ルーマニアのLinux事情

1989年12月の革命以来、ルーマニアではさまざまな変化が起こった。大概の欧州諸国と同じように、ルーマニアでも、Linuxがビジネスや余暇のために使われ始めている。

» 2005年05月23日 14時24分 公開
[Razvan-T.-Coloja,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 わたしは、ルーマニアのIT愛好者として、大方の人とは異なる視点からLinuxとオープンソースの興隆を見てきた。その視点から、ルーマニアのIT事情を報告したい。

 1989年12月の革命以来、ルーマニアではさまざまな変化が起こった。コンピュータも変わったし、ITよりもドラキュラで有名なこの国がコンピュータを見る目も変わった。今や、ルーマニアにも専門技術者――コンピュータ産業の各領域で働く外国企業に勤める人々――がいる。BitDefenderなど、高品質のソフトウェアを作る企業もある。そして、Linuxユーザーグループがあり、Linuxとオープンソース・ソフトウェアを専門に扱う雑誌も創刊される。

 わたしは出版社に勤務しており、IT関連のニュースに目を通したりLinuxに関する記事を書いたりしているが、ルーマニアのLinux関連記事はもう少し増えていいと思う。ルーマニアにもITやコンピュータ関連の国内誌が若干あるが、Linuxの記事は少ない。そこでわたしは思い立ったのである。自らの手でこの状況を変えようと。IT雑誌の出版社で働いているわたしはボスを説得し、ルーマニアにはLinuxの専門誌がないから我が社で創刊すべきだと納得させた。

 あと1週間もすれば(執筆時点で)、Linuxに関する記事を満載した雑誌が読者のお手元に届くだろう。これまで、Linuxの情報は乏しかった。ルーマニア向けにルーマニア語で印刷されたLinux Magazineは数カ月間流通したものの昨年10月に姿を消し、以来、誰も目にしていない。他の雑誌にSUSEやFedora Coreに関する記事が載ることはあるが、数か月に1〜2本程度で、不十分だ。ならば、ユーザーが作ってしまおうではないか。それがプロジェクトMyLINUXである。

 ルーマニアにも多くのLinuxコミュニティーがあり、3つの類型に分類できる。商用のもの、一部ユーザーが主導するもの、Linux Festの3つである。商用コミュニティーは金銭に左右され収益によって動いている。ユーザーグループとWebサイトとフォーラムは常連ユーザーが動かしている。3つ目がLinuxユーザーの交流の場、いわゆる「Linux Fest」だ。

 Linux Festは、わたしが生まれた町オラーデアで2〜3週間に1回開催されている。同様の会合は、シビウ、ブカレスト、クルージュ=ナポカ、ヤーシ、ティミショアラといった都市でも開催されている。参加者は皆、Linuxをこよなく愛する人たちだ。互いにもっと多くのことを学ぼうと集まってくる。会場は、ある非営利団体の地階にある部屋である。このNPOは若者たちが企画した会合ならどんなものでも無償で支援する。オープンソースの集まりに、これ以上相応しい場所があるだろうか。会場では、Linuxディストリビューションが交換され、新人や初心者はLinuxおよびオープンソース・ソフトウェアについて教えてもらっている。集会後は、インターネット上で画像を交換したり、ルーマニア最大のフォーラムLinux360を通して意見を交換したりする。フォーラムの名前は、Linuxの全分野(360度)をカバーするという願いを込めて命名された。オープンソース・ソフトウェアについて知りたいことがあれば、ここで尋ねよと言うべき場である。このフォーラムと同じ名前を持つ無償のオンラインLinux雑誌もある。コミュニティーによる執筆で、PDF形式不定期刊だ。他にも、Linux.roフォーラムやMyLINUX forumなどがあり、DebianMandrivaGentooの各ファンのための、テーマを絞ったフォーラムもある。

 月例会だけではない。毎年開催される特別なイベントもある。Linux Open Alternative Days(LOAD)だ。これは、新しい友人を探したり、Linuxを扱っているルーマニアの企業や団体と接触するには絶好の機会である。

 信じられないかもしれないが、Linuxディストリビューションだってある。最大級のものはDarkstar Linuxで、Slackwareをベースにしている。数名のファンが管理しており、目的はLinuxユーザーの開拓だ。他に、Vision、Decebal Linux、ROSLIMSもある。Visionは、Linux360チームが始めたFedora Coreベースのディストリビューションだ。Decebal Linuxの名は、ルーマニアの起源となった古代ダキアの支配者だった人物に因んで付けられた。ROSLIMSはKNOPPIXのローカライズ版が基になっている。

 ローカライズと言えば、Linuxシステム向けに使い勝手のいいルーマニア語用キーボード配列を作ろうとしている人が、わたしの知る限り2人いる。また、オープンソース・プロジェクトをルーマニア語に翻訳する動きも活発だ。KDE、GNOME、Xfceなどがローカライズ中。Debian関連の文書はRomanian Linux Users Group(RLUG)が常時管理し翻訳している。そして、Quantaの開発陣には多くのルーマニア人がいる。

 大概の欧州諸国と同じように、ルーマニアでも、Linuxがビジネスや余暇のために使われ始めている。このコミュニティーの支援に、わたしたちは最善を尽くしたい。開発には参加できなくても、少なくとも翻訳とアイディアでできることがあるだろう。そして、いつの日か政府も気づくだろう。予算をプロプライエタリ製品に無駄に費やすのではなく、オープンソース・ソフトウェアを利用して行政機能を改善し、浮いた予算をもっと重要な問題に回せるということに。

Razvan T. Colojaは、MyLINUXの編集長

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