世界の商品コードが標準化へ――「2005サンライズ」の影響ITが変革する小売の姿(1/2 ページ)

北米で利用されているUPCと、欧州をはじめとした100を超える国々で利用される13ケタのEANが、2005年1月に「GTIN」として統合される予定だ。複数の体系が混在していては取り引き上問題が生じることがその理由という。

» 2004年11月08日 12時08分 公開
[舟本秀男,舟本流通研究室]

 消費者が普段何気なく利用しているバーコードにも、さらなる標準化の波が訪れている。北米で12ケタの商品コード体系を基本として利用されているUPCと、欧州をはじめとした100を超える国々で利用される13ケタのEANが、2005年1月に「GTIN」として統合される予定だ。複数の体系が混在していては取り引き上問題が生じることがその理由だ。


 1975年、UPCバーコード・スキャニングの開始により、商品買い上げ情報の明細を取得することが可能となった。これにより、従来は、川上であった消費財メーカーが主導権を持っていた流通サプライチェーンに変化が生じた。それは、川下にあたる小売業が詳細な消費者情報を得たことにより、急速に発言権を増したことである。

2005サンライズ・イニシアティブ

 この年は流通サプライチェーンにおける「パワーシフト」が開始された年として位置づけられるだろう。UPC(ユニバーサル・プロダクト・コード)は12ケタの商品コード体系を基本とし、バーコードとして、また企業間取引の商品コードとして北米で採用され、その後、13ケタのEANコードとして北米以外の100カ国を越す国と地域で使用されるまでに普及している。

 ソースマーキングされたバーコードを店頭でスキャニングすることにより、明細販売情報を取得し、その情報をマーチャンダイジング、需要予測、在庫管理、顧客分析をはじめとした各種アプリケーションで利用することで、流通業情報システムが急速に変革していった。

 また、UPC/EANコードをEDIシステムで用いることにより、企業間取引とサプライチェーンの効率化が飛躍的に高まった。過去30年間の流通業システムの発展は業界標準であるUPC/EANコードによってもたらされたと言っても過言ではないだろう。

商品コード体系に歴史的な変化

 この商品コード体系に歴史的な変化がもたらされようとしている。流通業における企業間取引がグローバル化している中、北米のコード体系である12ケタのUPCとそれ以外の国々の13ケタのEANが混在していたのでは取引上、さらには処理上で大きな問題が生じる。

 このため、新たな商品コード体系であるGTIN(グローバル・トレード・アイテム・ナンバー)が登場することになった。最も大きな影響を受ける北米では数年前から一大キャンペーンを繰り広げ、新たな商品コードへの切替えを促進した。そのキャンペーンが「2005サンライズ」である。

 「2005年1月1日の夜明けと共にGTINへ移行することに伴い、12ケタの商品マスター・ファイル・データベースのままでは新たな商品が受け入れられなくなります」とUPCの管理機構であるUCC(ユニフォーム・コード・カウンシル)は全米の小売業に訴え続けた。いよいよそれが、2005年1月から全面採用される。

 この動きによって、北米以外の国々はどのような影響も受けるだろうか。

GTIN : Global Trade Item Number

 GTINは14ケタの商品コード体系であり、従来のUPCやEANコードを包含するものである。したがって、既存の12ケタのUPCバーコードや13ケタのEAN/JANバーコードが読めなくなるわけではない。

 GTINの特徴は頭の一ケタにある。GTINを物流バーコードとして使う場合、このケタの初めから8までは梱包の商品入り数カウントを表し、たとえば、6個のパックの場合1が、12ダースのパレットには8が入り、数の認識コードとしてつくことになる。頭の一ケタで入り数表示ができるので、残りの13ケタは個別商品のコード(たとえばJAN)がそのまま利用できる。また9は、量り売り商品の認識コードとして使われる。

 それでは、この変化がどのような影響を及ぼすことになるだろうか。GTINは商品に取り付けるバーコードとしての役割と、電子取引の商品コードとしての役割の両方を担っている。それぞれについて見てみることにする。

バーコードとしての役割

 すでに述べたように、既存のUPC/EAN/JAN体系のバーコードを読む上ではなんら問題は発生しない。ただし、物流バーコードITFを読む場合は、GTINの考え方に配慮しなければならない。日本では16ケタのITFコードが採用されているが、これは日本のみであり早急に国際標準のGTINに切り替えていかなければならないだろう。

 これまで、6個、1ダース、2ダース、12ダースごとに、固有のバーコードを必要としていたが、頭の一ケタで入り数を表示し、13ケタは個別商品のコードを利用した方が処理上も、またバーコード割当枠からも効果的である。

 店によっては、半ダースのパック、もしくは2ダースのケースで店頭販売するところがあり、この場合ITFを読取ることもある。ITFが14ケタであるので、スキャナー、POS、商品マスターもこれに対応する必要が出てくるだろう。

 日本では一般的でないが、果物や野菜の量り売りに欧米では小型のバーコードであるRSS(縮小バーコード)が使われ始めている。RSSは14ケタのバーコード体系になっており一ケタ目の9がそれを識別する。今後、日本でもRSSによる量り売りが登場するとGTINへの対応が必要になってくる。

 さらにRSSは小型であることから、医薬品の瓶につける計画が進んでいる。この場合もRSSが14ケタであることからGTIN対応が求められる。

商品コードとしての役割

 EDI(電子データ交換)による企業間取引が進んでいるが、インターネットEDI(Web EDI)が普及することにより、ローコストで取引データを交換することが可能となりEDIの普及は一層そのスピードを速めることになるだろう。

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