Joiこと伊藤穰一氏、ブログの「今」を語るInterview(3/3 ページ)

» 2005年07月03日 05時50分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
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伊藤 特にマスコミが圧迫されている国、例えばイラクでは、プロのジャーナリストがブログをはじめています。副大統領がブロガーを集めて話をしたりと、イランはブログがメインのマスコミになりつつあるのです。ほかにもジンバブエや中国もそうですね。言論の自由があまりない国でブログが伸びているという現実があります。

 一方、アメリカの場合は言論の自由はあるが、マスコミが何かおかしいと考える人たちがブロガーになるケースが増えてきていますね。プロのジャーナリストがブロガーになるケースも増えてきて、ジャーナリストのルールでブログを書く、という流れもできつつあります。すでにホワイトハウスの記者会見にはブロガーの席が用意されていますし、Microsoftなどもブロガーを優先的に招待したりしているようです。

 一部のマスコミは反ブロガーであり、ブロガーたちの一部もまたマスコミ不要を唱えてはいますが、グローバルで見れば、記者を常時配置できない地域にでもブロガーはいますし、マスコミが連続して集中できないようなトピックに対してもブロガーたちが取り組んだりするので、協調関係も生まれはじめ、マスコミのプロセスの中にブログが組み込まれはじめています。

 韓国はまた面白くて、ohmynewsというのがあるんですが、僕はあれがあるからブログがあまり伸びていない気がする(笑い)。

 日本は微妙ですね。日本人はマスコミをどれくらい疑っているかというところから考える必要がありますしね。また、マスコミに飢えていている部分を雑誌がカバーしているところがある。しかし、フリーライターと呼ばれていたような人たちがブログに移ってきている気がします。これは余談ですが、早稲田大学文学部の就職率が10%程度だと人から聞いて、「それなら残りの90%ブログを書けばいいのに」と思いましたよ(笑い)。ものは書けるけど書く媒体がないという人はいるので、きっちりと発言する場さえあれば伸びると思うんです。

ITmedia 企業におけるブログの使い方はどう考えていますか?

伊藤 内部的にナレッジマネジメントとして使うケースはまま見られるようになってきましたよね。自社の製品やソリューションなどに自信があるのなら、外部に向けてブログを公開することは、顧客と従業員の壁を取り払うという意味で意義深いと思います。広報部を通さないコミュニケーションをするというのは生の声を聞けるのである意味大事なのです。ゲーム業界などでは特に有効かもしれません。ゲーマーは開発者よりもやり込んでいたりしますから。

 ブログは2ちゃんねるとはムードが違う。歌舞伎町で飲むのとどこかのホテルで飲むのくらい違うし、同じ人間でもブログと2ちゃんねるでは違う書き方をするもの。過去にネット上で嫌な経験があった企業も、再考の価値はあるかもしれませんね。もっとも、インチキ、例えば自作自演などはできないと思ったほうがいい。謙虚にならなくてはなりません。それができないならやめたほうがいいでしょう。

伊藤氏が「ムカツク」3つのモノポリー

ITmedia 結局のところ、伊藤さんが成し遂げたいこととは何なのでしょう?

伊藤 3つのムカつくもの──電話、ハリウッド、Microsoft──つまりネットワーク、コンテンツ、ソフトウェアのモノポリーをつぶしたい。ネットワークはInternet Corporation For Assigned Names and Numbers(ICANN)などを通じて(編集部注:伊藤氏はICANN理事会のメンバー)、コンテンツレイヤーではCreative Commons、ソフトウェアがブログやテクノラティなどになるね。この3つをオープンにしてしまえば、真の意味でのオープンネットワークができると思っている。難しいけどね(笑い)。



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