ブレードPCでユーザーを一元管理する米医療機関

ブレードPCを利用することで、ユーザーを一元管理することができる。データの流出などの心配もなくなるが、システム全体が落ちた場合にどうするかなどが懸念される。

» 2005年07月19日 22時50分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 PCを利用する業種によっては、従来のようにユーザーがそれぞれPCを持ち、それぞれが違う環境を作りこんで利用する形がふさわしくない場合がある。たとえば、医療機関などでは、患者の情報が複数の看護士などのPCのディスクに保存されているとしたら、情報漏えい事件につながる可能性もある。金融機関でも同様だ。

 そこで、現在米国で注目されているのが、ブレードPCという選択肢だ。ブレードPCは、文字通りブレードサーバのPC版と言っていい。ブレード状のPCをユーザー数に合わせて数十台、数百台格納したシャーシを、企業のサーバルームなどに置いて運用する。ブレードPCの提供で知られる米ClearCubeのマーケティングディレクター、ケン・ノッツ氏、および、ユーザー企業として来日した、ダンカン・リージョナル病院のロジャー・ニール氏に話を聞いた。

ブレードPCと、エンドユーザー側に設置される端末。この端末はネットワークでブレードPCとつながっており、キーボードやマウス、ディスプレイとの接続ポートのみが備わっている。

PCブレードを使う理由

 企業がPCブレードを導入しようとする一般的な理由は、前述のように、データの不正流出を防ぐことを主な目的にしたセキュリティ対策という点が1つのポイントになる。また、大量のPCを一元管理することによるメリットや、PCの設置スペースを削減できるといった効果もある。

 同様の効果を見込んで、ダンカン・リージョナル病院は、およそ2年前に出産のために設置されているバースセンターにおいて、50台のブレードPCを導入した。現在では、ナースステーション、手術部、緊急救命室などにおいて、200台以上のブレードPCが稼動しているという。

 ニール氏はブレードPCについて、「データはもちろん、メモリの盗難など、心配ごとがほとんどない。医療データについても、ユーザーはダウンロードのしようがない」と話す。

 一方、コストについては、導入コストは通常のPCよりも割高になるという。だが、管理コストについて、通常のPC環境では、1人が担当できるユーザーは50人だが、ブレードPCなら集中管理が可能になることで150人でも可能になり、人件費を抑えることができるとしている。

 同じように、ユーザーが遠隔地にいるケースを想定した場合に、トラブルが発生したときにかかる出張コストなども含めると、さらなるコスト削減につながる。実際に、同院では、半径60キロメートルの中にユーザーが点在しており、ブレードPC導入後は、技術者がその中を移動する必要がなっくなった。

 一方、ほかのメリットとしては、エンドユーザーが利用する場所でPCファンが稼動しなくなるため、ホコリが巻き上がることがなくなり、病院などの繊細さを求められる場所でも安心して利用することができる。

 ただし、管理の一元化をメリットと見る反面、システムが落ちた場合に「病院のすべてのPCが落ちるのではないか」という懸念も出てくる。これについて同病院では、ディザスタリカバリの体制を敷いているという。具体的には、1つの機能が2つのマシンで稼動する2重化体制になっている。実際に、1カ月ほど前に、建設工事によって停電が発生してシステムがダウンしたが、10分以内にバックアップ側のシステムが稼動して、サービスを再開したという。

 「通常のPC構成なら復旧に3日はかかっていた」(同氏)

 同病院では今後、年間100台づつブレードPCを増やす考えだという。日本の各業界のユーザー企業が、今後ブレードPCをどのように評価するかが注目される。

ダンカン・リージョナル病院のロジャー・ニール氏

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