商品コードの標準化と日本を考えるOpinion:ITが変革する小売の姿(5/6 ページ)

» 2004年11月15日 14時48分 公開
[佐藤昭和,花王]

 このシナリオを完成させることで、世界中の消費者に、世界中の製品をタイムリーに効率的に、そして、できるだけ安価に提供できる基盤を完成させようということだ。

 こうした壮大な構想のもとでの「グローバル標準の商品コード」の動きであるということを知っていく必要がある。では、この壮大な構想をどうやって行おうとしているのだろうか? それがHow GTINの部分だ。

 当然、さまざまな役割が必要となる。その役割ごとに複数の組織が存在する。標準を作る組織、広める組織、標準を使って次世代の企業間商取引の事例を共有する組織、そして、その全体の方向性を常にチェックしながら、環境変化に応じて方向修正していく組織など、考えてみると当たり前の体制がすでにできている。

 しかも、これらを運営しているのは、第三者ではなく、実際にビジネスをしている消費財メーカーであり、小売業であり、その流通過程に存在するさまざまな関連企業の面々だ。いわゆる「民」の企業である。

 日本では、「お手本キャッチアップ型」が身に染み込んでいるせいか、こうした背景にあまり関心がを持たれない。むしろ、商品コードに限らず、すべて個々の「パーツ」ごとに注目して、ある時点のものを完成品と見てキャッチアップし、できればより質の高いものにしようとする傾向がある。

 しかし、以上を読んで頂ければご想像頂けるように、お手本となるべき「グローバル標準の商品コード」というのは完成品ではなく、常に管理組織体制の中で修正される可能性があるものなのだ。となると、そのお手本が出来上がるのを待ってキャッチアップするのではなく、そのお手本を作る過程から参加していなければ、いつまで経ってもグローバルとの接点は出来ない。

 ここで大事なのは、グローバルのお手本を取り入れることではなく、グローバルとの接点を作り、対話していく中で、日本も含んだグローバル標準にしていくことだ。

 ここまで見てきたように、実は今回の「商品コードのグローバル標準と日本の小売」というテーマから、一般に想像されることが言いたかったのではない。つまり、自社のシステムの商品コード体系をGTIN14ケタの処理ができるようにすることではないし、単純にそうしたソリューションを作ることでも売ることでもない。まして、それを小売業だけが何か対応すればいいという問題でもない。その背景に潜むものをキチンと理解しなくてはならないのである。

 GTIN、RFID(EPC)など話題として上がってくるパーツ、パーツを、個々に取り上げていてもその実像が見えてこない。こうした「企業間」を前提とする話題を、個々の企業で対応しようとしても本当の効果に結びつかず、必然性を持って取り組んでいく姿勢が生まれないのだ。グローバルが業界として考えている、企業間を前提とした電子商取引の全体像を、日本企業も業界全体としてまず理解しなくてはならない。業界全体として協調協力し、グローバルの活動に参加していくことが求められている。

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