リスクマネジメントとしてのメールシステムの堅牢性確保Dell Enterprise Showcaseレポート

「Dell Enterprise Showcase」で、デンソークリエイトの経営企画本部技術管理部の鈴木匡氏が全社メールシステム再構築の事例を紹介した

» 2004年12月10日 12時01分 公開
[宍戸周夫,ITmedia]

 デルが12月8日に開催した「Dell Enterprise Showcase」で、デンソークリエイトの経営企画本部技術管理部の鈴木匡氏が、ITリスクマネジメントの一環として、Dell|EMCのCXシリーズとEMC Replication Manager(ERM)を用いた全社メールシステム再構築の事例を紹介した。

メールシステムの堅牢化に取り組む

 デンソークリエイトは、デンソーが100%出資する子会社。ソフトウェアの受託開発や市販ソフトウェアの開発や販売を行っている。今回は、マイクロソフトのExchange Server 2003に障害が発生したことから、同サーバのクラスタ化やストレージ・システムの冗長化により、メールシステムの堅牢化に取り組んだ。

 セッションの冒頭、鈴木氏は企業に悪影響を及ぼす危険要因についてコメントした。

 「現在の企業には、ウイルス、情報漏えい、不正アクセス、自然災害、不意の障害などさまざまな危険要因が取り巻いている。企業はこれらの影響を極小化し、業務の継続能力を高める必要がある」(鈴木氏)

 しかし、そうした矢先の2004年3月、同社のメールシステムであったExchange Serverが突然ダウンしてしまった。OSが起動しないという異常事態で、最終的には別のサーバをインストールしたが、復旧には6時間半を要したという。鈴木氏は「メールはいかに大切で普遍的なアプリケーションかということを痛感した」という。そこで同社は、急いで堅牢なメールシステムの構築に取り組んだ。

 まず、メールサービスに障害が発生した原因として、ハードウェアとソフトウェアの両面から検証した検討を重ねた。結果として、ハードウェアではサーバ本体、ソフトウェアとしてはOSであるWindows、そしてExchange Serverも冗長化することが必要な対象として浮上した。

 同社では、こうした課題を解決するために、バックアップ運用に問題がなかったかどうかを検討した。

 「サーバに負荷がかかり業務が停止する恐れがあるため、日中のバックアップは不可能である。ネットワークも状況は同じであるため、結果としてバックアップはやり直しがきかないという問題があった。また、リストアにも時間がかかる。これはデータベースのサイズが大きくなればなるほど、さらにユーザーが増えれば増えるほど問題が顕著になる」(同氏)

 そこで同社は、サービスを極力停止させない、障害時のリカバリ時間短縮、運用負荷の軽減という3点を要件に、堅牢なメールシステムを構築することだった。

講演した鈴木氏

SnapViewとERMを採用

 この解決策として、同社は、Dell|EMCによるExchange Serverクラスタを採用することで、システム上のどこのパスからでも二重構造が取られている。またバックアップサーバとして、ストレージにつながるサーバも設置された。

 「サーバの冗長化については、フォルトトレラントサーバとクラスタサーバという2つの考え方がある。しかし、フォルトトレラントではハードウェアの冗長化は確保できても、OSの論理破損はカバーできない。理想はフォルトトレラントで、かつ、クラスタという構成だが、それでは予算オーバーになる。そこで、サーバをクラスタ化する一方、データに障害が起きた場合を想定してDell|EMCのストレージ機能の一つであるSnapViewを採用することにした」(同氏)

 SnapViewは、サーバに負荷を与えず、またネットワークにも負荷を与えることがないという特徴がある。しかも、「BCV/クローン」によって、ディスクベースによる差分更新が可能であるため、バックアップ速度が速く、リストアにかかる時間も短い。また、テープと併用することで、データを複数世代にわたり保持することができるという。

 「しかし、SnapViewだけでは一連のバックアップは苦しいところもあったので、さらにERM(EMC Replication Manager)を用いてExchanger Serverの複製プロセスを自動的に行う構成にしている。ストレージの中でクローンが走るが、そのときERMのサーバとExchangeのサーバが連携して動いており、複製が終わったらそれを切り離し、ストレージの中で独立したものになるようにしている」(同氏)

 実際には、バックアップサーバでベリタスの「Backup Exec」が動いており、ストレージでは本番データとクローンが動いている。そのクローンをBackup Execで動かし、クローンを切り離し、そのクローン領域をバックアップしてテープに書き込む作業をしている。ストレージをバックアップし、しかもクローンの部分をテープにバックアップするのでExchangeには影響がまったくないことがポイントだ。

 同社のメールシステムのデータベース・サイズは60ギガバイトどだが、BCV/クローンを用いると、数分でデータを復旧することが可能となったという。これによって障害からの回復時間が大幅に短くなった。

 デンソークリエイトはDell|EMCを用いてメールシステムの堅牢化に取り組んだが、そのポイントは、クラスタによる障害停止時間の短縮、ERMによるバックアップ・リストアの高速化という2点に集約できる。

 「復旧に数時間も要していたころに比べると、クラスタによる切り替えは1分以内で完了しており、はるかに改善した。これによって、企業に悪影響を及ぼすさまざまな危険要因を極小化し、業務の継続性を高めることができた」と鈴木氏は高く評価した。

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