Intel、超低電圧Yonahはシングルコア専用マスク採用か

Intelの次世代モバイルプロセッサ「Yonah」の開発を手がけるムーリー・エデン氏が、IDF Japan 2005の基調講演を前に、Yonahの省電力技術について明らかにした。

» 2005年04月08日 03時11分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 Intelのモビリティ事業本部副社長兼モバイルプラットフォーム事業部長のムーリー・エデン氏が、東京・お台場のホテルで開催中の「Intel Developers Forum Japan 2005」の基調講演に先立ち、共同記者会見に応じた。同氏はかつて初代「Pentium M」となった「Banias」プロジェクトを率いた人物。8日午後の基調講演では、Pentium Mプロセッサの後継となる「Yonah」の省電力機能やパフォーマンスアップの可能性に関して講演を行う予定だ。

 同氏が率いたBaniasプロセッサは、それまでのIntel製プロセッサとは異なる方向のアプローチが取られていた。それは半導体技術の進歩をクロック周波数向上に充当するのではなく、電力当たりのパフォーマンスを向上させるというアプローチだ。

 クロック周波数向上は処理速度を上げるうえで、もっともシンプルな手法のひとつではあるが、消費電力は劇的に増大してしまう。処理パフォーマンスを上げながら、薄型筐体にも入る低い発熱量で、平均消費電力も低く、ワイヤレス接続に適したプラットフォーム。それが「Centrino」となり、現在のIntel製モバイルプラットフォームを支えている。

 こうした取り組みは2005年以降ももちろん継続され、これから多数の製品が登場する「Sonoma」プラットフォームに加え、今年年末から2006年にかけてはデュアルコアアーキテクチャを採用するYonahを採用する「Napa」プラットフォームへと切り替わる。Napaで採用される無線LAN用のミニカード「Golan」は、Sonomaで採用されているミニPCIカードよりも40%も小型化するという。

 エデン氏は「デュアルコアによるパフォーマンスアップはかなり大きなものになるだろう。アーキテクチャーの改善で高速化するといっても、1.5倍以上に処理能力がジャンプするわけではない。しかし、Yonahは数10%といったレベルではなく、かなり大きなパフォーマンスの向上を果たしてしている」と話す。

Yonahはバッテリ消費が多くなる? それとも?

 Intelはモバイル向けデュアルコアプロセッサのYonahにおいて、新しい省電力の仕組みをサポートする。ダイナミック・パワー・コーディネーションと呼ばれる機能がそれで、ふたつのプロセッサコアを別々の電力ステートにコントロールする機能だ。

 たとえば片方のプロセッサがフルスピードで動いているとき、もう片方のコアの負荷が低ければ、負荷の低いコアを省電力モードに入れたり、動作周波数を落とすといった対処が行われる。動作電圧はコア全体に対して1種類のみのため、片方のプロセッサの負荷が大きければ駆動電圧などには差は出ない。

 しかし両プロセッサコアの負荷をうまく制御しながら、可能な限り省電力な状態を保つ工夫がされているようだ。このため、並列化されているプログラムならば、同じ負荷において現行Pentium Mの「Dothan」よりもYonahの方が消費電力は少なくなるとエデン氏は話す。

 これはDothanよりもYonahの方が、デュアルコアでも省電力になる事を示したものだ。現時点でエデン氏は詳細を明らかにしていないが、熱設計電力、つまり薄型筐体、小型筐体への収めやすさに関しては、Dothanとほぼ同等かやや大きい程度になるかもしれない。

 ただしエデン氏は「Napaだけでなく、さらに将来の製品も含めて、今よりもサイズが大きく重いノートPCを使えと言われても、ユーザーは二度と昔のようなサイズの大きなノートPCに興味を示さないだろう。従って将来もずっと、現在のフォームファクタを維持していく必要がある」と話しており、冷却技術の進歩を追い越してまで熱設計電力が増大しない事を示唆した。

シングルコアYonahはさらに省電力な専用設計に

 一方、Yonahにはシングルコア版が存在することもエデン氏は正式に認めた。先日のIDF Spring 2005で関係者は「Yonahにシングルコア版があるかどうかは話せない」と言っていた。しかし超低電圧版およびYonahベースのCeleronに関しては、シングルコアになることは以前から知られており、昨年9月の時点でもエデン氏はシングルコア版Yonahについて言及していた。

 IDF Fall 2004のパーティーで、エデン氏にシングルコア版Yonahは片方のコアを機能しなくしただけのものになるのか? と聞いてみたところ「デュアルコア用のマスクでシングルコア版を作ることもできるが、その場合、使っていないコアからも漏れ電流が発生してしまう。省電力を考えるならばシングルコア専用マスクを作らなければならないだろう。しかし現時点ではまだ迷っている」と話していた。

 この点についてエデン氏に確認したところ「シングルコア専用マスクか、デュアルコア用マスクの流用か。どちらにするかはもう決めている。ハッキリとした答えは言えないが、漏れ電流を可能な限り抑える方向で判断を行った」との答えが返ってきた。

 シングルコア専用設計になると不要な回路からの漏れ電流が減り、平均消費電力と熱設計電力の両方で有利になる。日本のPCベンダーは、以前からシングルコア専用マスクのYonahが登場する事を望んでいた。バッテリ駆動時間や薄型軽量を重視するモバイルPCの設計者には朗報と言えよう。

 デュアルコアマスクの流用に比べ、コスト高となる別マスク採用の理由は不明だが、Celeronをシングルコアで展開する場合の生産性などを考えた場合の総合的な判断かもしれない。あるいは漏れ電流が多くなりすぎ、超低電圧駆動が難しくなることを懸念したのかもしれない。

 エデン氏は「現在、我々は数多くのデジタルデバイスを肌身離さず利用している。その数を数えてみると、みんながビックリするほどの数字だ。これだけ多くのデバイスがバッテリーで使われている事を考えれば、半導体業界が消費電力の低減に力を入れていかなければならないことは自明だ。インテルは、今後も省電力技術のために、きちんと対応していかなければならないと考えている}と、低消費電力化への努力を今後も継続する事を約束した。

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