「HPC」に込められた2つの意味を説くインテルと日本SGI

インテルはHPC分野への取り組みに関する説明会を開催し、Itanium 2を中心とした同社の取り組みの現状を紹介するとともに、実際にItanium 2を大量にHPC分野に納入している日本SGIの事例を紹介した。

» 2005年04月19日 03時38分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 インテルは4月18日、同社のハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)への取り組みに関しての説明会を開催、Itanium 2を中心とした同社の取り組みの現状を紹介した。

町田栄作氏 インテル取締役エンタープライズ&ネットワークソリューションズ本部長の町田栄作氏

 HPCというと、自然現象のシミュレートや生物構造の解析など、非常に膨大なデータを扱う計算処理のことを指すのが一般的だが、これらを行うプラットフォームは時代の流れに従ってその姿を変えてきた。

 例えば1980年代には、すべてカスタムのコンポーネントを使用した(それゆえに高価な)ベクター型のSMPシステムが、1990年代にはプロセッサだけが汎用となりコストパフォーマンスが向上した超並列コンピュータがその役割を担ってきたが、これが現在では、ほぼすべてのコンポーネントが汎用(インテルはこれを「COTS」(Commodity Off the Shelf)と呼んでいる)のものを利用し、さらにコストパフォーマンスに優れるクラスタ・システムへと進化している。

 HPCの分野でもコモディティ化が進んでいる格好だが、インテルのエンタープライズ&ネットワークソリューションズ本部プラットフォーム&ソリューション HPCマーケティングマネージャー、岡崎覚氏は、同じくコモディティ化が進んだエンタープライズの分野とHPCの分野は相反する性格を持っていると話す。

 「エンタープライズは極力リスクを回避することを目標としているのに対し、HPCは業界最高レベルの技術でもってより早い処理を行うことが最大の目標。市場規模もHPCはニッチなマーケット」と話し、大規模なマーケットであるエンタープライズとは明確にセグメントを分けている。しかし、それぞれの市場ごとに製品を提供するのではなく、HPC分野でも利用でき、かつエンタープライズ市場のニーズにも対応しうる製品を開発することがインテルの考えであり、それを実現するプロセッサがItanium 2およびXeonであると説明した。

 Itanium 2もXeonもロードマップとしてデュアルコア/マルチコアが予定されているが、このうち、開発コード「Montecito」がHPCを牽引する次世代プラットフォームとしてまもなく登場する。デュアルコア/マルチスレッディングプロセッサであるMontecitoは、デュアルコアによりパフォーマンスとスループットが向上し、マルチスレッディングが1ソケット当たり4スレッドを同時に実行可能とする。さらに、2.5倍のキャッシュ容量(最大24MBのオンダイL3キャッシュ)を実現する同製品は従来製品と比較して、最大1.5〜2倍のパフォーマンスをたたき出すという。

 しかし重要なのはプロセッサだけではない。同社取締役エンタープライズ&ネットワークソリューションズ本部長の町田栄作氏は、開発者育成の重要性にも触れる。CPUのパフォーマンスを最大限に引き出すには、コンパイラなどソフトウェア側での対応が不可欠となる。特に今後、マルチコアが急速に普及していけば、より高度なマルチスレッドプログラム技術が要求されることになる。インテルがプラットフォームだけでなく、コンパイラに代表されるソフトウェアやツール、開発者育成を目的とした「インテル・ソフトウェア・カレッジ」などを開催しているのも、HPCとマルチコアの包括的な立ち上げを推進する姿勢であるといえる。

 こうしたHPCの取り組みの例として示されたのが、日本SGIのHPCへの取り組みだった。同社は3年前からItanium 2を採用した「Altix」を販売しているが、これらは日本原子力研究所や東大物性研究所にスーパーコンピュータとして納入されている。日本SGIのCTOである戸室隆彦氏は「HPCには2つの意味があると思う。1つは『High Performance Computing』、もう1つは『High Productivity Computing』」と話し、高い性能だけでなく、運用管理の負担も少なく、かつ優れた開発環境が用意されていることが重要であると話し、インテルの「HPC」ソリューションに対する姿勢を評価する。

 「確かにHPCはニッチな分だが、地震や台風の解析など、なくてはならないもの。(TOP500などの結果で満足することなく)可視化も含めて実績をすでに出している日本SGIは、今後もインテルと協力してすばらしいソリューション提供していく」(戸室氏)と述べ、困難な解析が必要なHPCの分野でItanium 2が新たな進化を遂げることを予感させた。

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