ロボットは新分野へ、日本SGIとフラワー・ロボティクスがPaletteを紹介

日本SGIは「日本SGI ソリューション・キュービック・フォーラム 2005」を開催、ロボット産業の新たな可能性を模索したマネキン型ロボット「Palette」を披露した。

» 2005年02月28日 18時27分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 既報のとおり、日本SGIは2月28日、フラワー・ロボティクスとマネキン型ロボット「Palette」(パレット)を共同で事業化することを発表した。同ロボットは現在開催中の「日本SGI ソリューション・キュービック・フォーラム 2005」の会場内で展示されている。

Palette 「顔にカメラなどをつけては人に優しいインタフェースとならないと考えた」と松井氏が話すとおり、従来のマネキンと変わらないスタイルとなっている

 以前のインタビューで和泉氏が話しているように、ロボットは多様な広がりを見せているが、その多くは技術的な研究による機能開発が中心で、その応用面についてロボットの可能性を模索するものは多くなかった。今回の発表は、先端テクノロジーを追い求めるのではなく、「ビジネスになるロボット」としての可能性を模索したものであるといえる。

 今回発表されたPaletteは、両社が過去に開発したナビゲーション・ロボット「Posy」の実績を生かして作られたもので、ファッションやサービス業界に向けた製品となる。すでにテストマーケティングとして浜名湖花博やルイ・ヴィトンの表参道店などに設置されたこともあるため、目にした方も多いのではないだろうか。

 Paletteは、「ロボットを都市のインフラに」をコンセプトに、全身型と上半身のみのアッパートルソ型の2モデルが用意されている(今回の展示は全身型のみ)。台座の部分には人感センサーが3つ設置されており、通行人などを感知すると、向きを変えたりポージングしたりする。

 モーションの設定は日本SGIが開発した専用ソフトで設定可能となっており、さまざまなポージングが可能となっている。現時点の可動部分は、頭部が2カ所、腕が12カ所、腰が1カ所の計15カ所。モーションキャプチャーを利用すれば、ファッションショーでプロのモデルが見せる動きや、バレエダンサーの動きなども表現でき、服が本来持つ美しさなどを伝える最適なディスプレイ効果の実現につながる。従来の静的なマネキンと比べると、その効果は絶大だ。

 なお、専用ソフトで設定したモーションデータは「モーションカード」経由で台座に用意されているモーションカードスロットに差し込むだけでよい。今回の展示ではモーションカードとしてSDカードが使われていた。

 「服を見せることが大切なロボットなので、シンプルで安全なロボットであることを心がけた」とフラワー・ロボティクス代表の松井龍哉氏が話すとおり、Palette本体にはスイッチのたぐいはついておらず、また、台座にも「電源」「モーション切り替え」「着替え」の3つのボタンとカードスロットだけしか用意されていない。「モーション切り替え」ボタンは同じポージングを繰り返し行う場合などセンサーと連動しない使い方を想定したもので、「着替え」ボタンは着せた服を脱がす場合に使用する(恐らく腕を上部に伸ばすなどの動きとなるだろう)。

 日本SGIとしては、この分野でこれまで培ってきたソフトウェア面での強みを生かすことで、さまざまな展開を考えているという。発表ではカメラと組み合わせてマーケティング・データを取得するソリューションが例示されたが、今後、同社のViewRangerのような製品と組み合わせた高度なセキュリティソリューションや、同じく同社が手がけるST(Sensibility Technology)技術を組み込んだPaletteの登場も予想される。また、カード経由のモーションデータについても、同社が掲げるブロードバンド・ユビキタス環境にふさわしく、ネットワーク経由でのやり取りが可能になるはずだ。

 現時点ではコンセプトモデルということだが、「年内の展開を視野に販路も含めた展開を考えているところ」(和泉氏)と、すでに販売に向けて動き出している。

 また、価格については従来のマネキンとほぼ同じ価格を予定しているという。そのためには量産が求められるところだが、この市場は「国内でも数千万規模」(日本SGIブロードバンド・ユビキタスソリューション推進本部新規事業推進オペレーション統括の大塚寛氏)という市場であることからチャンスはあるようだ。しかも、マネキンは国内外を問わず利用されていることもあり、その市場性は大きい。すでに、「駆動部分を持つマネキン」として日本、欧州、中国での特許を出願しており、世界展開も予定しているという。

 Paletteという名前はコードネームである。それが油絵や水彩画を描く際に利用するパレットであることは間違いない。このロボットの上に、色とりどりの絵の具(日本SGIのソリューション)を載せ、さまざまな展開を狙う、という思いも込められているようだ。

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