2010年には携帯もIP電話に?――「ネットの父」が描く未来像(1/3 ページ)

2010年には20億人がインターネットを利用し、IPv6の普及率は75〜80%、携帯電話もネット電話に――「インターネットの父」ことビント・サーフ氏に「将来の我が子像」を聞いた。(IDG)

» 2004年11月08日 11時48分 公開
[IDG Japan]
IDG

 技術者にしては、ビント・サーフ氏はかなり頑固だ。

 TCP/IP開発者の1人であることから、「インターネットの父」と呼ばれることも多いサーフ氏は、電話によるインタビューで幅広い話題についての質問をこなした。その中では、米政権の科学技術問題への対応に軽蔑の念を表す場面もあった。同氏は、政治運動に進んで名前を出す数少ないIT業界幹部の1人だ。

 現在、MCIの技術戦略担当上級副社長を務める同氏は、今もインターネットの実状を正確に把握している。同氏はサイバー攻撃の増加を心配し、バグだらけのソフトの開発者に声を上げて文句を言うよう皆に促している。そして、いつか中国一国だけで現在使えるIPv4アドレスの3分の1以上を使い尽くしてしまう恐れがあるという理由から、間もなくIPv6が導入されるだろうと確信している。また、同氏が言うところのVoIPをめぐる「今の誇大宣伝」に協力したくないとも考えている。同氏の意見では、電話は回路交換ネットワークの主力サービスであるのに対し、VoIPサービスはインターネット経由で利用できる多くのサービスの1つにすぎないからだ。

―― 最近のサイバー攻撃で、最も怖いと思うものは?

サーフ氏 中でも厄介なのは、巧妙な「OSに侵入する」タイプのものではなく、むしろ無防備なDSL・ケーブルモデムに接続した10万台のPCに侵入し、それを踏み台に標的を攻撃する分散型サービス拒否(DDoS)攻撃です。これは実際、防御が難しいのです。われわれは今、この種の攻撃を検知して、顧客のアクセス回線に入ってくる前に進路をそらそうとするシステムを配備しています。こうしたDDoS攻撃はアクセス回線をあふれさせるので、向こう側でフィルタリングをしても役に立ちません。

―― 一部の専門家は電気・ガスのネットワークなどの重要なインフラへのサイバー攻撃を本当に懸念しています。こうしたテロの脅威についてはどうですか?

サーフ氏 テロの目的は、人々の心に不安を吹き込むことにあります。例えば、電力が奪われたり、交通システムが停止するといった不安です。この不安に信ぴょう性があれば、人々を何らかの行為を強要する武器として使えます。そこで、われわれの業界にできることで特に大事なのは、サイバー攻撃の脅威を確実にできるだけ最小限に抑えることです。この考えがわれわれ、そしてライバルと仲間たちを、インターネット実装をもっと堅牢にするという仕事に駆り立ててきました。同様に、われわれが顧客のために構築しているVPNは、次第にさまざまな形の攻撃に対する回復力、冗長性、抵抗力を増しています。

―― ですが、それでも攻撃はまん延しています。何が足りないのでしょうか?

サーフ氏 これらの取り組みはどれも完ぺきではありません。Microsoftなどの友人たちが吐き出している長いバグのリストを見れば分かるでしょう。苦労してネットワークそのものを守ったとしても、ホストはどうでしょう? ホストが十分に保護されていなければ、脆弱性が残るのです。これは良くありません。この問題は、もっと堅牢で抵抗力のあるOSを作るOSメーカーの肩に掛かっているのです。

―― そうした企業はこの側面にどう取り組んでいるのでしょう?

サーフ氏 ビル・ゲイツ氏(Microsoftの会長兼チーフソフトウェアアーキテクト)は数年前、自分の会社でこれを重要なスローガンとして取り上げました。ですが、バグの報告はまだ続いています。バグが発見され続けており、皆がパッチスケジュールに従ってアップデートできるわけではないというのは恐ろしいことです。いつか、皆が立ち上がってソフトメーカーに「こんなバグだらけのOSをなんでリリースするんだ!」と怒鳴りつけることが必要になります。ですが、こうした抗議はまだ起きていません。

―― 次世代のIPv6の進捗はどうですか?

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