「あと5年でアナログ電話はほとんど消滅する」、米Cisco CTOジャンカルロ氏(1/2 ページ)

米Cisco Systems CTOのチャールズ・ジャンカルロ氏は、同社の描くネットワーク像の青写真を披露し「ネットワークの大部分がIPに移行する」との展望を述べた。

» 2004年12月10日 11時21分 公開
[鈴木淳也,ITmedia]

 ネットワーク業界のリーダーが想像する2009年のネットワークの姿とは、どのようなものだろうか。

 「IPテレフォニーはあくまでブロードバンドサービスの1つとなり、既存の公衆電話網(PSTN)はわずかに残るものの、大部分はIPベースへと移行することになる」と、米Cisco Systems CTOのチャールズ・ジャンカルロ氏はその展望を述べた。

 同氏は、2000年以来長らく不在だった同社CTOの座に、2004年7月に就任したばかりの人物である。先日、長距離電話会社の米AT&Tがアナログ電話サービスからの撤退を表明したばかりであり、日本でも基幹電話網のIPベースへの移行を総務省が方針として示すなど、業界全体としてのIP化への流れは必然となりつつあるようだ。

2009年、ネットワークの大部分はIPベースに

 ジャンカルロ氏は、2004年に電話のIP化が加速した後、2009年にはWi-FiベースのIP電話やデュアルバンド対応端末の登場、高音質な音楽や画像、ビデオ映像の配信、TV電話など、IPをベースにしたさらに高度な電話サービスが提供されることになると予想している。こうしたアプリケーションの統合が進むことで、各種サービスの統合が促され、さらにそれらサービスの伝送媒体であるネットワークの統合が進むというのが同社の考え方だ。

 このネットワークの将来像をCiscoでは「IP NGN(Next-Generation Network)」と呼んでおり、IP NGNを構成するのに必要なビルディングブロックの整備を進めることが同社の目標であると、ジャンカルロ氏は説明する。

ジャンカルロ氏 長らく空席だったCTOの座に着任したCisco Systemsのチャールズ・ジャンカルロ氏

 IP NGNでは、ルーティングやQoS、セキュリティなどの各種機能は、ネットワークを構成するそれぞれの機器とサービスレイヤに格納され、それらは仮想化(バーチャライゼーション)によって統合される。

 従来、専用線、音声網、ATM/フレームリレー、IPネットワークという形で別々に存在していたネットワークは、IP NGNを中心とした1つのネットワークとして統合され、管理性や柔軟性、スケーラビリティなどが向上し、すべてを中央で制御する(シスコでは「Service Center」と呼んでいる)ことが可能となる。

 前述のPSTNは、レガシーとしてIP NGNに付随する形態をとることになる。Ciscoでは、IP NGNへの移行が進む結果、交換機として導入されていたクラス5スイッチが、やがては自然消滅していくことになると予想する。

すべての機能はIPネットワーク層へ

 ジャンカルロ氏は、企業ネットワークにおけるシスコのビジネスチャンスについても言及した。

 現状のネットワークでは、ファイアウォールやSSLなどのセキュリティ機能やVPNの仮想ネットワーク機能は、アプリケーションが動作する上位層で動作している。これに対しCiscoでは、これまで上位サービスと考えられていた機能をどんどんIPネットワークの層へと吸収することで、IP NGNの考え方を企業ネットワークにも持ち込もうとしている。

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