北米企業の約半数が社員の電子メールを検閲

Forrester Researchが行った調査によると、企業の約半数が、機密情報の流出をはじめとする法的/経済的リスクを懸念し、社員が外部に送る電子メールを監視しているという。だがこうした行為は、プライバシーに抵触する危険性もある。

» 2004年07月27日 16時05分 公開
[IDG Japan]
IDG

 大手企業の約半数が、社員が機密情報や会社に損害を与える情報を漏洩しているのではないかという不安から、社外向けの電子メールを検閲するスタッフを雇っている。

 Forrester Researchが実施した調査によると、この傾向は現在も拡大しつつある。しかし法律専門家は、電子メールを監視したいという衝動は、その会社自身の法的問題やセキュリティ問題につながる恐れがあると警告している。

 北米企業の幹部スタッフ140名を対象とした聞き取り調査の結果、企業各社は無秩序な社外向け電子メールに起因する危険性に対して重大な懸念を抱いているものの、自動スキャニングツールには満足していないという実態が明らかになった。大企業と中小企業を含む回答企業全体の52%は、スパム対策ソフトウェアに含まれるツールを使って社外向け電子メールの監視を行っていると答えている。また、IM(インスタントメッセージ)やWebベースの電子メールを監視するソフトウェアなどの自動ツールを利用していると答えた企業もあった。

 それでも、人的要素の介在が必要だとみられているようだ。従業員数が2万人以上の大企業の43.6%、中小企業も含めると30%余りが、社外向け電子メールを閲覧するスタッフを雇っていた。また、社外向け電子メールの内容の定期監査を実施していると答えた企業は3分の1で、大企業だけに限定するとその数字は38%となっている。

 企業がこういった対策を講じる理由は明白であるようだ。大企業の75%近くが、社外向け電子メールの経済的/法的リスクへの対処は、今後1年間における「重要」あるいは「非常に重要」な課題であると答えている。電子メールに関する重大な懸念として最も多くの企業が挙げたのが社外秘メモの流出で、75.7%の企業がこの問題を「懸念している」あるいは「非常に懸念している」と答えている。知的財産および企業秘密に関する懸念を挙げた企業は71.4%、プライバシー違反、不適切なコンテンツ/添付ファイル、財務情報の漏洩などをめぐる懸念はいずれも約64%だった。

 電子メール監視要員を雇っている企業の割合は業種によって異なる。最も比率が高かったのは、ビジネスサービス/運輸・物流/建設/エンジニアリング業界の45.5%。最も低かったのは製造業界の22.2%だった。電子メールの定期監査を実施している企業の比率が最も高かったのは、金融/保険業界の44.4%。製造業界では、監査を行っていると答えた企業はわずか24.4%だった。

 電子メール監視要員を雇っていない企業全体の9.3%は、今後雇う予定だと答えており、大企業だけに限るとその比率は12.8%となっている。

 これらは驚くべき数字のように見えるが、やや不明瞭な部分も残されている。この調査は、自動電子メール監視ツールを開発している企業の委託により実施されたもので、ソフトウェアの代わりにスタッフによって電子メールを監視するには費用がかさむことを強調するという狙いがある。このため、これらの監視要員が具体的にどんな作業をするのかという点には触れていない。調査の趣旨からすれば、これらの要員にとって電子メールの監視は職務の一部に過ぎず、あまり多くの時間をそれに費やさない可能性もある。また、スパム対策ソフトウェアに含まれる電子メール監視ツールを利用しているという52%の企業では、担当者が勤務時間の一部をツールのチェックに費やしているだけなのかもしれない。

 この調査の回答者の過半数が幹部スタッフあるいはITマネジャーであり、その結果から明らかなことは、企業は社外向け電子メールを法的/経済的リスクと見なしており、それを管理するために何らかの仕組みを備える必要性を感じているということだ。しかし法律専門家によると、そういった対策はセキュリティのリスクを招くだけでなく、英国ではプライバシー関連法律に抵触する危険性もあるという。

 法律事務所Masonsのデータ保護専門家、ローズマリー・ジェイ氏は、この調査について、「他人の電子メールにアクセスできるスタッフは、機密保持とセキュリティに対する責任を自覚するよう適切な訓練を受けることが肝要である。スタッフにその自覚が欠如していると、雇用主はデータ保護法などの法律で裁かれる恐れがある」と述べている。

 ジェイ氏によると、スタッフによる電子メールの監視は、セキュリティ上のリスクにもつながるという。セキュリティというチェーンで最も弱い環が人間という要素だからだ。「これは、誰が監視人を見張るのかという問題を提起するものだ」(同氏)

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