ロボットプログラミングの対象を「株の売買」とする同コンテストの優勝者は何と年利332%にもおよぶパフォーマンスをたたき出した。その手法とは?
早稲田大学理工学部コンピュータ・ネットワーク工学科(以下早稲田大学)、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)、野村総合研究所(NRI)が共同開催したソフトウエア・プログラミング・コンテスト「カブロボ・プログラミング・コンテスト」(略称:カブロボ・コンテスト)の表彰式が東証アローズ内のオープンプラットフォームにて行われた。
「長年の経験から、この種のコンテストには100人ほどしか集まらないと思っていたことをお詫びしなければ」と笑うのは、カブロボ・コンテスト実行委員会の委員長で、早稲田大学理工学部教授の村岡洋一氏(早大副総長)。しかしいざふたを開けてみると参加登録チームが3200チーム(最終的にロボットを提出したのは2405チーム)と大きな盛り上がりを見せた。
実際のルールなどについては、開催時の記事をご覧いただくとして、今回の優勝者は、簡易ロボットで参戦した倉林俊成氏の「UNTEN」チーム。同氏の期間終了後の資産は原資の1000万円から1129万6000円に。単純計算で年利332%となった。
用意されていた簡易ロボットは既存のテクニカル分析手法を取りそろえ、その組み合わせを指示してプログラミングするものだが、それでも高い運用パフォーマンスが出せたことが全体のランキングを見ても分かる。
倉林氏は今回の勝因について、「数多く取引してもあまり効果がないようだったので、基本的には長期ホールドの戦略を考えた」としている。実際の銘柄としては、三井物産と日本板硝子を長期ホールドしたことが重要だったという。今回に関して言えば、1位の倉林氏と2位の津田博昭氏は三井物産を長期ホールドしたことが有利に働いたようだ。
「(わたしの優勝は)時の運もあるし、参加者の中には自作ロボットで売買を繰り返して利益を上げているものも多い。そうしたものがコンテストの終了と同時に先細りになってしまうことが残念」と倉持氏はコンテストにとどまらない実用化への道を志向しており、今回の賞金(100万円)は、カブロボ運営事務局に相談し、そうした方面に役立ててもらうことで合意したという。
ただし、こうしたロボットの可能性については期待を寄せつつも、「市場はマネーゲームのようになるべきではないと思う。将来性などを考慮し、企業に投資する、という観点を忘れるべきではない」と倉林氏は話している。
今回は157チームが自作ロボットで参戦しているが、「いろいろと面白いアルゴリズム」(村岡氏)でしのぎを削った。
例えば、谷口智也氏のアルゴリズムでは、序盤は購入必要資金が最小になる2銘柄を売買、その後は株価の変動率が大きく底値の銘柄を全資金で購入するというアルゴリズムで自作ロボットで最高位となる3位を受賞した。
また、岡嶋大介氏の自作ロボットにも注目したい。同氏は株価のチャート表示とさまざまなテクニカル分析を行うソフトウェア「OmegaChart」をApacheライセンスで公開している。投資手法の変更やメンテナンス性にも優れており、今回特別賞を受賞している。
当初予期していなかったユーザー数にもブレード・サーバ(最終的には7台)を活用して柔軟に対応した日本IBMもさることながら、運営面での苦労も多かったようだ。自作ロボットの参加者がアルゴリズムの開発に注力できるよう、テクニカル分析や注文といった汎用の機能をクラスとして提供したほか、セキュリティ上問題のあるクラスをチェックする仕組みも取り入れるなど、さまざまな工夫が運営側の努力で行われた。
運営側、参加者それぞれがノウハウを蓄積した第1回カブロボ・コンテストは成功裏に終わった。すでに第2回の開催が2005年秋に予定されている。次回は簡易ロボットと自作ロボットを分けたランキング制も検討されており、さらに進化したアルゴリズムの登場が期待される。
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