ディザスタリカバリをスムーズに実現するポイントDell Enterprise Showcaseレポート

「Dell Enterprise Showcase」で、デル・プロフェッショナル・サービス事業部コンサルティングでマネジャーを務める風間徹哉氏が、ディザスタ・リカバリに関するセッションを行った

» 2004年12月14日 08時54分 公開
[宍戸周夫,ITmedia]

 デルは12月8日、「Dell Enterprise Showcase」を開催し、デル・プロフェッショナル・サービス事業部コンサルティングでマネジャーを務める風間徹哉氏が、ディザスタ・リカバリに関するセッションを行った。予測できない災害発生時にもシステムを止めることなく、ビジネスを継続させる同社のソリューションと導入事例を紹介する。

ビジネスを継続させるディザスタリカバリ

 風間氏はまず、このトラックのテーマである「Business Continuity(ビジネスの継続性)」が必要とされる背景を、次のように表現した。

風間徹哉氏

 「現代では多くのビジネスがIT基盤上で稼働しているため、システム停止はそのままビジネスにおける損失につながる」(風間氏)

 そして、その解決策について、「ビジネスの継続性を確保するためには、最少のダウンタイムで業務を継続できるハイアベイラビリティ(HA:高可用性)や、迅速なシステム復旧を実現するバックアップ&リカバリ、さらにはディザスタリカバリ(災害復旧)を検討しなくてはならない」とした。

 さらに、「HAは冗長化されたハードウェアやクラスタシステムによって実現できる。バックアップ&リカバリを既に導入しているユーザーは多いのに対し、ディザスタリカバリに関しては、まだ“検討中”とする企業の方が目立つ」と指摘した。

 システム継続のためには4つのレベルがあり、それぞれのレベルで、システムの継続性を高めるための対策を講じる必要があるというのがデルの考えだ。

 このうち、プラットフォーム、データ、アプリケーションまでは対応しているものの、最後の、サイトの部分については検討段階の企業が多い。また、従来はハイエンドシステム以外では実現できなかったこともあり、この部分が課題になっているという。

 デルは、ディザスタリカバリシステム構築にはフェーズ1からフェーズ4まで4つのプロセスがあるとする。このプロセスとは、ビジネスの継続性を実現するための計画立案、ディザスタリカバリの定義と設計、導入と実装、計画の継続の順にになる。

 この4つのフェーズにおいて、それぞれで体制やプロセス、ファシリティを考えなくてはいけない。同時に、BCRP(Business Continuity & Recovery Plan)の策定が必要となる。これは、災害時にビジネスを継続するためにどのような復旧プランを策定するかということで、災害の規模や災害時の影響度など、どの程度までの災害を想定するか、また復旧範囲、復旧時間、そしてその目的を考える必要がある。

 実際に、デルもこのBCRPを川崎市のソリッドスクエアビルで設定。このビルで、ビジネスの継続が不可能になったときに、複数のバックオフィスで業務を再開して継続するための仕組みを構築している。48時間以内に業務再開することを目標にし、これをすべてマニュアルにまとめているという。

RPOを優先するかRTOを優先するか

 続いて必要になるのが災害対策指針の検討だ。

 「具体的には、Recovery Point Objective(RPO)とRecovery Time Objective(RTO)の2つを検討し、決定する必要がある。RPOは、障害や災害が発生しシステムダウンを引き起こした歳に、どの時点のデータに復旧できるかのポイント。一方、RTOは業務が再開できるまでの時間を指す。最終データ保持ポイントと復旧ポイントの間がトランザクション損失ということになるが、このどちらを優先するか、両方とも重要とするのかを最初に決めなければ、ディザスタリカバリシステムはなかなか構築できない」(風間氏)

 そして、障害や災害からの復旧までの流れは、ハードウェアやアプリケーションを含めたシステム機器の復旧、バックアップデータよるデータ復旧、システム再開という順になる。

 RPOの場合は、コピーやバックアップ周期時間の短縮などがポイントになる。RTOの場合は、別サイトにシステムを冗長化するとか、データをあるタイミングで複製することで短縮できる。

 「さらに、ディザスタリカバリシステムの実現方法としては、プライマリーとリカバリサイトと、その間をつなぐものが必要になる。低速な通信を使うのか、ダークファイバーで高速にするのか。また、システムの重要度によって方法を選択する場合もある。具体的にはある時点のデータのみ保護するのか、ソフトウェアベースのレプリケーションをするのか、さらには、ストレージによるディザスタリカバリシステムを導入するのかなどをRPO、RTOの視点から検討する。しかし、各企業によって、ビジネスの損失を考えたときにどこまでやるかは、コストを勘案しながら検討する必要があり、これが一番大切である」(同氏)

事例から見るポイント

 続いて風間氏は、データをミラーリングする「MirrowView」を使ったストレージ・レベルの導入事例からディザスタリカバリシステム構築のポイントを紹介した。

 「まず、継続性かデータ保護か、またRPOを優先するのかRTOを優先するのかを含め、リカバリプランの目的を明確にすることが重要だ。さらに、そのリカバリプランの基づくディザスタリカバリシステムを選択しなくてはならない」(同氏)

 さらには、フィジビリティ、検証を確実に行う必要があり、そのリカバリプランに沿った体制作り、災害マニュアルの作成とトレーニングも必要になる。当然、運用も重要になる。継続してシミュレーションを行い、システムとして確実に稼働するかを検証しなくてはならない。

 さまざまな事例を通じて、ユーザー企業が抱える問題点として次のようなものが浮かび上がった。

 製造業では、製造工程や検査工程におけるドキュメントは管理されているが、サーバやストレージの停止が業務上多大な損害を招くという。また、直前までのデータを保持するために、本稼動サーバとは別の場所でリアルなデータ保護をしておきたいものの、システム運用が定常業務化していないために、バックアップ&リカバリが検討されていないといった傾向もある。

 これに対して、ユーザー企業の要望はと言うと、「災害時、24時間以内にシステムを復旧し利用可能にしたい」「災害発生前1時間以内のデータは保護したい」「災害時にデータベースのデータ損失を防ぎたい」など、企業形態などによってさまざまなものが挙げられた。

 具体的に紹介した事例は、災害時にも24時間以内には復旧したい、計画停止も短縮したいという要望を、ディザスタリカバリシステムで実現しようとしたもの。元々あったシステムの検証も含めて、3カ月でディザスタリカバリに移行する計画だった。

 「最初に、2週間かけて機器やネットワークを持ち込んでシステムを検証した。実際の状況を想定したトレーニングを行い、本番稼働まで結びつけている。ミッドレンジのストレージであるCX500を使い、その間はFCスイッチ、IP回線を使ってデータのやり取りをストレージレベルで行っている」(同氏)

 この事例は、非同期型の「MirrorView/A」で同期をかけているディザスタリカバリシステムとなった。

 風間氏は最後に、「デルは、基本的にはハードウェアを提供する企業であるが、それだけでは大企業向けのソリューションとしては物足りない。そこで、コンサルティングから、システムインテグレーション、保守を含めたサービスを提供する部隊がある。それがデル・プロフェッショナル・サービス(DPS)だ。従来、ディザスタリカバリはハイエンドソリューションとしてのイメージがあったが、現在では、ミドルレンジの製品を組み合わせることで実現できるようになっている」と話した。

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