第2回 クライアント環境に革新をもたらすIBM Workplace構想集中連載 「グループウェア」は再び革新の主役に?(1/2 ページ)

IBM Workplace製品群が狙うのは、サーバで集中管理されるコンポーネントを必要に応じてダウンロードでき、さらに生産性を高める技術革新を継続できることだ。基盤となる技術は、Eclipseベースの「IBM Workplace Client Technology」に変わっても、セキュリティを確保しながら、かつ使い勝手の良さを追求する考え方は、Notesと共通している。

» 2004年07月12日 16時33分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 初回は、技術革新によって1990年代のグループウェアをリードしたNotesについて書いた。当時まだ脆弱だったネットワーク環境において、しっかりとしたセキュリティを確保し、かつRAD(Rapid Application Development)環境を含めた、使い勝手の良さを実現していたNotesはやはり際立った存在で、しかもこれらの革新が1つのパッケージに収められていた。

 これはあまり知られていないのかもしれないが、Notesは、Dominoサーバが登場するまで、実のところサーバとクライアントでコードの違いはなかった。最初はVAXベースだったが、GUIの時代になってからはマルチタスクOSとして一日の長があったIBMのOS/2をターゲットに開発され、ピアネットワークのスタイルを取った。お世辞にも高速とは言えなかったネットワーク(オフィスを出れば28.8kbps程度のダイヤルアップ)でも、レプリケーション(同じ内容をネットワークやローカルマシンに複製)し、あとは差分をやり取りすることによって、必要とされる情報を、必要とする人に配信することができた。ライセンスにもこうした考え方が貫かれ、サーバとクライアントの区別はなかった。

 その後、Windows版が登場したが、生半可なPCではNotesを快適に使うことができなかったのは、コード上はサーバとクライアントで違いがなかったNotesのアーキテクチャによるところが大きい。

 ちなみに同じころ、IBMはコードネームで「Workplace OS」と呼ばれる開発プロジェクトが進行していた。OS/2を次世代のクライアントOSとし、マイクロソフトと袂を分かってからも独自に改良を重ねてきたIBMだが、いかんせんISVらの支持をなかなか得られなかった。そこで同社は、米カーネギーメロン大学のMachカーネルをベースに、メインフレームで培った仮想マシン機能を盛り込み、OS/2、Windows、Macintosh、UNIXといったさまざまなOS環境を走らせ、アプリケーション間の互換性も持たせようとした。今から考えても途方もないプロジェクトだった(同プロジェクトとの関連性はないが、のちにMac OS XがMachを採用するに至った点は興味深い)。

 時はずいぶんと流れ、この5月中旬、IBMはクライアントソフトウェアの新戦略、「IBM Workplace」を発表した。いわゆるユビキタス時代を睨み、PDAや携帯電話といった多様なモバイル機器への対応をうたうなど、Workplace OSと名称は似ているが、ずっと現実的に軌道修正されている。

 新しい戦略を反映したIBM Workplace製品群は、選択肢と柔軟性をユーザーに提供すべく、デスクトップやノートブック(Windows、UNIX、Linux、Mac OS)だけでなく、今後登場するだろうさまざまなモバイル機器(Symbian OSなど)にも対応する。

次世代のリッチクライアント

 現在、80%から85%のアプリケーションのユーザーインタフェースはHTMLで書かれているという。こうしたWebアプリケーションへの移行には理由がある。インターネットさえあれば、どこからでも簡単にアクセスでき、クライアント端末の管理からも解放されるからだ。

 しかし、その反面、操作性が犠牲になったり、そもそもネットワークのないオフライン環境では利用できないなど課題も見えている。5月下旬、BEA Systemsがユニバーサルクライアント構想として「Alchemy」(コードネーム)をぶち上げたのも背景は同じだ。

 IBM Workplace製品群が狙うのは、サーバで集中管理されるコンポーネントを必要に応じてダウンロードでき、さらに生産性を高める技術革新を継続できることだ。基盤となる技術は、Eclipseベースの「IBM Workplace Client Technology」に変わっても、セキュリティを確保しながら、かつ使い勝手の良さを追求する考え方は、Notesと共通している。

 IBM Workplace Client Technologyはクライアント環境ながら、小型のJavaアプリケーションサーバ、データベースを搭載し、ユーザーインタフェースのフレームワークやプラグインのアーキテクチャとしてEclipse 3.0を採用する。さらにプロビジョニングのためのTivoliエージェントや、オフライン時の使い勝手を改善するためにレプリケーション機能も盛り込まれている。オープンスタンダードの環境においても、Notesと同様のコラボレーション環境を実現するための新しい技術だ。

 IBM Workplace Client Technologyが支える次世代のリッチクライアント環境は、JavaとEclipseの革新によって、幅広い選択肢と柔軟さをユーザーにもたらす。

 現在、米国ではNotes/Domino 7がベータテスト中だが、2005年末から2006年初めにリリースが予定されているNotes/Domino 8では、既存のNotesアプリケーションがそのままIBM Workplace環境で動作するようになる。Javaで書かれたNotesクライアントのモジュールが必要に応じてWebブラウザにプラグインされ、その上で既存アプリが動作する仕掛けで、サーバによる高い管理性と使い勝手の良さを併せ持つわけだ。

 さらにIBM Workplace Client Technologyは、ひとりIBMだけのものではない。オープンソースとして公開されているEclipseをベースとしているため、プラグインして使える、さまざまな実行環境が入手可能だ。例えば、COBOLアプリケーションを実行するプラグインもあり、レガシー資産を新しい環境で生かしているユーザー企業も既にあるという。

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