転向者獲得に乗り出すEGA社長Interveiw

6ヶ月前に結成した業界団体のEnterprise Grid Alliance(EGA)は、グリッド環境の標準と仕様を開発中だ。EGA社長で、Oracleの標準戦略およびアーキテクチャ担当副社長を務めるドナルド・ドイチュ氏が同アライアンスのミッションおよび標準作業について語った。

» 2004年09月29日 09時42分 公開
[IDG Japan]
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Enterprise Grid Alliance(EGA)は、大手ITベンダー数社が企業分野でのグリッド採用を促進する目的で6ヶ月前に結成した業界団体だ。メンバーには、EMC、富士通シーメンス、Hewlett-Packard、Intel、NEC、Network Appliance、Oracle、Sun Microsystemsなどの企業が名を連ねている。EGAは現在、グリッド採用をプッシュすることに加え、グリッド環境においてベンダーの製品を容易に実装するための標準と仕様も開発中だ。EGA社長で、Oracleの標準戦略およびアーキテクチャ担当副社長を務めるドナルド・ドイチュ氏が先日、Computerworldに同アライアンスのミッションおよび標準作業について語った。

―― EGAが解決しようとしているビジネス上の問題は何ですか?

ドイチュ氏 EGAは2つの種類のアプリケーションにフォーカスしています。ERPやCRM、一般会計、ビジネスインテリジェンスなどのトランザクション主導アプリケーションを含む、組織の核である商用アプリケーション、そして、適切な言葉がないので“技術アプリケーション”と呼んでいる2番目のクラスのアプリケーションです。後者では、財務分野におけるポートフォリオ分析など、トランザクション主導ではないが企業にとって土台となるアプリケーションを指しています。

―― 技術アプリケーションを管理できるというグリッドの能力は、すでによく知られています。CRM、ERPの観点から見て、グリッドはどのような役割りを果たすのでしょうか? 

ドイチュ氏 グリッドは基本的役割りを果たします。アライアンス参加企業が集まった理由は、いま現在、この手の基幹の業務アプリケーションに対応するために自社製品を適用させているからです。市場をブートストラップし、企業におけるグリッドの採用を促進するという基本的な目的のために集まったのです。

―― ということは、EGAはマーケティング組織といえるのでしょうか?

ドイチュ氏 いい質問です。明らかに、EGAの目的は、グリッド技術が市場投入までに要する時間を短縮すること、創業メンバー企業が相互利益を享受できる市場を成長させることにあります。この目的に向けて、EGAは企業のグリッド採用にあたって現実の阻害要因や既知の阻害要因を識別することにフォーカスしています。これが、仕様を開発し標準を策定することを要求するのであれば、EGAはそれを行います。実際、阻害要因が市場における知識不足とか、現在の技術状況の誤解にあるのであれば、EGAはマーケティングによりこの問題に対処するつもりです。

―― EGAはマーケティンググループですか? それとも技術グループですか?

ドイチュ氏 私の答えは、6対4です。どちらが6でどちらが4なのかは、現時点ではわかりません。というのも、何を阻害要因と見るかにより異なるからです。

―― ユーザーは概して、マーケティング的取り組みに懐疑心を抱いています。これまでの“ハイプサイクル”にうんざりしているからです。どうして特定の取り組みに注意を払う必要があるのでしょう? ユーザーがEGAに注意を払う必要はどこにあるのでしょうか? 

ドイチュ氏 影響力のある大手ベンダーが参加しており、ユーザー数も増加しています。そして、われわれはどのように適用すればユーザーのメリットとなるのかを示しています。これらの製品をハードウェアとソフトウェア製品群に付け加えれば、グリッドを構築できるのです。

―― グリッドの採用に対する現実の阻害要因、あるいは既知の阻害要因は何ですか?

ドイチュ氏 技術運営委員会は、問題に対処するためのアプローチを提案するという責任を負っています。参照モデル作業グループは専門用語の一覧表である“オントロジー(形而上学)”を作成します。コンポーネントプロビジョニング、データプロビジョニングは、標準インターフェイスへの技術仕様の策定につながるでしょう。現在のインターフェイスは似ていますが、ベンダープロプライエタリなものです。ユーティリティにおけるアカウンティング(計測・課金)は、難題といわれています。グリッドのセキュリティも、まだまだ今後の課題といえます。

―― いま現在、Global Grid Forumなどいくつかのグリッド標準への取り組みが進行しています。EGAの作業は衝突をもたらしませんか?

ドイチュ氏 EGAは、他のコンソシアムから得られるものをわざわざ考案するつもりはありません。EGAの性質は、できるだけ早く企業におけるグリッド採用への現実あるいは既知の阻害要因に対するソリューションを配置するものことにあります。EGAが問題と認識しているものに対して別の団体からソリューションが提供されるのであれば、その団体とともにそのソリューションを採用するよう働きかけます。そのようなソリューションがない場合、(EGAより)優れたソリューションを構築できる別の団体があれば、EGAはそれを支援するためにその団体と関係を構築します。

―― ユーザー団体にアピールするために、どのような活動を行ってきましたか?

ドイチュ氏 すでにいくつかのユーザー団体がEGAに参加しています。われわれは現在も、積極的・意欲的に他の団体に声をかけています。

―― EGA参加企業の中には、いくつかの大手ベンダーの名前がありません。たとえばIBMやMicrosoftのような企業抜きでも、アライアンスは成功すると思いますか?

ドイチュ氏 われわれは引き続きIBMやMicrosoftに声をかけています。参加するかしないかは、彼らの選択です。IBMやMicrosoft、その他の企業には、EGAが適切な団体かどうか決定する権利があります。EGAは平等な組織で、1つの団体で、1つの意見を持つ組織です。参加費も一律で、参加企業は全て平等です。

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