幹部引き抜きめぐり、GoogleとMSが火花

Googleに転職した元Microsoft社員をめぐる審問が始まった。Microsoftは「Googleで検索関連の仕事してはいけない」とする元社員への暫定命令を、来年1月まで引き延ばしたい考えだ。(IDG)

» 2005年09月07日 10時35分 公開
[IDG Japan]
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 GoogleとMicrosoftはシアトルの裁判所で、2006年1月にGoogleの上級幹部引き抜きをめぐる本審理が開かれるまでの間、この幹部にどのような仕事をさせるべきか、させるべきでないかをめぐって争っている。

 ワシントン州地裁でスティーブン・ゴンザレス判事の下、9月6日に審問が始まった。7日には結論が出る見込みだ。

 Microsoftは同判事に、同社の元副社長カイ−フー・リー氏がGoogleで一連の仕事をすることを禁じるよう求めている。Microsoftは、リー氏がGoogleで働くのは、2000年に同社と結んだ非競争・機密保持契約に違反すると主張している。

 非競争・機密保持契約では、リー氏がMicrosoftを退職してから1年間、同氏がMicrosoftにいた間に関わった、あるいは機密情報を得た製品、サービス、プロジェクトと競合する活動に従事したり、雇用を受けることを禁じている。Microsoftが8月22日付で提出した仮差し止め命令の申し立てにはそう書かれている。

 ゴンザレス判事は既に7月に、Microsoftに対してこの件に関する暫定命令を認めた。同判事の暫定命令は、(リー氏に対して)禁止される活動として、コンピュータ検索技術(インターネット検索エンジンやデスクトップ検索など)、自然言語処理や音声技術、中国市場のコンピュータ検索技術に関する事業戦略・プランニング・開発を定めている。これらはいずれも、リー氏との非競争契約でカバーされるとMicrosoftが主張している分野だ。

 Microsoftは現在、この暫定命令の効力を仮差し止め命令の形で、少なくとも1月の審理まで引き延ばしたい考えだと同社の広報担当者は6日に語った。

 「Microsoftは単に、審理までの間、非競争契約の下で受けるべき保護を確実に受けられるようにする命令を求めている。リー氏がMicrosoftでの仕事と重複する分野、あるいはMicrosoftで機密情報を得た分野で働いてはいけないという命令は、Googleやリー氏にとって過度に難しいことではない」とMicrosoftの25ページにわたる申し立てには書かれている。

 Googleは、リー氏が同社で従事することになる仕事は、非競争・機密保持契約に違反するものではないと主張する。同社は、リー氏が担当するのは中国での製品開発センターの開設と、そのセンターへの元Microsoft社員でないスタッフの配備であり、検索、自然言語、音声技術などの技術的な分野には従事しないとしている。

 「リー氏は、Microsoftの申し立てに挙げられている技術的な分野のいずれに関しても従事あるいは相談を受けることはしない」とGoogleは8月30日に提出したMicrosoftへの24ページの反論書の中で述べている。

 2005年7月19日、Googleは新しい中国事業の社長および同国の研究開発センターの開設担当者としてリー氏を雇ったと発表した。今年第3四半期にオープン予定のこのセンターにより、中国や各国のユーザー・パートナー向け製品とサービスを開発する強力な研究開発チームを作りたいとGoogleはこのとき発表文で述べていた。

 同じ日に、Microsoftはこの件に関してプレスリリースを発行し、機密保持・非競争契約への違反に関してリー氏とGoogleを訴えたことを発表した。リー氏はGoogle入社前、Microsoftの自然言語サービス部門のコーポレート副社長を務め、Microsoft初の中国研究開発センター設置などの中国事業に携わったこともあるとMicrosoftは申し立てている。

 Microsoftは、リー氏は同社の検索技術および中国事業戦略の企業秘密を直接知っていると主張している。「リー氏は直接競合する企業で同じ技術と戦略にフォーカスするポストを受け入れた。これは明らかな契約上の義務に著しく違反している」(Microsoftの7月のプレスリリースより)

 Googleは反論書の中で、Microsoftの行動は機密情報を守るためではなく、「Googleの中国進出を遅らせたいがため、リー氏を、Microsoftから大胆にも『離反』するかもしれないほかの社員への見せしめにしたいがため」だと批判している。

 Googleとリー氏は7月にMicrosoftを反訴し、「被告Microsoftによる行きすぎた違法な非競争条項からの司法救済」を求めている。

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