた「イントラネット」とは、インターネット標準技術に基づく企業内ネットワークのことだ。これは社内にWebサーバを設置して、社内で共有すべき文書を蓄積・公開して情報共有を行おうというコンセプトだが、まさにこのコンセプトは当時のグループウェアの目指すものだった。

 しかも。Webサーバ上でCGIなどのプログラムを稼動させることで、スケジュールや会議室予約といった簡単なアプリケーションも実現できる。さらに企業内のインフラシステム担当者に最も注目されたのは、Webサーバにはブラウザさえあればアクセス可能だということだった。

 Lotus Notesは、その豊富な機能と使いやすいユーザインタフェースを実現するために専用のクライアントソフトをインタフェースとし、その上に各種の豊富な機能を実装してきていたが、度重なる機能拡張とバージョンアップの結果、このクライアントソフトが肥大化してしまっていた。この肥大化したクライアントソフトをバージョンアップして各PCに配信管理するコストが企業内のインフラ管理担当者には無視できないところまできていたのである。

 イントラネット化の波は、ついに1997年には国産の機能的価格的に手軽なツールして「サイボウズ」というWeb型グループウェアを生み出している。Lotusを吸収合併したIBMもこうした流れに対し、手をこまねいているわけではなく、Notes R4.6ではNotesをWebサーバとして活用するDominoという概念を打ち出し、その後Java対応、ポータル化などの機能拡張を図った。しかし、これらはユーザーに爆発的に支持されているわけではなく、結果としてNotesの将来性に暗雲が立ち込めてしまうことになってしまった。

 こうして、グループウェア = Lotus Notesの時代は終わりを告げ、現在はWeb型グループウェアとNotesに代表されるクライアントサーバ型グループウェアのせめぎあいの時代となっている。

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