Joiこと伊藤穰一氏、ブログの「今」を語るInterview(2/3 ページ)

» 2005年07月03日 05時50分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

伊藤 規格などを策定する人たちには大企業の方が多いんですよね。先ほど話したように、それがオープン化を阻害しているところはあるかもしれませんね。一方、オープンソースも日本の仕組みにうまく入り込めてないところがありますし。

 言葉は悪いですが、日本はなんだかアメリカのできそこないになっている感があります。日本にはハリウッドみたいなものがないのだから、本来著作権はガンガン行くべきでアメリカの著作権法に引っ付いていく必要はないはずですし、Microsoftみたいに強いソフトウェア・ベンダーもいないんだから、オープンソースももっと取り込むべき。大企業とアメリカの影響でオープン化が遅れているのはさみしいなと思いますね。

 ユーザーレベルでの違いもあるのかもしれません。アメリカでは初期のブログユーザー──ブログを書いている人もそのソフトウェアを作っている人も──はバブルがはじけて無職となった人が多かったりします。無職とは言ってもそれまでは働いていた分けですから優秀でかつお金も持っていることが多いですが。そうした人たちが初期のブログを支えたとよく言われてますね。そうした「優秀・お金持ち・無職系エンジニア」とでも言うべき人間が日本にはあまりいないのも要因としてはあるのかもしれませんね。

ブログは本当にインフラ化するのか

ITmedia 米Perseus Developmentの調査では、ブログサービスは確かに急増しているが、放置されている割合も相当多いという結果がリポートされています(関連記事参照)。ブログはインターネットのようにインフラ化するのでしょうか。

伊藤 メールでも昔は「なぜ手で書けるものをパソコンで書くんだ」とか言ってた人がいましたが、今そんなこと言う人はほとんどいないですよね。

 昔メールが出てきたころ、パソコン通信のころを思い出してみると、忙しいときは何日も、下手をすれば1カ月くらいメールを見ないときがあったかと思います。しかし現在、メールチェックを頻繁にしている、またはせざるを得ないのではないですか? 結局普及の初期の段階では、周りのコミュニティーと自分の時間の波が違ったりするので、やったりやらなかったりといったことが起こるのです。

 で、ブログって日記じゃなくて、1対nのメールみたいなもので、コミュニティーの要素が強いものなんですよ。それを今はたまたまメールでやっているだけ。パーティのあとに友達をccに入れて写真を送ったりするでしょう。あれなどはブログでやったほうが絶対に便利です。まだブログは面倒くさいと思っている人が多いと思いますが、ツールが良くなれば、メールよりきっと良くなるはずで、メールがスパムで死んでいく中でブログにシフトしていくというのもコミュニティーレベルではどんどん起きてくるでしょう。

ITmedia ブログがインフラ化していく課程では、スパムの問題や、著作権に関する意識の問題など、いろいろと考えるべき課題がありそうです。

伊藤 僕はソーシャルソフトウェアやコミュニケーションの定義は「スパムがつく」ことだと思ってます。だからスパムは必ず入ってくるでしょう。Technoratiでも結構な割合がスパムとして処理されています。

 また、著作権の問題は確実に出てきますね。アメリカでもブロガーが書いたことに対して、弁護士が警告の手紙をそれこそスパムのようにすぐに送りつけています。こうした流れに対しては、Electronic Frontier Foundation(EFF:電子フロンティア財団)がガイドラインを作成中です。

パブリック・ジャーナリストは日本でも浸透する?

ITmedia ブログで比較的簡単に情報を発信できるようになり、パブリック・ジャーナリストという言葉も生まれてきましたが、日本でこの種のムーブメントは浸透するでしょうか?

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