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» 2004年06月22日 02時52分 公開

集中連載 「グループウェア」は再び革新の主役に?:第1回 EclipseをベースとしたIBM Workplace Client Technology

かつてグループウェアはソフトウェア技術のイノベーションをリードした。インターネットの爆発的な普及によって、Webベースのコラボレーションツールが幾つも登場しているが、例えば、グループウェアの草分けであるNotesが確保していたセキュリティや柔軟性、そしてパッケージングの妙は今も遜色がない。EclipseをベースとしたIBM Workplace Client Technologyによってグループウェアは再びイノベーションの主役になれるのか?

[浅井英二,ITmedia]

 かつてグループウェアはソフトウェア技術のイノベーションをリードした。個人の生産性を高めるツールとしてスタートしたPCだが、1990年代に入ってネットワークに接続されるようになると、グループしての生産性を引き出す武器へと昇華する。インターネットの爆発的な普及によって、Webベースのコラボレーションツールが幾つも登場しているが、例えば、グループウェアの草分けであるNotesが確保していたセキュリティや柔軟性、そしてパッケージングの妙は今も遜色がない。

 そして今、そのNotesが、本来のあるべき姿を取り戻しつつある。1995年にLotus DevelopmentがIBMに買収されて以降、Notesもやや方向性を見失ったように思えたが、この5月中旬、国内でも「IBM Workplace Client Technology」をベースとした「Lotus Workplace」製品群が発表され、再びイノベーションの主役へと躍り出ようとしているからだ。

 今年1月のLotusphere 2004 Orlandoでベールを脱いだIBM Workplace Client Technologyは、オープンソースの統合開発環境として知られるEclipseをベースとし、IBMがさまざまな拡張を図ったサーバ管理型のクライアント環境。小型のアプリケーションサーバやデータベースを搭載、JavaのWebアプリケーションをオフライン時にもオンライン時と同様に利用できるレプリケーション機能も備えている。Javaで書かれたアプリケーションは、サーバからダウンロードされ、クライアント環境にプラグインされて動作する。Tivoliのエージェントも組み込まれ、集中管理によりアプリケーションの修正や更新も容易となる。Fatクライアントの使い勝手の良さとThinクライアントの高い管理性を併せ持つ、新しいリッチクライアントだ。

Notesの父の約束

 ただ、この考え方は決して新しいものではない。1996年、日本でのNotes 4.0出荷を祝うべく来日したNotesの父、レイ・オジー氏(現在はGroove Networksの創業者兼CEO)は当時、「Notesの技術や機能を今後はインターネットにも適用していく」と話している。依然として脆弱だったネットワーク環境において、しっかりとしたセキュリティを確保し、かつ使い勝手の良さを実現していたNotesはやはり際立った存在だった。しかも、技術をばらばらに提供するのではなく、1つのパッケージに収めたことがその価値をさらに高めていた。

 しかし、既にLotus 1-2-3がExcelの前に敗色濃厚となり、NotesもMicrosoft Exchangeの攻勢に晒され始めていた。また、これは偶然かもしれないが、IBMによる買収とほぼ同時期に始まったインターネットの爆発的な普及は、優れた技術をうまくパッケージングしたNotesにも容赦なく襲い掛かった。「Notes is dead.」(Notesは死んだ)といわれたのもそのころだった。

 Notesの父といわれたレイ・オジー(現在)が去り、1996年のLotusphereでは「“Notes is dead.”is dead.」という名言を残した当時のマイク・ジスマン会長兼CEOやその跡を継いだジェフ・パポウズ氏もIBMへの統合が進むにつれ、表舞台から姿を消した。IBMは一貫して顧客らに対してNotes/Dominoへの投資を確約したが、同社がJavaに代表されるオープンなテクノロジーへ熱心なあまり、顧客らのあいだには「Notesはどうなる?」「開発スキルは将来も生かせるのか?」といった不安がくずぶった。当然、競合がしのぎを削るIT業界のこと、ライバルはここぞとばかりに攻勢を仕掛けてくる。

 IBMによる買収から9年近くが過ぎたが、振り返ってみると常にこの繰り返しだったように思う。IBMがLotus統合を慎重に進めたがあまり、わずかな不協和音もプレスの標的となったし、「対決」の構図を好むメディアにとって、Microsoftの攻勢は格好のネタだ。「ブルーに染まるLotus」「Notes vs. Exchange」── そんなタイトルが踊った。

ワークグループ分野再考

 しかし、顧客は踊らなかった。むしろ、Notesに対して驚くほどの忠誠心を示している。泥仕合も冷静に眺めていたといっていいだろう。IBMによれば、Notes/Dominoのユーザー数は、ワールドワイドで1億、国内だけでも1000万を超えているという。2002年における金額ベースのシェアは、ワールドワイド、国内どちらも約50%と高い。

 メッセージングや文書管理といったモジュールごとに比較的低価格で提供するJ2EEベースのLotus Workplace製品群を本格的に市場投入する一方、顧客の支持にこたえるべく、豊富な機能とユーザーによるカスタマイズが可能な柔軟性を兼ね備えたNotes/Dominoへの投資継続も米IBMは約束する。その金額は向こう3年間で約1000億円に上る。

 「マイクロソフトが彼らのWebサイトでわれわれの製品について書いてくれるのはありがたいが、“移行を検討しなければならない”というのは間違い。これだけの顧客がいるのに、それはあり得ないこと」と話すのは、日本アイ・ビー・エムでLotusソフトウェアのブランドマネジャーを務める澤田千尋氏。

 かつてレイ・オジー氏が約束したのは「Groove」として既に日の目を見ているのかもしれないが、IBMはオープンなJ2EEテクノロジーをベースにその約束を果たそうとしている。2006年のバージョン8でNotes/Domino資産もそのまま引き継げるようになるIBM Workplace Cient Technologyの登場をきっかけにワークグループ分野を再び考えてみたいと思う。

 次週はIBM Workplace Cient TechnologyをベースとしたLotus Workplace製品群についてもう少し詳しく見ていくことにする。

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