Apacheの共同開発者、ベーレンドルフ氏に聞くオープンソース動向(2/2 ページ)

» 2005年07月05日 10時40分 公開
[IDG Japan]
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ベーレンドルフ オープンソースソフトの成熟度のレベルはそれぞれ異なります。Apache Webサーバはかなり安定しています。SugarCRMに目をやれば、そのユーザー数は2000人です。IT顧客にとっては、オープンソースコミュニティーの成熟度を確かめることが課題となります。それは、オープンソース製品を使うことのリスクとコストメリットを比較検討する方法を知ることでもあります。

 そのプロジェクトがどの程度成熟しているのか見極める必要があります。また、そのプロジェクトがどの程度活発かも把握しなければなりません。使おうとしているソフトウェアが、開発者らがその場しのぎのチェックで問題解決したもので、コードはたった2人で書いたものなのか、それとも、既にバージョン4まで行っている会社の標準で、厳密なピアレビューを経たものなのかを知る必要があります。この2つの(シナリオの)違いは大変なものです。

―― 今後5年間のエンタープライズソフト市場について、どう予測するのが妥当だと思いますか。

ベーレンドルフ より多くの組織が、POS、顧客サポート、データ入力などの低需要アプリケーションでLinuxデスクトップの採用を検討できるし、そうすべきです。大方の予想より早くそうなるでしょう。

 Open Source Javaは向こう2〜3年間、大きな話題となるでしょう。また、高額なライセンスとコンサルティングを売り続けているソフトベンダーから、SugarCRMやSpike Sourceなどの組織へのダイナミックな顧客シフトが今後も見られるでしょう。

―― オープンソースの話になるとリーナス・トーバルズ氏ばかりが注目を集めるのを見て悔しくありませんか、

ベーレンドルフ いいえ。彼はもっと注目を集めてもいいくらいです。彼はその賞賛のすべてに値します。

 もっと多くの人が脚光を浴びるのを見たいものです。オープンソースコミュニティーには才能豊かな人が大勢います。彼らは知的挑戦のためにコミュニティーに入り、大きな違いを生み出しています。わたしは喜んで「ナンバー2」と書かれたTシャツを着て歩きますよ(笑)。

―― あなたはBurning Manフェスティバルのチーフテクノロジーグルですね。ネバダ州の砂漠で開催されるこの芸術的なサバイバリストのイベントは、オープンソース運動でのあなたの仕事とどういう関係がありますか?

ベーレンドルフ Burning Manは集団によって構築する芸術で、オープンソースは集団によって構築するソフトです。どちらの活動も人の集団で作り上げるもので、その成果は常に一人一人の合計以上のものになります。調整は臨機応変に行われ、上からの指示で作られるものではありません。それがわたしの興味の対象の多くに共通するテーマです。わたしは、ボトムアップ型アーキテクチャとボトムアップ型の組織が成功できると考えています。

 ソフトエンジニアリングの世界には、ある程度の厳密さと科学を持ち込もうという大きな流れがあります。そうしたドグマティックなアプローチは理論上は素晴らしいですが、セキュリティに関する誤った感覚につながるのではないかと心配になることがあります。もっといい方法があります。

 オープンソースは、ボトムアップ型アプローチによってこの流れに対抗するものとなっています。混沌をフィルタリングして管理する役目という意味で、投資信託のファンドマネジャーに例えるといいかもしれません。

―― 何かビル・ゲイツ氏の情報はありませんか。目撃したとか、秘密のランチをしたとか、そういったような。

ベーレンドルフ いいえ(笑)。唯一わたしが本当に気に入っている話は、1987年の記事で、ゲイツ氏がNetscapeを脅威だと思うかと聞かれたときの話です。同氏は「わたしはNetscapeは恐れていない。わたしが恐れているのはApacheだ」と答えました。これはすごくうれしかった。

―― この10年、あなたは非常に多くのことを成し遂げました。アンコールには何をしますか?

ベーレンドルフ 分かりません(笑)。CollabNetでの仕事に完全に没頭しています。わたしはApacheと同じくらい大きな影響をCollabNetにも与えていると思います。わたしは(オープンソースの)実演ぶりを最前列で見守っています。米国防総省からSunやIntel、金融サービス企業に至る顧客のために、何が機能し何が機能しないかを確認しなければなりません。理論面で続けてきた戦いを、今、実践で進めているのです。

 時々、遊んでいます。楽しんでいますよ。Burning Manで300人のレイブ好きと騒ぐのは、生活のバランスを取るいい方法です。

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