位置情報のIT化、無線LAN応用で精度実現する日立

空間位置情報のIT化はさまざまな業界で求められている。日立は無線LANを応用し、GPSと似た三辺測量方式で高精度位置情報IT化のソリューションを確立した。

» 2004年07月26日 00時07分 公開
[木田佳克,ITmedia]

 23日まで東京国際フォーラムで開催された「HITACHI-ITコンベンション 2004」。本カンファレンス&セミナーでは、「情報管理」がOAの域を超えて日常生活に欠かせないライフラインとなる時、企業はどのように関わればよいのか。日立の構想や事例が示された。

 開催2日目には、「無線LAN位置情報システムが生み出すビジネスチャンス」と題した日立の取り組みが講演された。講師は、日立製作所ユビキタスプラットフォームグループ、ソリューション統括本部、ソリューションソフトウェア開発部 部長の大手一郎氏。

日立AirLocationと各業界で求められている空間位置情報のIT化についてを解説するユビキタスプラットフォームグループの大手氏

 この講演では主に、同社の製品「日立AirLocation」を用いたソリューションについてが紹介された。

 大手氏はまず最初に、位置検知を可能とする一般的な3つのデバイス特性として「GPS」による野外用途の三辺測量方式では3〜20メートルの精度、「PHS」の屋内・野外兼用による受信電力方式では40〜70メートルの精度、「無線LAN」による基地局ID方式では30〜50メートルの精度だと挙げた。この特性を基に、日立では無線LANでも三辺測量を実現するソリューションを開発。これにより3メートルの精度を可能としている。通信速度の面でも802.11bの11Mbpsが大きな優位性になると強調した。

 このシステム「日立AirLocation」のポイントは、無線LANを利用した位置検知であり、検知サーバと基地局間の同期がキーとなっているという。

「日立AirLocation」のシステム構成

 「日立AirLocation」は、前述のようにGPSと似た位置検出特性を持ち、同期リクエストが各APに送られ、同期信号でスレーブAPが同期、そのスレーブAPはスナップショットをマスターAPとやり取りし周波数波形データの差分によって空間上の位置を限定する仕組みを持つ。「さまざまな環境を想定し、マルチパスによる反射データから最初の波形を抽出する技術が特徴でもある」と大手氏。

スレーブ(S-AP)3基以上、マスター(M-AP)1基で構成する「日立AirLocation」
精度シミュレーションのデータ

 どのような分野に応用できるのかという点について、具体的な業種での事例を示した。

 大手氏によれば、物流管理担当者からの話を聞くと、荷物を探している時間が実に50%を占めているという意見を聞くという。物品を置いた場所が分からなくなるのは、大きな時間ロスにつながってしまうと言及する。位置情報の管理が求められている理由がここにある。

さまざまな業界で位置情報のIT化が求められているという

さまざまな業界の適用例が具体化された

ホテル・空港への適用例

 ホテルでは、VIP対応にIPフォンを貸し出し、声による要望はもちろんのこと、常に先手で顧客へのサービス提供を行うという事例。空港では、搭乗遅れの乗客位置特定やカーゴの位置管理などが挙げられる。

日立電線によるIPフォン「WIP-5000」
工場での生産現場の適用例

 工場では機械の管理に用いる。限られた台数の作業機械の場所を認識すべく、RFIDが効果的とのこと。

倉庫・配送センターへの適用例

 倉庫や配送センターでは、従来であればトラックは入荷物を平置きし倉庫内でどこに置いたかが分からなくなりがちだという。作業員はPDAを携帯し、検索することで作業効率が高まる。

駐車場・港湾への適用例

 駐車場・港湾への適用例として、車のオークションで会場にて競り落としても、目的とする車は競りの最中に移動することがあり、最終的になかなか見つけられないという事例を挙げた。

病院への適用例

 院内でのいちばんのニーズは、医療器の位置管理だという。使った後に元の場所に無いと困るのはもちろんのこと。工場による事例と同じく、効率よく機器を利用するための導入となる。

 さらに、患者が院内からエリア外に出るとのアラートを出すなどの事例も示した。

 大型店舗・ショウルームへの適用例では、「来客へのサービスを自動化するようなもの」と大手氏。映像管理との連携では、来客の行動パターンを分析し、どうして売れなかったのか、どのような買い方をするのかなどを分析し、陳列を考慮できるなど、購買客の動きをパターン化することが大きな付加価値となるという。

テーマパーク・イベント会場への適用例

 テーマパークでは、待ち時間の解消などが大きな事例ポイントだ。PDA貸し出しによるアトラクションの事前予約も可能。

オフィスでの適用例

 オフィスでの事例としては、入退室、部外者の検知などが考えられる。

建設現場・プラントへの適用例

 「端末バリエーションの広がりも重要なもの」と大手氏。PCMカード、IP電話など、屋外、屋内を問わずシームレスに位置検出を可能とするには、GPS・HEO併用などの機器利用が望まれているという。

 APのバリエーションも示された。最長で5年間のバッテリ寿命を実現するという日立の製品では、長寿命を7分に1回のビーコン限定で実現するもの。「バッテリ寿命はリアルタイム性とのトレードオフであり、7分の検出間隔を短くすることで時間軸を短くすることも可能」と大手氏。

長バッテリ寿命を誇る製品例

 ただし、写真の製品はバッテリの大きさでほとんどが占められており、例えば通学児童に携帯させるなどの展開には、小型化が今後の課題だという。

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