業務ロジックのハードコード「地獄」から脱出するには?

アイログのBPMシニアマーケティングディレクターを務めるジャン-イブ・トリピエ氏にBRMSについて話を聞いた。

» 2004年07月30日 22時17分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 「ターゲット顧客を部分的に変更したい」といった要望を事業部の担当者が感じたときに、いわゆる従来型の業務システムでは対応することが困難な場合が多い。業務フローがシステムの中にソースコードとして組み込まれている場合、当然コードを変更しなくてはならず、その変更の影響がシステム全体に及ぶ可能性があるからだ。影響範囲がつかめないといった状況もしばしばあった。

 最近耳にすることが非常に多くなったキーワードの1つがSOA(Service-Oriented Architecture)。SOAは、ビジネスプロセスの構成単位ごとにシステムを部品化し、ネットワーク上に公開、相互に連携させることで柔軟なシステムを構築しようとするアーキテクチャーだ。各単位は個別に完結したシステム単位になるため、仕様変更でロジックが変わっても、各単位間の接続性には問題が生じない。オブジェクト指向の流れに乗り、ブロックを入れ替えるようにシステムを変更できる点が特徴となっている。

 ここで言うビジネスの構成単位でも、SOAと同様に、「部品」のイメージで提供されるシステムが注目されている。仏アイログは、この部品の核として、BRMS(ビジネスルール管理システム)と呼ばれるエンジン「ILOG JRules」を提供する。アイログのBPMシニアマーケティングディレクターを務めるジャン-イブ・トリピエ氏にBRMSについて話を聞いた。

「損害保険の自動保険請求処理や証券会社の売買注文管理にアイログのBRMSであるJRulesが利用されている」と話すトリピエ氏。

 BRMSは、ルール設定、変更、操作、管理、自動化といった機能をシステムとして包括的に提供することで、業務プロセスの効率化を図るシステムと定義される。

誰でも顧客対応ができる体制を

 例えば、韓国の中小企業銀行は、BRMSを採用することで、2003年に法制化され韓国金融市場に導入されたバンカシュランス(銀行と保険業務を融合して幅広い金融商品を提供する施策)に基づいた商品やサービスを、専門的な知識を持たない行員でも顧客に提案できる体制を敷いた。ここでは、BRMSで定めたビジネスルールに基づき、顧客の回答に応じて適切な質問が出され、自動的に商品やサービスが顧客に推薦される。

 従来のような、ビジネスプロセスがソースコードにハードコードされている場合でも、ビジネスのルール変更が単純なケースではあまり問題にならないかもしれない。だが、複雑な変更が行われたり、細かい変更が頻繁に起こるようなケースでは、対応が非常に難しく、時間がかかることが多い。法制度の変化、競合他社の動きに対処するため、ビジネスルールは常に変更できなければならないし、対応の遅れが命取りになる恐れもある。

 こうしたときに、BRMSは、営業担当者などのビジネス側の人にも理解できる形で、素早く変更に対応できる点に優位性があるという。

 例えば、アイログのBRMS導入企業である証券会社は当初、取引ミスやボトルネックの削減や、取引前後の規制対応の向上を目標としておいた。その解決方法として、売買注文管理システムをBRMSで構築することを決めた。結果として、システムの透明性とパフォーマンスの向上を挙げる。さらに、取引ミスの削減や、規制対応ルールを一貫してシステムに適用できるといったメリットもあったという。

 BRMS導入により、IT担当者だけでなく、業務担当者も一緒にシステムに向かい合えることも、良好な業務プロセスの維持管理に大きな力になると考えられる。

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