現在でも、ダイレクトメール(DM)の送付を重要な営業ツールとしている企業は多いと思われます。しかし、「私の住所や名前をどうして知っているのか」「勝手に送られてきて気味が悪い」などと、個人情報に関する消費者の不安を広げる原因にもなってきました。
個人情報保護法には、情報主体本人が個人データの「訂正、追加又は削除」を求める規定(法26条)と、「利用の停止又は消去」を求める規定があります(法27条)。しかし、前者は情報が「事実ではない」場合にしか請求できませんし、後者も、(1)法16条の利用目的制限違反、(2)法17条の適正取得違反、(3)法23条の第三者提供違反の事実がある場合だけにしか認められていません。本法は、正確な情報を適正に取り扱う限り、個人情報を保有し、利用すること自体は、広く事業者側に裁量を認めているのです。
したがって、正しい情報を法に従って利用している限り、消費者からの「抹消して欲しい」との要望にこたえる義務はないということになります。それどころか、DMの発送といった利用行為をやめる必要もないということになります。
しかし、情報主体たる消費者が「いやだ」「消して」と明確に意思表示しているのですから、それに反してDMを送付しても宣伝効果としては逆効果となることが多いと思われます。法が義務付けていなくても、抹消を希望する者の情報は消すことが企業の信頼確保のためには必要なのではないでしょうか。
古本晴英プロフィール
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.