ブロードバンド・ユビキタス社会におけるアップルコンピュータと日本SGIの類似点Interview(1/2 ページ)

日本SGIはかつてのテクノロジーベンダーから大きく変わった。この企業が時代に先んじていた技術は、ブロードバンド・ユビキタス社会が到来したことで、本格的に活用され始めようとしている。日本SGIの和泉氏は、デビット・モシュラの言葉を交えつつ時代を語る。

» 2004年12月03日 16時58分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 日本SGI代表取締役社長兼CEOの和泉法夫氏が日本SGIに就任する以前の経歴を見ると、日本IBMからタンデムコンピューターズ、そしてコンパックコンピュータの日本法人と外資系ベンダーを渡り歩いている。そんな同氏が、当時はまだテクノロジー重視で、クレイの合併が尾を引いていたSGIの日本法人社長に就任したのが、1998年のことだった。誰もがその就任を不思議に感じていた。

 そんな和泉氏、そして日本SGIが今掲げているキーワードが「ブロードバンド」と「ユビキタス」である。和泉氏にインタビューを行った内容も含め、日本SGIの取り組みについてまとめてみよう。

情報スーパーハイウェイ構想で得られたもの

和泉法夫氏

 SGIはブロードバンドの分野をリードしてきたという強い自負を持っている。1996年には情報スーパーハイウェイ構想に基づく実証実験として、NTTと共同でVOD(ビデオ・オン・デマンド)の実験を千葉県浦安市で行っているほか、USENと共同で通信衛星を使ったマルチメディア配信を行うなどしている。

 情報スーパーハイウェイ構想は結局、インフラのコストなど整備面がネックとなって、実験以上の進展はなかったとはいえ、現在のブロードバンド時代を予見させるものであったことは間違いない。

ITmedia 当時、SGIは情報スーパーハイウェイ構想の実証実験で何を得たのですか。

和泉 当時何を得たかといえば、自社が持つ配信技術への自信ということになるでしょう。しかし、より重要なのは、現在に与える意義です。ブロードバンドによる常時接続が当たり前のようになり、当時はネックだった部分が解消されてきました。その上を流れるリッチコンテンツの重要性が認識されてきたことで、日本SGIが培ってきたことが生かせる土壌となってきたのです。

ブロードバンド・ユビキタス社会の3つの要素

 同氏はブロードバンド・ユビキタス社会の3要素として、「ブロードバンド・ユビキタスネットワーク」、「リッチコンテンツ」、「ユーザーインタフェース/コミュニケーション」を挙げる。

ITmedia ブロードバンド・ユビキタスネットワークとは、これまで日本SGIが培ってきた配信技術などをベースとするいわゆるインフラの部分と考えればよいのでしょうか。

和泉 そうですね。しかし注意したいのは、「ブロードバンド・ユビキタス」というのが重要であり、これが「ユビキタス」だけですと、例えばRFIDを語ってしまうことが多いようです。それは非常に視野が狭い考えなのです。

 また、いつでもどこでもあらゆるものがネットワークとつながるという言葉にきれいなイメージを抱くかもしれませんが、実際には光と影の部分があり、データがいつでもどこでも盗まれる危険性があるということになります。つまり、情報セキュリティの考え方が、これまで以上に重要になるのです。

ITmedia 日本SGIは情報マネジメントシステムである「ISMS」を取得、そのノウハウを生かしたコンサルティングサービス「ISMS Express」を提供していますね。

和泉 今のネットワークというものはセキュリティ的には危険極まりないものです。コンテンツを発信する側は、どうすればコピーされないか、守れるかといった部分がクリアにならないと、質のよいコンテンツは提供されないでしょう。日本SGIはこれまでの経験からリッチコンテンツの守り方を知っています。このことは強みですね。

ITmedia リッチコンテンツはどういったものを指しているのでしょうか。

和泉 リッチコンテンツというと、ゲームなどエンターテイメントの分野が取り上げられるが、それだけではありません。例えば、センサーなどと併用することで、自動車の衝突時の様子を疑似的に体験できるようになるなど、放送のように決まった順序で流れるのではない、インタラクティブに体験できるコンテンツがさまざまな形で出てくることになるのです。さまざまな事象の可視化ということは日本SGIは前から取り組んできましたが、この部分は今後、大きく発展すると思います。

ITmedia インフラがあって、そこを流れるコンテンツがある。その上に必要なものがユーザーインタフェースというわけですね。

和泉 そうです。キーボードとマウスで機械に従っている、そのことに矛盾を感じないというのはおかしいんですよ。こうした状況でブロードバンド・ユビキタス社会になると、社会的弱者はその恩恵を受けることはできず、デジタル・デバイドは確実に広がります。

 こうしたことを考え、日本SGIでは、音声情報から人間の感情や感性を認識する技術として「ST」(Sensibility Technology)をパートナーと共同開発し、不自然なインタフェースからの解放を図っているのです(関連記事参照)

次ページでは、アップルコンピュータと日本SGIの類似点について和泉氏が語る。

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