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» 2004年12月09日 11時53分 公開

DellEnterpriseShowcaseレポート:企業改革とITシステム (1/2)

DellEnterprise Showcaseのスペシャルセッションとして、産業再生機構の冨山和彦代表取締役専務COOが「企業改革とITシステム」をテーマにこれまでの自らの企業コンサルタントとしての体験や、産業再生機構における取り組みなどを背景に講演した

[大河原克行,ITmedia]

 DellEnterprise Showcaseのスペシャルセッションとして、産業再生機構の冨山和彦代表取締役専務COOが、これまでの自らの企業コンサルタントとしての体験や、産業再生機構における取り組みなどを背景に、「企業改革とITシステム」をテーマに講演した。話題を集める産業再生機構の冨山氏が、ITと経営をテーマにした講演を行うということもあって、会場は満席の状況となった。

産業再生機構の冨山氏。

 冨山氏は、「産業再生機構は、20世紀型モデルの企業を、21世紀型モデルの世界に連れていくのが仕事」と話す。歴史の長い企業は、過去の成功体験や固定された過去のしがらみに縛られて変化がしにい上に、自らを変えるためのスイッチングコストも高くなる仕組みの企業が多いという。

 また、日本の社会全体がスイッチすることを考えていないため、1つの企業、あるいは産業が変化に取り組んでも、すぐに壁にぶつかってしまうという問題もある。同氏は、日本の社会全体が、21世紀型の企業モデルに変化することに対して、大きな問題を抱えていることを指摘した。

 また、冨山氏は、財務と事業の問題を別々に捉える風潮が日本には強いことを指摘し、「財務担当者は、事業の変化を捉えずに再生計画を組むことが多く、社会情勢が変化した途端に、再生計画の前提条件が崩れ、立ち行かなくなることがある。過去1年間の産業再生機構の取り組みは、財務と事業をひとつの問題として捉え、再生計画を策定することを訴えるための戦いだった」とも話した。

 現在、産業再生機構では27社の再生支援を行っている。27社の選定については、100社以上の企業に対して、検証を行った上で、事業そのものに強いベースがある、今後の成長が可能である、などの基準をもとに再生可能かどうかを判断。この基準をクリアした企業に対して支援を行っているという。

「困窮」企業も他社と変わらない

 冨山氏は、「困窮企業とつき合ってみてわかったのは、これらの企業が特別な企業ではないということ。日本の多くの企業が抱える問題が、極端に出た例にすぎない。ほかの多くの企業と違いはない」と述べた。

 困窮企業の問題点は、過剰債務であることが多いが、バブル崩壊後の影響を受けた結果であったり、M&Aを積極化しすぎた結果、あるいは設備投資を過剰に行った結果などが理由だという。「こうした企業は、急性感染症の部類。特効薬さえ投与すれば回復する。だが、過剰債務という面だけでは収まらない企業が多く、それが問題と言える」と話す。

 問題の1つは、経営不振に陥ったことで、企業が長年にわたって過小投資の状態になっていること。店舗開発投資や技術開発投資、あるい製造設備への投資などに加えて、IT投資が抑制され、企業として戦える体制が出来上がっていない例が多いという。

 2つめは、戦略力の低下という問題だ。企業として戦える体制が整っていないのに加え、競争が激化することで、その落差がますます大きくなるというのだ。

 そして、3つめが人材力の低下だという。とくに人材の老朽化が顕著に見られ、困窮企業の中には、過去10年間にわたって新卒者を採用していない例もあるという。

 「新卒を採用しないで、既存の社員の退職を待って人員を減らすというのは、一見、人にはやさしいようには見えるが、社会全体として見た場合、若い人たちに働く場を与えずに、人材を育成する場を放棄していることになる。社員のモチベーションが下がり、競争力がなくなり、現場が弱くなり、国際競争力の面でも遅れをとる。日本は、この10年間にわたって、こうした状況を放置してきており、特効薬だけで解決していたものを、慢性的な病へと発展させる可能性がある。日本の社会や企業は、この点をしっかり見極める必要がある」と警告した。

春はもう来ないつもりで

 そして、同時に「春待ち症候群」ともいうべき、過去の成長体験をもとに、また高度成長の波が来るという期待を持っている経営者が多いことも指摘する。「それは20世紀の高度成長期の話であり、21世紀には、もう大きな波は絶対にこない、ということを頭で理解するだけでなく、体で理解する必要がある」と提言した。

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