オープンソース界の重鎮2人が来日、GPL 3について語る(2/2 ページ)

» 2005年06月10日 17時12分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
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 そうしたOSDLも設立当初のテクノロジー寄りな立場からはスタンスが変わりつつある。SCOに代表されるような法的な問題やビジネス面での問題など、取り組むべき課題が多様化しているからだ。このうち、近年ますます重要視されてきたライセンスやパテント関連の問題については積極的に活動を進めている。2004年1月には「Linux Legal Defense Fund」を、同年5月には「Developer's Certificate of Oriin」を発表している。また、そうした活動のための資金を捻出するファンド(IP Fund)も設立、そのファンドによって2005年2月に設立されたのが「Software Freedom Law Center」(SFLC)だ(関連記事参照)

 同センターは、コロンビア大学の教授であり、ソフトウェア著作権に関する世界屈指の専門家の一人であるエベン・モグレン氏を中心に、非営利のオープンソースソフトウェアプロジェクトや開発者らに無償で法律サービスを提供する。現在、同氏が顧問を務めるFSF(Free Software Foundation)のほか、Samba Projectなどに対して法的サービスを提供することが決まっている。

モグレン氏 「GPL 3では混乱を防ぐため変更はそれほど多くない」とモグレン氏

 「法的な問題が起こった後のケアではなく、開発の初期から法的なサポートをすることでそうした問題が発生する機会そのものをなくすのが狙い」(モグレン氏)

 同センターはキーとなるオープンソース・プロジェクトの保護だけを行うのではなく、OSS分野で求められる知識を有したスペシャリストの育成にも注力する。さらに根幹ともいえるライセンス部分に対する作業も手がける。GPLのバージョン2がリリースされて14年。当初想定していなかったような問題、具体的にはソフトウェア特許関連のケアが弱い点などが指摘されている(関連記事参照)。こうした部分はGPLのバージョン3で改訂される見込みだが、その改訂作業に同センターも従事する。

 「携帯電話からスパコンまでGPLが関連し得るさまざまな分野においてどのように改訂するのがベストなのか頭を悩ませている」とモグレン氏は話す。意図しない混乱を招かないよう、ドラフトを作成し、グローバルなディスカッションを行うことで透明性を確保したい考えだ。数カ月後にはFSFとSFLCからプロセスのメカニズムについて説明が行われ、2006年を通して議論を深めたのち、2007年をめどにGPL 3の公開を考えていると話した。

 「GPLがもたらしている基盤を揺るがすことのないよう、改訂プロセスの透明性を保ちながらOSSの開発と同じ自由さで作業を進めていきたい。アメリカだけで話を進めてしまうのではなく、それぞれの国の事情を勘案して進める必要があると考える」(モグレン氏)

 「最近ではノキアがそうだが、パテントをコモンズにする企業の動きは、OSDLが願っている方向性とリンクしている。そうした動きの中でOSDLがホームのポジションとなれれば」と話すのはコーエン氏。前述したソフトウェア特許に関してモグレン氏は次のように話している。

 「ソフトウェアの開発という立場で考えたとき、特許のシステムが正しいものであるとは考えていない。ひとたび特許が認められてしまうと、長きにわたってソフトウェアの独占が認められるシステムは基本的なところで問題があると考える。とはいえ、GPLがもっとデベロッパーを守ることができるように構成していたとしたら良くなっていたのかというと、パテントシステムが根本的に持っている問題と、ソフトウェアを開発すること自体が抱える問題というものがあるため、それは必ずしもそうは言い切れない。GPLだけですべてを解決できるなどとは思っていないが、GPL 3ではベストな効果を出せるようにしていきたいと考える」

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