KDE開発者とユーザビリティ・エキスパートは互いの得意分野で協力を(2/3 ページ)

» 2005年05月18日 13時31分 公開
[Tom-Chance,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

健全な関係の確立を阻むもの

 KDE開発者の一部とOpenUsabilityとが協力を始めたのは2003年に開催されたKDEカンファレンスでのことだったが、前述のようなユーザビリティにまつわる問題のために多くのKDE開発者に疑念を植え付ける結果となった。互いの文化の差も災いした。レイトマイヤー氏らの改善提案はしばしば開発者の反発を買ったが、それはその提案がすでに検討され否決された案と同じものだったからだ。しかし、ユーザビリティ・エキスパートがKDEの開発プロセスというものを知るにつれ、そして本当に有用な提案ができるようになってくると、疑念は薄れていった。会議に参加し、多くの開発者と個人的に知り合い、議論に参加することによって、ユーザビリティ・エキスパートは互いの基本的な考え方と知識の違いの多くを乗り越えたのだと、シューマッハ氏は説明する。「相手が自分たちとは異なることを知り、相手の動機が自分たちの動機とは違うことを理解することによって、互いに理解し効率的に協力できるようになったのだ」

 OpenUsabilityのエキスパートには、技術的な壁も立ちはだかっていた。KDEユーザー・インタフェースを改善しようと思えば、CVSリポジトリから最新の開発バージョンを取り出す必要がある。開発者にインタフェースに関する改善提案を理解してもらい速やかに実装してもらうには、強力なGUIデザイナQt Designerなどのツールも必要になる。しかし、ユーザビリティ・エキスパートは、レイトマイヤー氏が指摘するように、心理学などの社会科学系の出身者が多いためCVSには馴染みがなく使いたがらない。フルコンパイルなどもってのほかだ。ただし、Qt Designerはユーザビリティ・エキスパートにもすぐに使えるほど易しかったが。

 KDEの開発者たちは、この問題にツールチェーンを工夫することで対処しようとしている。まず、KDE PIM開発の最新ラウンド(KDE 3.3からKDE 3.4へ)では、KDE 3.3のライブラリを使ってコンパイルできるようにした。つまり、OpenUsabilityのエキスパートは、テストしたいアプリケーションをKDEの安定バージョンを使ってコンパイルできるのである。これによって、時間と労力がかなり節約できるようになった。そして、それ以上に見事なソリューションの完成が間近い。ユーザビリティ・エキスパートがリモートからFreeNXを使って、毎日夜間に作成される開発バージョンのビルドをテストできるようにしようというのである。まだ、やるべき作業は残っているが、完成すれば、GNU/Linux、BSD系、Mac OS X、Windowsのいずれからでも、NoMachineのXターミナル・セッション圧縮技術NXを使って容易に接続することができるようになるだろう。

 問題点を記録し管理する仕組みにも問題があった。KDEにはそのためのツールとしてBugzillaがあり、クラッシュや新機能の提案の記録と管理に絶大な威力を発揮している。しかし、レイトマイヤー氏によれば、Bugzillaはユーザビリティの管理には不適切であり、とりわけ、バグ報告機能には問題点の文脈を適切に記録できないという欠点があるという。レイトマイヤー氏は、一例として、KMailを構成する際にユーザーがつまずく可能性のある問題点を挙げた。

 「KMailでOpenPGPキーを持つメール・アカウントを設定するには、3つの構成用モジュールを用い、それぞれで設定を行う必要があります。しかし、ユーザーがその仕組みを直ちに理解するのは困難です。これは技術的な問題ではありません。ユーザーがその仕組みに気づきさえすれば難なく設定することができますから。しかし、それがユーザーにとってわかりにくい手順であることを開発者に理解してもらうには、実際にユーザーが使う状況とそのときのユーザーの受け止め方を説明しなければなりません」

 OpenUsabilityが作成した報告書は「明確で具体的な提案ばかりだ。いずれも、しっかりした理由があり、全体的な見通しを持ち、原理原則に従っている。長さも適切で、長すぎもせず曖昧でもない」(アダム氏)

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