Sun Java Desktop System Release 2プリインストールのノートPCが東京フォレックス・フィナンシャルから発売された。サンのJDSと共に発表された公認ノートPCは、Windows搭載PCの代替えとして通用するか? 検証レビューを行った。
東京フォレックス・フィナンシャルから発売されたノートPC「Linasis VA」は、サン・マイクロシステムズの「Sun Java Desktop System Release 2」(以下、JDS Rel.2)をプリンストールしたB5ファイルサイズモデルだ。5月18日のJDS Rel.2発表会場にも展示されていた。これまでも、ほかのLinuxディストリビューションをプリンインストールしたPCは幾つもあったが、Sun Java Desktop Systemを採用した製品は初だ。
筆者は、Sun Java Desktop Systemの早期ベータリリースもレビュー掲載にて試用したが、Rel.2となり国内出荷されたOSとプリインストールPCの組み合わせは、果たして、Windowsの代替えとして相応しいか? この点を結論とすべく、OSとハード、2つの側面を見ていこう。
JDS Rel.2は、従来のフォントを始めとする日本語ローカライズの不十分さ、そしてGNOMEにサンの色を加えた程度だったという点を見直し、国内発売に相応しいRel.2として大きく手が加えられたものだ。
筆頭に挙げるに相応しい点は、Windowsライクな操作性がより高まったことだ。ベースとなるウィンドウマネージャは引き続きGNOMEだが、ウィンドウ下部のバー(Windowsでいうタスクバー)はかなり意識をしている(画面1)。スタートボタンは「Sun」のロゴデザインから「起動」と変更、パネル右端(入力時のウィンドウ左下)を見れば標準バンドルの「ATOK X for Linux」(ジャストシステム)が見られる。また、ウィンドウのウィジェットはRel.1よりもスリムであり、ほぼWindosと同じボタン配列となった(ノンアクティブのボタンはバーの色に酷似しているので見つけにくいが、ポイントすれば色が変わる)。
起動画面を見ると、Windowsデスクトップと本機の違いは、下部パネルデザインとデスクトップに配置されたアイコン程度だ。外見をいかにWindowsに近づけたかは、時期的に微妙なもののSunがMSとの相互運用発表の影響があるのかもしれない。
ウィンドウデザインがシンプルになったことで、本機の12.1インチXGAモニタの解像度でも十分な作業領域が確保できている。以前紹介したベータリリースでは、日本語も欧文も、フォントの汚れがかなり気になった。しかしRel.2のJDSに使用されているフォントは、Turbolinux 10Dなどと同じように小さい文字用のビットマップフォントとを包含したリコーのフォントが明朝、ゴシックに採用された。Webブラウズはじめ、StarSuiteなどでの日本語表示も従来に較べてかなりきれいになったといえる(画面2)。
使用されているLinuxカーネルは、2.4.19。ベースディストリビューションはSUSE Linuxだ。そのため、2.6系列のような液晶パネルの格納で自動サスペンド可能な期待や、CPUスロットリングの機能は見合わせられている。ノートPCという特性を考えた場合、この点は少し残念な気もする。
ノートPC本体は、台湾のRIOWORKS Solution(現、Arima Computer)のCP10-VIAをベースとしたものだ。Windowsプリインストールモデルもあるため、Windows特有の機能を利用するボタンはキーボード上部右に2つあり、85キー、手前には3ボタンのタッチパッドとなっている。このキーボードは、本体サイズに合わせてやや小ぶりだが(実測16mmピッチ)、キー配列は一般の109系に準拠したものであり、特殊キーを中心から外部に追い出したり、特定のキーを小さくするといった設計ではない。
このため、キーピッチはやむを得ないが、バックスラッシュやアンダースコアなどを多用するコマンド入力は違和感なく使いやすい。本体サイズは265(W)×220(D)×23(H)、重量が1.33kg。軽量コンパクトな上にすっきりとした薄さ、軽量さも両立しているノートPCといえる。
前述の通りウィンドウマネージャはGNOME 2のため、ファイルマネージャなどはNautilus 2、メールソフトにはXimin Evolutionが標準となっている。既報レビューのベータ版ではアンチエイリアスが実装されず、日本語、欧文共にフォントが見づらかったが、本機搭載のJDS Rel.2ではフォントポイントの小さいビットマップ包含となっている。このため、表示、見栄え共に格段の良さになった。また、デスクトップの随所にブルー系のグラデーション表現があり、サンらしさデザインが見られる。一般的なGNOMEウィンドウマネージャよりもずっとスマートな外観になっている。
システム内部にはKDE 3のディレクトリも用意されていたが、Qt3などの主要コンポーネントは含まれていなかった。ただし、システム起動時のセッション選択は可能なため、必要なコンポーネントをインストールして手を加えればKDE 3も利用できそうだ。
システム設定などはGNOMEのコントロールパネルとほぼ同様だが、幾つかJDS独自の機能も盛り込まれた。例えば、システム情報は各デバイスごとに分類され、より詳細な情報表示が可能だ。ただし、Windowsと比較した場合、メニューの「設定」と「アプリケーション」→「システムツール」に分割され、さらに「このコンピュータ」内にも「設定」(これは、主としてGNOME関係のみだが)がある。システム関連の設定は、ほぼGNOMEのGUI、包括されなかった部分はサン独自のGUIとして手が加わっている感じだ。従来のディストリビューションよりも設定のGUI化、扱いやすさは向上しているように思える。Windowsが「コントロールパネル」内にほとんどすべてのシステム設定を集約させている面と比較すれば、各部に分割させたJDSに戸惑うかもしれない。
また、クライアントOSとして忘れてはならないのは、画面に見られるよう「Sun Java System Update Service」が用意され、パッケージアップデートも用意している点だ。7月20日現在は、画面4のようにアップデート候補が表示された。
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