自律化はデータベース運用に何をもたらすのか(1/2 ページ)

自律化といえばサーバレイヤーで語られることが多いもの。しかし、日立が「HiRDB Version7.2」で実現したポリシーベースの自律運用は、データベース自体でも対応するアプローチだ。その効果を探る。

» 2005年03月03日 11時49分 公開
[ITmedia]

 現在のビジネスアプリケーション基盤に欠かせないものの1つとして、データベースを挙げることに疑いの余地はないだろう。ビジネスの変化に柔軟な即応の必要性があるWebアプリケーション連携では、データベースにも基盤として相応しいミッションクリティカルな運用形態が求められている。データベースにも確固たる対応策が必要になってきているのだ。

 データベースに求められる基本事項とは何だろうか? それは、必要な情報を形態に応じて読み書きするというシンプルな処理ながら、システムに果たす役割は大きく、ダウンすることは許されない。そのため、いかにダウンタイムを無くすか、そしてダウンしても迅速に復旧するかが重要となる。また、バックアップやデータメンテナンスを、いつどのように実施するかといった運用と、サービスの継続性の両立は、その大部分がデータベース管理者など個人のノウハウに支えられてきた面が大きい。

状況に応じたポリシー定義の自律化実現

 2005年3月末にリリースされる日立製作所の「HiRDB Version7.2」は、上記に挙げた課題の解決に取り組んだデータベースであり、運用の容易さに結びつく「ポリシーに従った自律運用」を特長としている。「データベースの運用を自律化で容易にさせる」HiRDB Version7.2によって、業務負荷によって異なるサーバリソースの適切な割り当てが簡単に実現できる。

 自律というキーワードは、アプリケーションサーバを中心とするサーバソフトの運用レイヤーで語られることが多い。日立は、煩雑なハードウェアやソフトウェアの運用に頭を悩ませることなく、コアビジネスに集中できる環境を提供することを目的としたサービスプラットフォームコンセプトHarmonious Computingを掲げており、統合システム運用管理ミドルウェア「JP1」、コラボレイティブEビジネスプラットフォーム「Cosminexus」、HiRDBなどが連携することで自律化運用を実現している。具体的には、JP1で定義したポリシーに従って、それぞれのミドルウェアが処理を実行していくという仕組みだ。

図1■オンラインスケールアウトの実現

 データベースで実現されたものとして、HiRDBでは運用状況に応じたリソース配分や急激な負荷増大に対応するために「オンラインスケールアウト」機能が提供される。(図1)。

 実際の運用シーンを想定してみれば、1日の移り変わりで日中はオンライン処理に重点を置くとしても、夜間はバッチ処理にリソースを割きたいといったニーズが多い。従来であればバッチ用のサーバリソースを用意しておく必要があった。しかし、通常夜間にオンライン業務の負荷が低くなる場合が多く、低減した負荷分を処理できるサーバリソースさえ確保できれば、残りのサーバリソースはバッチ処理に割り当てる方がよりサーバリソースを有効活用できる。このようなケースについてポリシーを定義することで対応ができる仕組みだ。

 ポリシーを容易に定義するために、HiRDBでは実際サーバを1台追加する構成変更の手順を自動化した「シナリオ」テンプレートを提供している。シナリオテンプレートをサーバのホスト名など6つのパラメータを実際の環境に合わせてカスタマイズするだけで、簡単に利用できる。

 そのほかにも、日中に特定のデータベースが80%程度を超える高負荷となれば、動的に5台から7台へと拡大するような場合も同様に定義可能だ。必要な時にサーバリソース配分を動的に行える、という点がポイントとなっている。

 上記のようなサーバリソースの動的追加に対応するための仕掛けとして、HiRDBでは「Active-Activeクラスタ」と呼ぶ技術基盤が採用された(図2)。この系切り替え処理は、グリッドと似た側面を実現している。

図2■Active-Activeクラスタ

 HiRDBが採用している「Shared Nothingアーキテクチャ」は、サーバ、メモリ、データリソースが独立して実行できる構造を持つ。このため並列実行性能が高いという特長がある。しかし、従来までは信頼性、可用性向上のためクラスタ構成を組む場合、系切り替え用に待機専用のサーバリソースが必要となっていた。

 「Active-Activeクラスタ」ではこの欠点が解消され、系切り替え時に、稼動中の別のサーバに処理を均等に負荷分散することで待機専用のサーバリソースを不要とした。さらに、従来からの系切り替え処理の速さも継承されているという。

 通常、系切り替え処理中はエラーが返るなどサービスの受付けができないため、系切り替え時間は極力短いことが要求される。従って日立は特にレスポンスの速さにこだわっている。例えば3台から2台の系切り替え処理であれば十数秒程度で実施できるとのことだ。さらに、この系切り替え処理中も、受け付けた新規トランザクションを保持するトランザクションキューイングにより、エラーが返ることもないという。

 また、JP1の統合管理の強みを活かし、ポリシーによる自律運用を行うことで、HiRDBだけでなく、Cosminexusなどの日立ミドルウェア、ストレージ(SANRISE)などのハードウェアまで含めたトータル運用が強みだ。ITシステム全体を管理対象として、運用コストの削減を行うことが日立のトータルソリューションである。

テーブル再編成時期の自動予測で自律化実現

 データベース管理においてもう1つ大きなノウハウといえるのが、再編成などのデータメンテナンス実行のタイミングの判断だろう。

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