漢のラックを極める――ラックに関するエンジニアのコダワリ(3/4 ページ)

» 2005年07月01日 20時23分 公開
[加藤雅彦(IIJテクノロジー),ITmedia]

 さて、ラック内に設置する機器は大きく分けてネットワーク機器とサーバ機器、あとはパッチパネルなどが多いと思うが、作業効率を考えるとラック内の配置としては上からネットワーク機器、サーバ機器、(あれば)パッチパネルという意見が多かった。

 「パッチは床下からケーブルがくる」「ネットワーク機器は重力に任せて上から下にケーブル配線するほうが楽」「サーバは増設することが多い」から、とのことであるが皆さんのところではどうだろう?

 また、1つのラックにネットワーク機器とサーバ機器を同居させる場合、24ポート以上のスイッチを多く入れるとケーブルに付けているタグが絡んだり、配線が抜きにくかったりとメンテナンス性が落ちるので、ここでも無理な詰め込みはよくない。後で作業をすることを考えて機器を入れていこう。

 また、最近ではラック搭載用に開発された1〜2Uのディスプレイ&キーボードがあるが、これも設置場所を間違えると作業者が悲鳴をあげることになる。あまりに上過ぎるとディスプレイが見えないし、下過ぎると中腰で作業を行うことになり腰を痛める。ディスプレイとキーボードがあるということは、そこで人が作業をする可能性があるということなので、作業時にどういう姿勢になるかを考えて設置場所の高さを決めるべきであろう。

 あとは電源であるが、データセンターなどは二系統、三系統の電源を引けることが多いと思う。複数系統の電源が引ける場合は、機器によってどの系統から電源をとるかを考えなくてはならない。冗長化したはずのシステムの電源系統が実は冗長化されておらず、一つの系統が落ちたらネットワーク機器が全部止まりました、というのではシャレにならない。

 また、ディスクなども、一度に全部起動させてしまうと瞬間的に電力の上限を超えてしまうことがあるので要注意である。オフィスなどで電源が一系統しかない場合は、UPSを設置して瞬断に備えることだ。

その3:設置、配線作業

 ラック、機器配置が決まれば、あとは設計に沿って機器を設置するだけであるが、実はここからが職人の世界となる。特に配線のまとまり具合などは芸術的と思えるレベルのものも少なくない(反対に汚い配線のラックもよく見かけるが)。

ラックの配線の例 図3●ありがちなラックの配線の例

 しかし、先程も申し上げたとおり、「見た目が綺麗」イコール「運用しやすい」ではないのだ。設置したら二度と触らないのであれば、見た目が綺麗でも何ら問題はない。だが現実には、機器は故障もするし、増設されるし、入れ替えもおきる。ラック内に入っているものを物理的に動かすことを考慮しなければならないのである。

 実際に運用状態に入ってからメンテナンス性を左右するのは「配線」である。タイラップでまとめて24本のケーブルを「ぎゅうぎゅう」に束ねてしまうよりは、数本づつ、多少ルーズにまとめておいたほうが後々の作業は楽である。

 また、後から作業することを考慮してケーブル長にゆとりを持たせていないと、配線の束ね方が変わっただけでケーブルが届かなくなるといったことが起きる。イーサネットケーブルなどは金額も安いので、必要な長さ+αのケーブルを使い分けるとよいだろう(ただし、電源ケーブルはバリエーションが少ないために使い分けは難しい)。

 それと、こういった現場作業には「七つ道具」がつきものである。持っていると便利そうなものをざっくりあげておく(図4)ので参考にしていただきたい。

ユニットメジャー、ドライバー(長い、曲がる)、ボックスレンチ、トルクスネジ、プラハンマー、ねじりっこ、コンベックスベース、タイラップ、ケーブルタグ(紐じゃないもの)、ニッパー、ペンチ、ラジペン、ケーブルテスター、テプラ、カッター、はさみ、懐中電灯、鏡、色付シール、ベルクロテープ


 こういった細かな道具が作業には欠かせない。

作業用のツール 図4●データセンターでの作業に欠かせないツール類

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