RFIDとは何か?――モノと人を非接触で識別するRFIDの仕組み月刊コンピュートピアから転載(1/2 ページ)

RFID の定義について、日本自動認識システム協会は、自動認識システムの一種であり、「カード状またはタグ状の媒体に、電波を用いてデータを記録または読み出しを行い、アンテナを介して通信を行う認識方法」と説明している。「タグ状の媒体」とあるように、RFID は電波を使って荷札(タグ)を自動識別するシステムだ。RFID について技術的な解説を交えながら説明してみたい。

» 2004年10月19日 14時12分 公開
[竹下円蔵,月刊コンピュートピア]

この記事は月刊コンピュートピア6月号から許可を得て転載しています。

 RFID は、データを無線伝送するシステムだ。何と何の間で無線伝送するのかというと、「タグ」と呼ばれる小型デバイスと、「リーダー」と呼ばれるデバイスとの間でデータを伝送する。データは無線でやり取りするため、通信距離の範囲内であれば両者を接触させる必要がない。

質問すれば応答する自動認識システム

 リーダーには「インテロゲーター」と呼ばれる「質問器」があり、タグには「トランスポンダー」と呼ぶ「応答器」(超小型IC チップ)が実装されている。簡単に言えば、リーダーが質問すると、タグが応答する仕組みを持つシステムだ。

 もちろん、ICタグもリーダーも、無線伝送するためのアンテナを備えている。なお、RFIDで用いるタグは、無線タグ、ICタグ、電子タグ、ゴマ粒チップなどさまざまな呼称があるが、ここでは、ICタグと呼ぶこととする。

 ICタグ内のトランスポンダーはメモリを持っており、ここに一意のプロダクトコード(変更不可能)を記憶している。一方、リーダー内のインテロゲーターは、トランシーバーとデコーダー(復号器)で構成され、リーダーからICタグへ電波を放つことによって、ICタグに記録されているデータを読み取ったり、データを書き込んだりすることができる。

 では、リーダーはどのようなデータを読み取るのか。例えば、単純に一意のプロダクトコードと商品コードを関係付けて管理すれば、バーコードの代わりに使える。ICタグのメモリの記録方式には「リードオンリー型」「ライトワンス、リードメニー型」「リード/ライト型」の3 つのタイプがあり、バーコードの代用としてはリードオンリー型で十分だ。

電波で識別するRFIDのメリットは

 電波で識別するRFIDのメリットは何だろうか。まず、バーコードよりも柔軟なモノの識別が可能になる点だ。バーコードが1つひとつ光を当てて読み取るのに対して、RFIDは電波で離れた位置(数メートル)からコードを読み取ることができる。電波さえ届けばモノとリーダーの間に障害物がある状態でもコードを読み込むことができる。

 また、一度の質問で複数のモノの識別ができるメリットもある。複数の商品がひとつのダンボールに梱包されていても、箱内の複数の商品を一括して識別することができるため、すこぶる効率が良い。これを「アンチコリジョン(衝突防止)機能」と呼ぶ。このアンチコリジョンはRFIDの大きな特徴のひとつと言える。

 上記のような識別効率の良さは、RFIDが次世代のバーコードと呼ばれる所以だが、ICタグのメモリに情報を書き込める点がRFID の最も重要な利点となる。流通するモノに情報を書き込めるため、RFID以外の情報システムと連携できるからだ。RFID関連業界では、ICタグに書き込まれた情報のことを「タグにヒモ付けられた情報」と呼んでいる。業界はこの「ヒモ付き情報」の利活用を考えている。

 最もシンプルな「ヒモ付き情報」の利用例としては、ICタグ自体のプロダクトコード以外に、ICタグを付けられるモノに関する情報を書き込むケースだ。

 モノに関する情報とは、製品コードや製造元、製品の属性情報服ならサイズや色、素材など)、さらにはステータス情報(入荷/出荷の日時など)だ。これらの詳細情報を個品単位で管理できるようになる。

 特に、ステータスのように動的に変化する情報を書き込むことによって、生産から流通、店頭までの、製品の流れを追跡することが可能だ。これを「トレーサビリティ(追跡性能)」と呼ぶ。動的な情報を記録できるのがRFIDの一番のメリットだ。

電池の有無で異なるICタグ

 ICタグには、電池を内蔵した「アクティブ型」と、電池を内蔵しない「パッシブ型」がある。

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