「プライマリストレージの使い方には無駄が多い」とストレージテックの臼井社長

この2月に日本ストレージ・テクノロジーの代表取締役社長に就任した臼井洋一氏が、同社の今年の戦略を語った。

» 2005年03月18日 23時40分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 設立27年目を迎えた日本ストレージ・テクノロジー(ストレージテック)。「長い歴史の中で、主にメインフレーム向けのストレージ機器で好調な業績を維持してきた。次の段階として、今後はオープンシステムの分野にもいっそう積極的に取り組んでいく」と言うのは、2月1日付けで同社代表取締役社長に就任した臼井洋一氏だ。

 臼井氏によると、同社の今年の戦略には3つの柱があるという。

 1つは、データプロテクション(データ保護)の分野。いわゆるバックアップ/リカバリや災害対策の部分だ。2つめは、もう修正や編集がが加えられることのないフィックスドコンテンツのアーカイブ/長期保存。そして3つめはプライマリストレージ――いわゆる高速ディスクストレージのより効率的な利用だ。

 そして「これら3つの分野はすべて、情報ライフサイクル管理(ILM)の傘の下で展開していく」(臼井氏)。高速ディスク、ATAを採用した安価なディスク、テープライブラリなどのストレージ機器を適材適所で組み合わせ、コスト効率を高めながら、ユーザーが媒体の違いを意識することなくスムーズに使える仕組みを作っていくという。

臼井氏 ストレージ市場の中でもバックアップ/リカバリをはじめとする3つの注力分野は大きな伸びが期待できるし、得意分野でもあると述べた臼井氏

 「実は階層管理は、メインフレームの世界ではあまり珍しい考え方ではなく、昔からやってきたこと。これをオープンシステムの世界にも展開していく」(同氏)。

 今では、ストレージ市場に参入しているほぼすべてのベンダーが、同じように「ILMの実現」を提唱している。だが臼井氏は「プライマリストレージや高速テープ、大型アーカイブにいたるまでラインナップを備え、経験とノウハウを持っているベンダーは他にない」と自信を見せた。さらに、ただハードウェア製品を提供するだけでなく、ストレージ運用状況の調査やコンサルティングといったサービスを組み合わせ、包括的に顧客を支援していくとした。

コンプライアンス強化に不可欠

 米国の企業では現在、米企業改革法(SOX法)やグラムリーチブライリー法(GLB法)といったさまざまな法規制への遵守(コンプライアンス)が最大の課題になっている。このコンプライアンスを強化する上で、ストレージベンダーにできることは多いと臼井氏は述べた。

 「今、企業はコンピュータの中にあるデータを捨てられない状況になりつつある。何か事故が発生した場合に、即座に関係省庁にデータを提出できる状態を整えなければならないからだ。しかもそれは、個人情報を守り、改ざん防止を図った形で実現されなければならない」(臼井氏)

 そのためのツールの1つが、既にWORM(Write Once Read Many)機能をサポートしたテープストレージ。他にも、暗号化テクノロジを組み合わせた長期保存/アーカイブ用の製品を提供していく方針だ。ただ、具体的な姿となると「ハードウェアやソフトウェア、あるいはアプライアンスなど、やり方はいろいろあるだろう。パートナー展開も含めてさまざまな形を検討している」(同氏)という。

 もう1つ、臼井氏が指摘したのは、今のプライマリストレージの使い方には無駄が多く、顧客は余分にコストを支払いすぎているのではないかという点だ。

 高速ディスクストレージ市場では現在、EMCやIBM、日立製作所といったベンダーが大きなシェアを占めているが、「これまでのプライマリストレージ運用には無駄が多い。万一に備えて使いもしないデータが二重、三重に保存されている。高価なリソースを使っている割に、非常に効率がよくない」(同氏)。

 日本ストレージテックでは、こうしたストレージの使い方に対する「アンチテーゼ」として、仮想化技術を活用した製品を投入し、効率よくディスクを活用する仕組みを提供していく。既にリリース済みの仮想ディスクシステム「V2X」では、ポインタを活用して論理的にコピーを作成する。このため、たとえば1Tバイト分のデータのバックアップを取るにしても、余分にもう1Tバイトの容量を用意する必要はなく、効率がよい。

 さらに、米国では昨年秋に発表したオープンシステム向けの仮想テープシステム「Virtual Storage Manager Open」(VSM Open)やアーカイブ専用のアプライアンス製品の投入も計画しているという。こういった製品を通じて、「ディスクやテープ、遠隔地保存用など、ポリシーに応じてインテリジェントに保存先を使い分けられるようにしていく」(臼井氏)。

 「単価の下落に甘えてただストレージを買い足すだけで、違う使い方をしないのであれば、データの波に飲まれてしまう。力任せの方法ではデータの増加に対応できない」(臼井氏)。

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