サービスレベル管理、7つの疑問ITIL導入成功のステップ(2/3 ページ)

» 2005年08月30日 08時16分 公開
[川浪宏之,ITmedia]

 リソース的に十分な余裕があれば、すべてのサービスに対してSLAを設定することが望ましい。しかし、実績情報の収集・取りまとめなどにもコストがかかることを考えると、SLAの設定にも費用対効果の視点が欠かせない。

 SLAの設定にあたっては、当該サービスのビジネスおける重要度や、サービス停止に伴うリスク度合いなどの視点から、優先度を設定することが一般的である。また、現在サービス水準が低く改善が求められるサービスにSLAを設定して改善状況をモニタリングするといったことも考えられる。

 なお、非常に重要な基幹システムであっても、既に十分に安定しており、サービス提供者が努力をしなくても容易にサービスレベルを達成できてしまう場合は、基幹システムよりも不安定で改善要望の高いWeb系システムにSLAを設定したほうが効果的な場合もある。

疑問4:具体的なサービスレベル値の決定方法は?

 初めてSLAを導入する場合には、半年から1年程度を試行期間と位置づけ、実績値を収集した上で、サービスレベル値を決定することになる。ただし、「実績値=サービスレベル値」とはならないことが多い。試行期間中の実績値がXだった場合、利用者はさらなる改善を含めX+αを要求し、受託者は安全を考慮してX−αを主張するだろう。この数値レベルでの交渉では、つばぜりあいとなりなかなからちがあかない。あらかじめ試行開始前に実績値の取り扱いについて合意を取っておくことが必要である。

 サービスレベル値は年々変わるものである。毎年のサービスレベル値の見直し方法についても、合意を取っておくことが望ましい。基本的な考え方としては、前年実績に対し経験効果であるプラスαを上積みすることになるが、仮に前年に大規模システム障害などがあり実績が著しく悪化している場合、プラスαを上積みしても前年のサービスレベル値を下回ってしまうことも考えられる。こうした特異的なケースに引っ張られることがないよう、前年実績値の計算に当たっては、ワースト月や特異事象を除外するなどの考慮も行なっておくことが必要である。

図2 サービスレベル値の決定方法

疑問5:ペナルティのないサービスレベル管理は意味がない?

 設定されたサービスレベル値が達成されなかった場合に、何も罰則がないとしたら、最高時速が表示された道路で速度違反しても、何も罰せられないのと同じである。問題は、その罰則を何にするかだ。改善勧告といったオペレーション上の対応で済ませるか、ペナルティといった罰則金を徴収するか。

 どちらの罰則を選択するかは、SLAの締結主体や、対象としているSLAによっても左右される。親会社と情報子会社であれば、ペナルティといった金銭的な罰則は導入しても意味が薄い。また、ペナルティを導入している企業でも、ペナルティを設定しているのは全SLAのうちでも1、2項目というのが一般的だろう。

 仮にペナルティを導入しないとしても、罰則については厳格にしておく必要がある。雛形に少し手を加えただけの「詫び文」を1枚書いて終わりにするのではなく、サービス利用者・サービス提供者の経営者レベルが、サービス未達成が発生したことを認識し、改善が確実に効果をあげるまで、経営レベルで定期的に報告を行なうといった厳しい罰則が求められる。こうした罰則がある限り、仮にペナルティがないとしても、十分な効果を得ることができるはずである。

疑問6:ペナルティを入れた場合は、インセンティブの導入も必要か?

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