Apacheの共同開発者、ベーレンドルフ氏に聞くオープンソース動向(1/2 ページ)

現在はCollabNetの最高技術責任者として多忙を極めるベーレンドルフ氏に、オープンソースの未来やストレス解消法について聞いた。(IDG)

» 2005年07月05日 10時40分 公開
[IDG Japan]
IDG

 ブライアン・ベーレンドルフ氏(32)はオープンソース運動のリーダーで、ハイテク・ルネッサンス人。Apache Webサーバの中心的な開発者であり、現在は、IntelやSun、MotorolaなどにWebベースのソフトウェア開発のためのホスト型ソリューションを提供するCollabNetで最高技術責任者(CTO)を務めている。また、同氏はオールナイトレイブ、テクノミュージック、芸術の愛好家でもある。そんな同氏がこのほど、米Network World誌のシニアエディター、キャロリン・ダフィー・マーサンのインタビューに応じた。以下はその抜粋だ。

―― オープンソース運動に興味を持ったきっかけは何ですか。「これだ!」と思う瞬間があったのですか。

ベーレンドルフ 「オープンソース」という用語ができるずっと前のことでした。高校時代、Fractintというシェアウェアを使ったんです。とても面白かった。このソフトには完全なソースコードが付いていました。初期画面に、開発協力者全員のメールアドレスがスクロール表示されるのです。ソフトに変更を加えてこのアドレスに送ると、次のバージョンに反映されます。わたしがそれまで目にしてきた、あるいは使ってきたソフトとは、大きく異なるものでした。

 (カリフォルニア大学)バークレー校に進んでからは、IETFでインターネットのプロトコルが策定されていくのを目にしました。それはわたしにとって、ソフトウェアのイノベーションというものは――実際には物事全般に当てはまることだと思いますが――1人や2人の人間の手によってではなく、共に働く人たちのネットワークによって引き起こされるものだという事実を知るきっかけとなりました。

―― MicrosoftやSunなどのWebサーバと比較して、Apacheは70%の市場シェアを確保しています。エンタープライズ分野では、Apacheはどの程度健闘していますか。

ベーレンドルフ Apache Webサーバはデフォルトとなっています。LinuxやSolaris、あるいはUNIXベースの何らかのOSを使っているなら、ApacheがWebサーバのデフォルトです。Mac OS Xでもそうです。Windows上のApacheについては、エンタープライズ環境で人気が出始めてはいますが、Windowsのデフォルトである(Internet Information Server)と競わなければなりません。UNIX上での場合と同じくらいWindows上でもポピュラーになると期待したことはありません。

 Apacheで最も興味深いのは、財団全体としての姿です。Apache Software Foundationは、25余りのプロジェクトを抱えており、Webサーバはそのうちの1つにすぎません。いわば道具箱のようになっており、個々のプロジェクトにそれぞれ別個の開発者コミュニティーができています。

―― Apacheの今後の計画は?

ベーレンドルフ Apache Webサーバに関しては、かなり成熟しています。数年前、バージョン2.0をリリースしましたが、バージョン1.3でまったく十分だという人も大勢いました。2.0は、マルチスレッド環境での実行が若干高速化され改良されています。Webサーバチームはフォーカスを広げようとはしていません。拡大は、ほかの新規プロジェクトで行われています。

―― CollabNetの近況を教えてください。エンタープライズ市場への進出はどのくらい進みましたか。

ベーレンドルフ われわれの基本前提は、オープンソースコミュニティーによって、真に優れたツールとプロセスが提示され、世界規模のソフト開発を支持する意識が生まれた、というところにあります。当社は、それらのツールから最上のものを選び出し、企業がそれを基にソフト開発プロセスを構築するのを支援しようと努めてきました。当社はインターネットを介して人とプロセスをつなぐことで、基本的に巨大な知識宝庫として機能するWebベース環境を作り上げました。この中で、1つの会社のエンジニア全員が協力して作業に当たることができます。

 この環境では、チームはほかのチームがやっていることを把握できるので、ほかのチームの成果を再利用することができます。顧客企業から、チーム間のコミュニケーションが飛躍的に改善しているとの声が寄せられています。

―― エンタープライズ市場で、オープンソースソフトの利用に関してどんな流れが起きていますか。

ベーレンドルフ 従来、オープンソースソフトは上司にわざわざ説明することもなく使われてきました。メールサーバ、DNSサーバ、Webサーバなど、見えないところで使われてきたのです。それが、変わり始めています。次のフェーズは、アプリケーションサーバでのオープンソース利用です。オープンソースソフトの少なくとも一部が製品並の品質に達した今、企業も徐々に、オープンソースソフトに対して安心感を持つようになってきています。

―― 企業ユーザーのオープンソースに対する関心が高まっているのはなぜでしょう?

ベーレンドルフ まずはコストです。それが、オープンソースの利用を簡単に正当化できるものだからです。セキュリティと柔軟性が高まるという認識もあります。柔軟性は重要です。企業はライセンスに支払う料金の5倍、コンサルティングに費やさなければなりません。企業はソフトのカスタマイズに金を使うことに慣れてしまっています。オープンソースなら、開発の部分にもっと積極的になるチャンスが得られます。

―― より多くの企業顧客を引きつけるために、オープンソースコミュニティーは何をすればいいのでしょうか。

ベーレンドルフ オープンソースのプロジェクトは、小さなコンポーネントの構築は非常に得意ですが、それらを統合するのは苦手です。しかし、わたしが(オープンソースの)弱点だと認識していることはすべて、実のところビジネスチャンスなのです。(オープンソースソフトを広めるため企業向けにテスト、認証、サポートのサービスを提供する)Spike Sourceのような会社が登場する理由もそこにあります。

―― オープンソースソフトが企業にもっと浸透する上で最大の課題は何だと思いますか。

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