第3回:そもそもグループウェアって何?集中連載 「グループウェア」は再び革新の主役に?(2/3 ページ)

» 2004年07月20日 00時04分 公開
[吉川幸比古,ITmedia]

 Lotus Notesは、この文書管理のために、文書を体系立てて蓄積するためのフォームと、それらを使いやすい形式で見せるためのビューという2つの概念を提供した。しかもLotus Notesでは、蓄積する文書の種類や特徴に合わせて柔軟にフォームが設計でき、使う人が文書を見たいときや使いたいニーズに応じて複数のビューを作成することができたのである。

 もう一つの電子会議室機能は、作業を行うメンバー間の打ち合わせや特定のテーマについて意見を交換したり議論を行い、アイデアやノウハウなどを随時書き込んでデータベース化するためのツールだが、これも当時としては画期的な機能だった。

 これらはUSENETなどで開発されたニュースグループを参考に作られたものだが、パソコン通信で人気を集めた電子掲示板と同様、一般ユーザーに仮想的なコミュニケーションの「場」を提供した。今でこそ、インターネットの普及によりこういったバーチャルコミュニティは世の中に非常に一般的なものとなったが、企業における人と人のコミュニケーションを機械で支援できるというインパクトを与えた意味でもグループウェアの役割は大きい。

コミュニケーション基盤としてのグループウェア

 実のところLotus自身も電子メールソフトは「cc:mail」という別製品を出していたように、当初のグループウェアはコミュニケーションツールというよりは、文書蓄積やアイデアの交換のためのツールを志向していた。

 ところが、LANの普及に合わせて企業内で電子メールの導入が進むと、グループウェアの主要な利用者であるホワイトカラーは、業務上必要な連絡だけでなく、文書の受け渡しや、意見、アイデアの交換まで電子メールを使って行うようになったのである。電子メールと、文書管理機能や電子会議室機能の統合を求めるユーザーニーズはしだいに高まり、LotusもNotes R4においてメール機能をグループウェア内部に統合するに至った。

 こうした統合によって、グループウェアは革新は第二段階に入った。共有された文書のオリジナルでなくリンクをメールに貼り付けることで余計なバージョンの発生やその管理に悩まされることがなくなるとともに、逆にメールで交換されたアイデアをそのままノウハウとして蓄積することができるようになったのである。

 また、当事者間のみで交換されるメールとの統合によって、多くの人に公開される電子掲示板の位置づけと役割がより明確になるという副次的効果ももたらされた。そしてメール機能の統合によって、次にグループウェアが提供したのがワークフローとしての基盤である。

ワークフロー基盤としてのグループウェア

 ワークフローというのは、伝票処理などのビジネス上の手続きを自動化するか、手続きの処理手順を規定することで、関係者の間を情報や業務が円滑に流れるようにすることをいう。ワークフローは工場の流れ作業用のベルトコンベアにたとえられることもあるが、ベルトコンベアには、工場のそれぞれの工程で個々の担当者が行う作業(処理)のためにその間をつないで製品(データ)を正しく流通させる役割がある。

 企業においてホワイトカラーの行う作業とは多くの場合、文書の作成や修正であり、その間をつなぐデータも文書だ。グループウェアにメール機能が統合されたことにより、この文書の流通と処理の両方の役割をグループウェアで実現することができるようになったのだ。すなわち前者の文書の流通をメール機能で処理し、メールの配信を受けたユーザーは文書管理機能を使って文書を処理し、また次のユーザーにメール機能で文書を渡すのだ。当然ワークフローの最下流では文書は文書蓄積機能でによって保管され、検索や再利用にも活用される。

 このように、文書管理機能中心だったグループウェアが、メールというコミュニケーション基盤を取り込み、さらにはワークフロー基盤へと進展してきたのに伴い、ユーザーは、非定型業務以外についてもグループウェア上で処理したいと考えるようになった。グループウェアのインタフェースに、既存の基幹システムを連携させたいというニーズも生まれ、これがグループウェアの次の革新につながる。つまり、企業におけるアプリケーション基盤としての革新だ。

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