「UNIXの二の舞にはならない」日本SGI、エンタープライズLinux推進センターを設立

日本SGIは12月7日、エンタープライズ分野でのLinux事業を本格的に推進するため、「エンタープライズLinux推進センター」を設立したことを発表した。

» 2004年12月07日 16時05分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 日本SGIは12月7日、エンタープライズ分野でのLinux事業を本格的に推進するため、「エンタープライズLinux推進センター」を設立したことを発表した。同センターのセンター長/エグゼクティブ・コンサルタントには、OSDLジャパンでラボディレクタを務めた高澤真治氏が就任している。

 同社代表取締役社長兼CEOの和泉氏は、Linuxはもはやスタンダードとなったと話し、ミッションクリティカルな部分へLinuxが浸透することは間違いないという。

和泉氏 「これでSGIのハードを売ろうだなんてまったく考えていない」と和泉氏

「わたしたちの調べでは、日本の自動車業界ではIA64の導入が進んでいる。これは、製造業で使うアプリケーションがLinuxにもポーティングされてきたことで、TCOとパフォーマンスのバランスからIA64とLinuxの組み合わせが選択される機会が増えてきたことを意味する。基幹系の業務アプリケーションがそろえば、ミッションクリティカルな分野へもLinuxは拡大する」(和泉氏)

 しかし、その一方で、LinuxもUNIXのように囲い込む形で導入を進めるベンダーも増えてきていると話し、今回の発表を「UNIXの二の舞にならないためにすべきこと」と話す。

将来的にはコンソーシアム的な活動も

 同センターは、日本SGIがサイエンス&リサーチ分野や製造業のCAE分野でこれまで培ってきた大規模なLinuxシステムの導入・運用実績を生かしつつ、ISVやユーザーコミュニティーと連携し、顧客が抱える課題に対して適切なアドバイスを与えることで、オープンソースソフトウェア(OSS)の推進を図ることをミッションとしている。

 同センターで行う活動は、大きく次の3つに分けられる。

  • エンタープライズLinuxコミュニティーリエゾン
  • エンタープライズLinuxカスタマーリレーション
  • エンタープライズLinuxテスティングラボ

 コミュニティーリエゾンでは、日本SGIが持つ豊富なLinuxシステム構築技術およびLinux開発環境(同社のAltixシステムとその周辺機器)を、開発およびユーザーコミュニティーに解放し、課題の洗い出しや性能検証を行う。

 カスタマーリレーションでは、エンドユーザーが抱える「Linuxへの不安と期待」に対して回答するとともに、具体的かつ最適なソリューションを製品で縛ることなく提案するもの。また、著作権問題など、法務的な部分でのサポートも行われる予定。

 テスティングラボは、ISVがLinux向けに基幹業務系アプリケーションのポーティング作業を推進するためのもので、OSDLジャパンで提供しているラボとほぼ同様の形態で提供される。こちらのラボは2005年1月に開設予定となっている。

「もちろん、日本SGIがやっているからといって自社のハードやItanium 2だけの環境を用意するわけではない。XeonやOpteronなどを搭載したハードも用意する」(和泉氏)

 つまり、顧客、ISV、ユーザーコミュニティーの3社のハブとして、コンサルティング的な活動を通してOSSの普及を図るのが同社の考えだ。「顧客としては、パフォーマンスよりTCOで導入を決めるものだから、一番最適なものは何か顧客に伝えるという部分のサポートが重要」と和泉氏は話している。そして、その考えを進めた先には、SIerなどがゆるやかに集まったコンソーシアムなども考えられるのではないかという。

64ビットにこだわりたい

 約3年ぶりに日本SGIに戻ってきた高澤氏は、2001年にOSDLジャパンのラボディレクタに就任して活動を続けてきたことで、Linux関連企業やNPO団体についての知識や人脈も豊富で、それを生かしてコミュニティーなどとの接点を広げていくとしている。

高澤氏 2カ月ぶりの表舞台で緊張すると話す高澤氏

 同組織の位置づけについて、例えばOSDLとの違いとして同氏は、「OSDLは標準化など、いわゆる上流の部分を手がけているが、OSDLが企業のTCOを考えたアドバイスをしてくれるわけではない。しかし、実際の導入においては、性能要件や機能要件など、さまざな情報が必要となる。具体的な案件に結びつけ、顧客にとって最適なソリューションを提案するサポートをするのが今回の組織」と話している。

 最初のフェーズで目を向けている顧客層としては、金融などいきなり大きなところに目を向けるのではなく、自治体や、企業の部門などであるとしている。また、「64ビット環境で、かつ、ある程度大きなシステムを想定している。特に64ビットの部分にはこだわりたいと思っている」(高澤氏)としている。

「顧客が導入を検討しようと考えても、その相談相手から買うことを前提に話を進める必要があるのでは、それが本当に最適なものであるか判断しにくい部分がある。今回の発表は、オープンな色を残すことを強く意識しており、そうした囲い込みに風穴を開けるものになればと思う」(高澤氏)

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