オープンソースへ急加速する日本とアジア

OSDNジャパンは11月30日と12月1日の両日、「オープンソース・ウェイ 2004」を開催する。今年はとうとうマイクロソフトまでもがオープンソースを語るという。オープンソースへの流れはどこまで続くのだろうか。

» 2004年11月12日 16時13分 公開
[渡辺真次,UNIX USER]

 Slashdot JapanやSourceForge.jpでお馴染みのOSDNジャパンは、11月30日と12月1日の両日、パシフィコ横浜にて「オープンソース・ウェイ 2004」を開催する。オープンソース業界の動向、各国政策、ライセンスや知的財産権に関する問題に興味がある企業人などにはお薦めのイベントだ。

 1998年に始まったオープンソース運動はコンピュータ業界を揺り動かし続け、いまや世界のソフトウェア業界の動向を語る上で外すことのできないキーワードになってきている。オープンソースの代表選手であるLinuxは、黎明期のオタクだけのOSや単なる低コストなソリューションという時期を怒濤の勢いで通り過ぎ、いまやサーバーやメインフレームを核としたエンタープライズ用途や組み込み分野への進出が著しい。

 また、ここ1、2年の間に「欧州オープンソース動向」でも触れているように、米国以外では政府レベルからのオープンソース推進の流れが加速しており、公共機関が率先してデスクトップLinuxを採用する試みが続いている。欧州だけでなく、日中韓を中心としたアジア地域では政府間での協調してオープンソース推進を行っていく枠組みができつつある。

日本とアジアのオープンソース推進

 オープンソース・ウェイの11月30日のセッションは、「日本とアジアのオープンソース推進」というテーマが付いており、このような日本とアジアを中心とした状況が聞けることだろう。代表幹事に日立製作所の取締役・桑原洋氏をはじめ、幹事団には日本IBMの大歳卓麻社長、NECの金杉明信社長などといったそうそうたるメンバーが集まっている。日本OSS推進フォーラムのステアリングコミッティーの座長を務めるNTTデータの山田伸一氏のセッションでは、日中韓の連携によるビジネス推進、デスクトップ利用推進、技術評価、人材育成、標準化などの取り組みについて報告し、すでに1年以上の時間が経過したことでこの協調体制から生まれたさまざまな波及効果についても話される予定だ。

 国内でのオープンソース振興については、久米 孝氏(経済産業省商務情報政策局情報処理振興課課長補佐)と高村 信氏(総務省情報通信政策局情報セキュリティ対策室 課長補佐)と関係省庁が揃って、国としての立場で話すことになっている。久米氏については、オープンソースがいかに日本のIT産業にインパクトをもたらし、そのために国が何をするのかという点を話し、高村氏は官公庁を中心とした公共セクターでのオープンソース利用についての講演を行うことになっている。特に日本においては、マイクロソフトを代表とする海外のソフトウェアベンダーの攻勢により、ソフトウェアの輸入が一兆円を越える規模に対し、輸出が数十億円という貿易不均衡が続いており、それを打破する上でオープンソースを活用した産業全体へのインパクトが重要ということなのだろう。

マイクロソフトとオープンソース

 12月1日の2日目のセッションは、「知的財産権とオープンソース」をテーマに、ライセンスや開発体制などについての議論を深めるという構成になっている。ここでの注目は、何といってもマイクロソフトの登場だろう。

 マイクロソフトはLinuxやオープンソースとは完全に対を成す企業であるというイメージがどうしても付きまとう。実際、MicrosoftのCEOのバルマー氏はオープンソースのライセンスであるGPLを批判することが度々だ。しかしながら、つい最近にもSourceForge.netにて自社版のWikiをCommon Public License(CPL)で公開するなど、オープンソースにかなりの歩み寄りをみせている。このような取り組みは、オープンソースに積極的な姿勢を見せているはずの日本国内の企業よりも実は進んでいるともいえる。

 このような状況の中で、マイクロソフトの執行役であり、法務・政策企画統括本部長を務める平野高志氏の講演が行われる。平野氏はオープンソースと商用ソフトの共存を目指す中で、特にオープンソースのライセンスモデルの問題としてどのような課題があるのかを中心に話す予定となっているが、役員クラスの講演ということで、今後のソフトウェア市場へのインパクトは重要なものとなるだろう。

 2日目はマイクロソフト以外にも今野浩氏(中央大学教授)のソフトウェア特許に関する講演や、弁護士の小倉秀夫氏によるソフトウェア提供者の法的責任についての講演など、知的財産絡みのセッションが通して行われる。Winny事件などが話題になる昨今では、製品戦略や法務担当者だけでなく、オープンソースの一開発者としても今後は重要になるキーワードであろう。

 オープンソース・ウェイ 2004は、ダイナミックに変わりつつあるオープンソースの置かれている状況に理解を深められる良い機会となるだろう。ぜひ、足を運んでみてはどうだろう。

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