「マルチコア」「メニーコア」を視野に開発者らを支援するIntelInterview(1/2 ページ)

Intelがマルチコア化に踏み出す中、それに適したプログラミングモデルとツールが重要になる。IDF Japan 2005のため来日したIntelのフェロー、カック博士に話を聞いた。

» 2005年04月12日 16時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 Intelは近く同社初のデュアルコアプロセッサ「Pentium D」を市場に投入する。今後、同社は10年をかけてパッケージ内に収めるプロセッサコアの数を増大させていき、2015年には100を超えるコアを1つのプロセッサパッケージに収めていくという。こうしたマルチコア化の流れは、消費電力の増大とそれに伴う熱により動作クロック周波数の上昇ペースが鈍っていることに対するインテルの回答だ。現在、半導体業界はトランジスタのスイッチング速度ではなく、消費電力により性能を制限されている。この状況を打破するのはパラレリズム、並列処理というのは、業界の一致した見方だろう。しかし、マルチコア化を進めるだけではアプリケーションのパフォーマンスは向上しない。マルチコアに適したプログラミングモデルと、並列プログラミングを支援するツールが重要になる。先週の4月7日、8日に都内で行われた「Intel Developer Forum Japan Spring 2005」のため来日したIntelのフェロー、デビッド・カック博士にマルチコア化へと進むインテルアーキテクチャに対し、開発者をどのように支援していくのかを聞いた。

Intelのフェローとして「メニーコア」時代を睨むカック博士

ITmedia マルチコアへと進んでいく今後、開発者はパフォーマンスを向上させるため、従来とは異なったプログラミングを意識しなければならなくなるでしょう。

カック インテルは自社のアーキテクチャに対して適したプログラミングを行ってもらえるよう、プログラマー向けの教材を作り、インテルテクノロジーの深部について積極的に説明しています。これらは国際化を行っており、日本語版も入手が可能です。Web上のラーニングシステムもあります。米国では特定のデベロッパーに対し、ワン・ツー・ワンで実際に顔をつき合わせ、パフォーマンス向上のためのプログラミング手法についてガイドするサービスも提供しています。

ITmedia 日本でも同様のサービスを提供する予定はありますか?

カック ワン・ツー・ワンで行うサービス以外に、インテルソフトウェアカレッジという1対多の教育プログラムも用意しています。日本では1対1のサービスまでは提供できませんが、ソフトウェアカレッジに関してはサービスを行います。将来的には日本の開発者とも1対1で顔をつき合わせてチューニングを行うプログラムも用意したいと考えています。

ITmedia マルチコア化の流れの中で、インテルはソフトウェア開発者に対してどのような支援を行えると考えてらっしゃいますか?

カック 並列化について理解していただくため、われわれは「TIP」というプログラムを提供しています。TIPとは「Thread Immersion Program」の略で、スレッドレベルの並列化プログラムにどっぷりと浸かってもらおうというわけです。並列化の手法が分からないという人には、TIPのようなプログラムをこなしてもらうのがいいでしょう。ただし、TIPは1対1の教育プログラムのため日本では受けることができません。日本の場合は、カレッジを受講してもらうことになります。

ITmedia TIPはどのような教育プログラムなのですか?

カック 並列化を行うためのツールは既に多数存在します。先ず、プログラマーは「Intel VTune」を使ってシングルスレッドのプログラムにチューニングを施します。十分にチューニングを行ったなら、それをスレッドプロファイラーにかけます。すると並列化が可能な場所や、並列化を行う上で問題となるプログラム部を指摘してくれるのです。このほかにもさまざまなツールや使い方がありますが、新しいツールを作ってマニュアルを渡しても、十分にその効果的な使い方が分からないという問題がありました。TIPやソフトウェアカレッジは、そうした声に対して提供しているものです。

並列化をさほど意識する必要はない

ITmedia 従来、インテルアーキテクチャーのプログラマーは並列化を意識する必要がありませんでした。シングルスレッドで高性能なコードを書けば、あとはクロック周波数がどんどん向上していったからです。しかし、いよいよこれまでとは異なる考え方をすべき時にきているのでしょうか?

カック 熱や熱密度はクロック周波数に依存し、指数関数的に増えていきます。クロック周波数に依存したプログラミングを行っていては、自ずと限界があるでしょう。インテルの今後の方針は、ムーアの法則をクロック周波数向上ではなく、周波数を固定したままパラレリズムを強化していくというものです。これは物理的な法則による制限ですから、避けることはできません。

 ではどうしたらいいのでしょうか?

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