ベストオブブリードで構築する高精度の在庫管理システム導入事例(1/2 ページ)

アールエスコンポーネンツは、企業の研究開発部門などが、試作品を作るための電子電気部品を中心に製品を扱う。PeopleSoftをはじめ、CRMやSCM、分析ツールなど、オープンアプリケーションを組み合わせたベストオブブリード型の企業システムの手本ともいえる。

» 2004年12月12日 00時30分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 神奈川県横浜市のアールエスコンポーネンツ(RS)は、企業の研究開発部門などが、試作品を作るための電子電気部品を中心に、5万種類の製品を扱うカタログ通信販売を手がける。英国を本社におく日本法人だ。ビジネスの強みについて、同社の情報システムカスタマーサービスを担当する取締役、杉山正二氏は、「商品1つから注文できることが最大の特色」と話す。価格競争を避ける独自のビジネスにより、年25%の成長率を堅持している。

RSコンポーネンツの倉庫。バッテリ、テスタ、コネクタ、各種半導体、ねじ、スイッチなど5万点にわたる商品のすべてをこの倉庫で扱う。

 顧客の平均注文金額は1万5000円、45の製品カテゴリに5万点の商品を扱う。調達の40%は国内、それ以外は英国本社を中心とした海外からとなっている。1日のオーダー数は1000件、販売回転率は9月の実績で3.1回となっている。また、販売チャネルとして、カタログだけでなく、インターネットサイト「RS Online」も充実させている。成長率は年40%以上を継続、売り上げ全体の約50%を占めるようになった。Webサイトへのアクセス件数は1日に9000件に上る。

 RSを利用する顧客企業は、製品企画などのプロセスにおいて、必要な部品を幅広い選択肢の中から必要なだけ買えることにメリットがある。一般に、工業部品を購入する場合、決められたロット単位でしか購入できないことも多い。試作機を作るための部品が1つあればいいというケースでは、部品1つから発注できるRSのシステムは重宝するというわけだ。また、電話やインターネットから注文できる手軽さ、同日に出荷されるスピードの早さも、評価される理由になっており、RSをリモートの倉庫代わりに考えている顧客企業もあるという。

 「RSのビジネスの核は、多数の品ぞろえと少量の製品供給に徹すること。価格競争に巻き込まれることを避けるため、大量供給のビジネスには参入しない。」(杉山氏)

 同社のビジネスを支えるのは、膨大な在庫を効率的に管理する横浜市瀬谷区の横浜ロジスティックセンターだ。東急田園都市線の南町田駅から自動車で15分の同センターを訪れた。

 RSのサービスでは、10時30分までの注文なら、東京、神奈川、千葉の一部に限り当日19時までの配達が可能。アスクルならぬ「今日来る」サービスを心がけているという。在庫は、1品目1ロケーションで管理し、品目の識別には青、クリーム色といった洗濯バサミを使うといった地味な工夫もしている。基本的に管理作業は人間が行っており、製品の取り違いといった「間違い率」も0.025%に抑えている。また、ICタグの導入による効率化については、「将来的には可能性はあるものの、現状では、ICタグ自体が技術面で未成熟であることに加え、コスト的にもメリットがないため検討もしていない」という。

心臓部にPeopleSoftのEnterpriseOne

 RSのシステムでは、バックエンドの核として「PeopleSoft EnterpriseOne」が導入されている。さらに、コールセンターを中心とするCRMシステムにPivotal、顧客情報の分析にはSAS、サプライチェーンマネジメントとしてManugistics、WebシステムにはBroadVisionのアプリケーションがそれぞれ導入されており、いわゆるオープン系アプリケーションのオンパレードといった状態だ。各アプリケーションをつなぐEAI(エンタープライズアプリケーション統合)の部分は、EAIを専門にするシステムインテグレータであるJIECとともに、WebSphere MQをベースに自社で開発した。

 SAPなどが、企業システムとしてあらゆる機能を提供するソフトウェアスイートの展開に力を入れているのに対して、RSのシステムは、各機能ごとに最適の製品を組み合わせた「ベストオブブリード型」の手法で構築されたシステムの典型例だ。

RSのシステム構成図。
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